♯1 アライト・ヘル
「おいおい....ここがユリの言ってた「アライト・ヘル」ってやつか?」
戦争がないから平和って思ってたのに....なんか印象と違う。
確かにみんな協力し合ってるけど、和気藹々というよりかは、何か来る時に備えて協力してるって感じがする。
ここは村なんだが、銃なんか平気で売られてるし、なんかマシンガンみたいなのとか、中世の甲冑や、禍々しい色の剣が売られていたり、進撃の⚫︎人でしか見たことのない高い壁があったりする。
にしても、ユリも不親切だな。路上放置とか。
にしても、腹減ったな。
早く食糧調達をー
と思い、僕のズボンのポケットを探る。
そこで、驚愕の事実に気づいてしまう。
「あ….持ち物全部あっちに置いてきたんんだった。」
クソが….僕はユリを恨む。
てことは盗み….いや、ダメだ。人の道を踏み外したら。
「おう!お前どうした?知らん顔だな!ユリ様からの回し者か?」
僕は後ろから声をかけられ、ビクッとする。
振り返ると、赤髪の斧を背負ったいかにも陽キャみたいなやつが僕に喋りかけていた。
何だコイツ。僕の疑念も無視して、陽気に赤髪は喋りかけてくる。
「まあまあ。そんな怪訝な顔しないでよ。俺はディケイ。お前なんか見てたら食うもんも金もなさそうやし。そろそろ夜が来るから俺の家にこいよ。よろしく〜」
というと、僕はディケイに手を引かれ、ディケイの家に連れて行かれる。
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「おいおい、ボンボンかよ。」
思わず声が漏れる。
なんてったって、超豪邸。
いや、超豪邸といったら誤解を招くか。
相対的に超豪邸だ。みんな一階建ての家が多い中、その家より一回り大きく、更に推定3階建て程度だ。にしても一階建ての人達も結構羽振り良さそうだったんだけどな。
謎の世界に僕は沸々と疑問が浮かび上がる。
「何でお前らだけそんな家がでかいんだよ。
デカくないやつでもお前より羽振り良さそうなやついたけど。」
それに、ディケイは悲しそうに答える。
「まぁ….壊されちゃあ意味ないしな….」
ん?どういうことだ?犯罪は少ないはずだが。
次々と疑問符が浮かび上がって来る中、ディケイは普通の表情に戻り、僕を家の中に招き入れる。
「あれ、そういえば家に勝手にお邪魔して親御さんは大丈夫なのか?」
「ああ、それについては大丈夫。むしろ喜ぶと思う。」
即答してきた。そして、玄関に入り、「お邪魔しまーす」といいながらリビングへ向かうと、2階からドンドンとこちらに向かう物凄い足音を立てながら、1階に降りる。
「ええ〜!ファイア君可愛い子連れてきたじゃん!ありがとう!」
といいながら、変なおっさんが僕に抱きついてくる。
その後、リビングに行ったと思ったら、爆速でお菓子みたいなのを持って戻ってきた。
「可愛いからあげるよ!このお菓子!他にもほしいのがあれば言ってね〜!」
これは僕に言ってるのか?
少しあのおっさんに引いていると、ディケイが誇らしげに言ってくる。
「な?大丈夫だったろ?うちのおっさん、お前ぐらいのやつ好きなんだよ。」
何が誇らしいのかわからないが、とりあえずこのおっさんがやばいやつなのはわかったな。
トントンと静かに階段を降りる音が聞こえてくる。
そして、落ち着いた声で一言。
「あの….フォレスト様….初対面の人には自己紹介をした方がよろしいのではないでしょうか。」
その言葉を聞き、あのおっさん….フォレストっていうのかが、自己紹介を始める。
「ごめんね。僕はフォレスト。フォレスト・ディケイだよ。この村の戦士で、好きなものは子供とか剣を研ぐことかな。」
と、さっと自己紹介が終わると、謎の落ち着いた声の主が1階に降りてきて、言う。
「私はピック・エレキと申します。フォレスト様のメイドをさせて頂いております。嫌いなものは人に従うことと、夜でございます。」
エレキと名乗る奴は中性的な見た目をしており、髪は緑で、三つ編み。背は180cm程度で、目は青と赤のオッドアイだ。
にしても、あの場面で嫌いなものを言うとか、相当捻くれてんな。
そして、2人の自己紹介を聞いて、ディケイも忘れていたというように自己紹介を始める。
「おっと、忘れてた。俺はファイア。ファイア・ディケイ。この親バカ親父の息子で、この村の騎士だ。好きなものは人と喋ることかな。」
と、3人の自己紹介が終わったので、僕も便乗して、自己紹介をする。
「僕は七篠玲。なんか気づいたらこの村にいた。好きなものはズワイガニ」
僕の自己紹介が終わると、もう夜だ。それに気づくと同時に、村に警報が鳴り響く。
それを聞いて、一気に空気が変わる。
そして、ディケイは月に目をやると、顔を歪ませ、嫌そうに言う。
「クソが....こんな日によりにもよって真紅の満月かよ!」
僕はそれを聞き、月に目をやると、確かに赤く染まっている満月があった。
そしてフォレストの顔が一気に鬼の形相になり、腰にかけていた剣を抜き、玄関のドアを開け、村を取り囲む巨大な壁の外へ向かう。
エレキもメイド服を脱ぎ、下に着ていた半袖の青と白のボーダーの服と、紺色の短パンのコーディネートになり、「これだから夜は嫌いなんですよ。」と文句を漏らし
ながら、フォレストと共に、巨大な壁の外に向かう。
最後にディケイも、背負っていた斧を手に取り、巨大な壁の外に向かっていく。
「お前もついて来い!」
ディケイが、僕の手を取り、一緒に壁の外へ連れ出される。