巽悠衣子さんは寝言で下野紘さんのダジャレを言ったのです。(第6回 小説家になろうラジオ大賞参加作品)
とある冬。今回の「なろラジ」の収録は特別に炬燵に入って行われていました。そのせいもあって疲れてしまったのでしょう。巽さんは炬燵に突っ伏して、寝てしまいました。
「むにゃむにゃ……」
どうやら夢を見ているようです。側にいた下野さんは、耳を傾けてみました。
「失くし物拾って泣く下野紘って……(なくしものひろってなくしものひろって)」
ダジャレを言ってました。どうやら自分がなにかを拾って泣いているようです。何を拾ったのか、もう少し寝言を聞いてみました。
「失くし物拾ってな、「煮物なのか?」と泣く下野紘って何者なのかと……。(なくしものひろってなにものなのかとなくしものひろってなにものなのかと)」
またしてもダジャレですが、意味不明です。どうやら落ちていたのは煮物だそうです。それで自分の存在を問われるとは、どうしてでしょうか……。
「ほら、変な夢を見てないで、起きてください」
下野さんは巽さんをゆすりましたが、巽さんは嫌そうに手で払ってしまいます。
そして、巽さんはさらに、寝言を言いました。
「文化放送も妄想補完部。逆さから読んでも同じ……」
頭の中で確かめてみると、
(ぶんかほうそうももうそうほかんぶ)
たしかに! と下野さんは妙に感心してしまいました。しかし、すぐに頭を振り払い、巽さんを起こしました。
「起きてください! もう収録終わってますよ!」
目を覚ました巽さんは、下野さんに寝顔を見られていたことに気付くと、驚きで跳び起きました。
しかも、そのとき巽さんは、炬燵の上の蜜柑を握りしめていたため、汁が顔や服に飛び散ってしまいました。
「ああ、なんですか!? 痒い! もう! 下野さん!」
「えぇ~! ボクのせい!?」
巽さんは、下野さんのことをポカポカと叩くのでした──。(終)
最後にダジャレを一つ。
『 痒い炬燵。蜜柑汁漏らすとか、悠衣子巽、感じるも終わり。』
(かゆいこたつみかんじるもらすとかゆいこたつみかんじるもらすと)