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プロローグ 自殺。そしてー....

「また今日も学校か....」

 僕、七篠玲(ななしのれい)は重い足取りで学校へ向かう。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よぉ〜七篠〜元気にしてんじゃん〜てことで、ほら、これ食べろよ。」


 と言い、このガン黒ギャルが目の前にゴキブリをちらつかせる。


「....!」


 毎日の事とはいえ、やっぱり慣れない。


 そう、僕はいじめられている。

 親に言っても「あんたも悪い所があるんじゃない?」の一点張りで、少しも話に取り合ってくれない。

 同級生は見て見ぬふり。担任も同じだ。

 そして、十人くらいの陽キャグループにいじめられている日々。


 原因は自分でも痛いほどわかっている。

  陽キャグループは、自分の前にもいじめている奴がいた。

 僕は、そいつを助けようとして、陽キャグループに刃向かった。

 変に上がっていた正義感に煽られて、最悪の選択をした。

 そこからいじめが始まり、僕が助けたいじめられていたやつも、今では僕を虐める側。


 いじめてくる陽キャグループ。見て見ぬふりをする同級生・担任。全く取り合わない親。

 僕は、いつも周りの全てを憎んでいる。


 そんなことを考えていると、ガン黒ギャルが笑いながら言ってくる。


「ほらほら〜。早く食べなよ〜」


  (クソが....!)

 僕は心の中で叫ぶ。

 そして、心を無にして食べる。

 今まで、こんなこと何回もあったし、何回も歯向かってきた。

「おぇっ....!」

 しかし、味は強烈で、思わず吐いてしまう。


 そして、周りの奴らが「だっぜぇー。コイツ」とゲラゲラ笑いながら、僕にプリントの束を押し付けて、一言。

「ああ。そうそう。()()()()宿題を忘れちまったから、やっとけよ。」


 こんな生活も、もう慣れた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。下校の時間を知らせる鐘の音。


 僕はいち早く、学校を逃げるように飛び出して、家路につく。

 今日は昼から警察が来ていたので、特にいじめはなかったようだ。

 僕は今日、思わずスキップをしてしまうほど、楽しみにしていたことがある。

「おっ、もう着いたのか〜」

 いつもは長かった下校時間も、今日は何だか早く感じた。それもこれも、()()が届いているはずだからだ。


 僕は高い期待に胸を躍らせ、ポストを開ける。


「おっ、届いてるなぁ〜」


 そういうと、僕はポストからロープが入っている箱を持ち、玄関に置く。

 そして、靴も揃えずにベランダに向かい、親がいないのを確認すると、鴨居にロープをかけ、ぶら下がっているロープを輪型に括り、下に椅子を置く。


 そう、みんなも知っている通り、簡単!自殺セットの完成だ。

「よし、これでやっと自殺が!」

 僕は思わず叫ぶ。しかし、もう一つのやることを忘れていた。


「そうだそうだ。あいつらをネットに晒し上げないとな。」


 と言いながら、スマホを操作して、今までのいじめの証拠などを開示して、クラスメイト全員と、親、先生の本名などを晒す。

「あ、コイツは除外するか。」

 1人だけ、僕の味方をずっとしてくれていた奴がいた。

 山口修平だ。秀才で、人格者。みんなが僕をいじめているのも構わず、小学生の時から何ら変わらない態度で接してくれていて、僕の心の支えだった。

 そして、ネットに晒すと、僕はロープの輪の中に首を入れ、苦しみを感じながらも、意識は闇の底へ沈んでいくー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここは、天国か?」


 思わずそう呟いてしまうほどの光景が、そこには広がっていた。

 光り輝く汚れひとつの無い床と、黄金のハープやソファー。

 その光景に驚いていると、ローマ神話の神様の姿をしたような。奴が出てきた。


 そいつは、空に浮いていて、身長は160cm程度で、肌は怖いほど白く、いまにも消えてしまいそうな程可憐な美人だ。

 その女に見惚れていると、その女はお淑やかな口調でこちらに語りかけて来る。


「七篠玲。貴方は自害しましたね。貴方の学校生活、見させていただきました。なかなか壮絶なものですね。

  私はユリ。貴方に、やり直すチャンスをあげるものです。

  異世界に行き、友達を作り、恋をして、充実した学校生活を送るのです。」

「オーーーー!」となるわけもなく、僕は怪訝な顔をする。


「いや、別に僕はやりなおしたいわけじゃ….]

 と言いかけると、急にユリが豹変して、「うっさいわね!さっさと転生しなさいよ!」とギャーギャー叫び始める。

「ていうかやり直すなら現世で最近よく漫画で見る赤ちゃんに転生とかすればいいじゃん。」

「ん?て言うか何で平凡な僕をその世界に呼び寄せたいんだ?」

 僕の溢れんばかりの疑問を抑えて、一つ一つ質問していく。


 それにユリは俯くと、

「….こう」


 と小さく呟く。僕が「ん?」と聞き返すと、顔をばっと上げ、大声で言う。


「人口減少よ!私の世界である「アライト・ヘル」は人口減少がやばいのよ!私の世界だけじゃない!ほかの世界の神々も自殺者とかを自分の世界に招くために頑張ってるのよ!」


「は、はぁ….」

 ユリに捲し立てられ、僕は圧倒される。

 今のご時世、どこも人口減少真っ只中なんだな。

 そう思っていると、自慢げにユリが自分の世界のことを喋り始める。


「うちの世界はね。犯罪が年間で10件くらいしか起きないし、貧富の差も()()()()ないわよ。

  戦争なんかないし、すんごいいい世界なんだよ!」


 と聞くが、僕は自分の気持ちを曝け出すことにした。


「でも、僕って、「無」でありたいんだよね。もう、生きたくない。そこがどんなに良かったとしても、何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。

  もう、自分が嫌だ。」


 と、聞くと、ユリが一つ提案をして来る。

「うーんでも、人口をそう易々と諦める訳にもいかんしなぁ....

  じゃあ、君が、「アライト・ヘル」を平和にしたらいいよ。

  ちなみにどうしたらわかるかと言うと、この指輪をあげるから、それが光り輝いたら平和にしたってこと。

  そしたら、死んでも「無」の状態にしてあげるよ。」


 と言われて、僕は「このままここにいても無理か。」と思い、その条件に乗ることにした。

 そして、僕はユリに天空に投げ出される。


 そして、僕の意識は遠のいていくー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 玲がいなくなった後で、静かにユリが微笑む。


 そして、悪魔のような顔を浮かべて、静かに言う。


「戦争がないとは言いましたけど、平和とは一言も言ってないし、そもそも犯罪なんかみんなしてる余裕ないよね〜。

 いやーやっぱいじめられてるやつはどんなに怪しくてもうまい話だったら食いつくから楽だわ〜」


 と言い、闇に消えていく。


 

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― 新着の感想 ―
おぉ、なんかひどいなうん残酷な描写だっけかあれつけたほうが良いと思う 私も学生の頃いじめされる側もする側もしたことあるけどする側はまだしもされる側の気分はあまり良くないからななんか悲しくなるな この先…
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