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フラグ85 こたえ

次の日もその次の日もずっと実菜の告白に悩んでいた。俺は誰が好きなんだろう、と。

このことを相談するとなるとバイトの人間だと実菜から告られたのも歌乃が好きなこともバレてしまう。それに陽と伊勢には恋愛のことを話すのはなんか違う気がする。

だれか、、と思いさゆりが思い浮かんだ。好きだった相手、、だけど友達でもありこういう生き方のヒントをくれた人。

連絡したら返ってくるのだろうか。

今年に入ってからというか、部活を引退してからほとんどと言っていいほど会っていないし連絡もとっていない。そんな相手に良い返事をしてくれるか。でも、さゆりは嘘をつかない。適当な理由をつけて相談を断ったりはしない。よし。

相談したいことがあって、近いうちに直接話したい

(送っちまった。ちょっと買い出しにでもいってれば返事が返ってくるら)

そう思って買い物の準備をしようとスマホを閉じたとき、すぐに通知音が鳴った。

(いや、まさかな)

俺はあまり期待せずにスマホを開くとさゆりから返信が来ていた。

なんか久しぶりだね!相談!?なになに〜、飲みにでも行っちゃう??

まじ?じゃあ飲みで

おっけー、ちょうど明日暇なんだけどたかとは?

(あした!?いや、おれも明日はバイトないし)

じゃあ明日で!

場所は?大学の近くの方がいい?

いや、さゆりん家から近いとこでいいよ、来てもらうのなんかあれだし

(しかも大学の近くで誰かに聞かれても嫌だし)

ほんと!?ありがてぇ!ならここ行きたい!

そのメッセージと共に送られてきたのは大衆居酒屋っぽいところで、もう完全に友達みたいと思った。

いいやん!

こっち来てもらうしわたしが予約しとく!

さんきゅ!

その後に変なスタンプが送られてきて、会話は終わった。

なんかあっけなく予定合ったな、あの頃が嘘のように。

そして、こういう日は次の日のことを考えて眠れないのだが、その日だけはなぜか眠れた。



翌日

中野か、初めて来たな。ほんとおれって外界のことしらねえよな。アニメのことはバケモンみてえに詳しいのに。

そう自虐にはしっているとさゆりから電話がかかってきた。

「もしもーし、どこにいる?」

「北口にいるどー」

「わたしちょうどいま改札出たところなんだけど」

「ちょいまち」

(どこだ?あ、あれか?)

「右向いて、違うもうちょい左、そう!そのまままっすぐ」

ロボットのようにさゆりを動かしてやっと目が合った。

「あ!いた!あれだ!」

そう言ってさゆりは電話を切った。

「うっすうっす」

「おつー」

「なんかおしゃれになった?」

「わからん、服は定期的に買ったりはしてるけど」

「んー、いや普通にかっこよくなってんな」

「やめろやめろ、そんなこと言っても奢んねえかんな」

「あはは!バレた?」

一緒に部活やってた時と変わらない会話、会ってなくてもいつも通りに戻ってしまう。それに、好きな人がちゃんといるせいか、去年のクリスマスのようなときめきみたいなものはなかった。

「よっしゃ、じゃあ出陣じゃ〜」

「武将か」

そう軽いツッコミを入れつつ、店へと歩き出した。

「さゆりは4年になって大学行ってないんだら?」

「行ってないよー。あ、ゼミだけだね」

「ゼミねー。卒論あるやつだ」

「それ!もうほんと終わらん気がする」

「何文字書くん?」

「3万文字」

「えっぐ」

「でしょ?もう教授いつか埋めちゃうかも」

「ヤクザみたいなことすな」

「いやもう恨みしかないね!たかとは?卒論順調?」

「いやゼミ入ってねえからそんなもんねえよ」

「うわ!そうだった!じゃあたかとも今日この中野という土地に埋めて帰るか」

「やめい!すぐ人を埋めようとすな」

「北か南どっちがいい?」

「そんなにこやかに言うなや、、って北口か南口かだろそれ」

「バレたか」

ふたりでくだらない話を笑いながらして体感1分もしないで店に着いた。

「ここだ!」

「だな」

いつもなにかと予約している癖で店に先に入ってしまった。

(あ、やべ。予約したのおれじゃねえわ。でもどうせ結城で予約してんだろ)

「予約した結城です」

「はい、お待ちしておりました。ご案内致します」

するとカウンター席に通された。

「荷物は下のかごに入れてください」

「はーい、ありがとうございます」

「ご注文はQRコードからお願いします」

「はい」

「だれが結城だって?」

「しょうがないでしょ、先に入っちゃったんだから。どうせ言うこと同じなんだし」

「ま、普通は男の人が予約して先入ってドア開けてくれるもんね〜」

「予約はともかくそれはやっただろうが」

「んー、しょうがないから及第点をあげてあげよう」

「はいはい、ありがとうございました。それではご注文どうぞ、お客様」

俺はQRコードを読み込ませながらそう言った。

「さっすが飲食店員!じゃあ生と塩キャベツと、、」

(そういやこういうのも自然とできるようになってんだな、なんだかんだで男として成長してんのか)

「ねえ、きいてる?」

「きいてるきいてる。ほれ」

俺は注文履歴を見せてさゆりが言ったオーダーが通ってるか見せた。

「ほんとだ。でも飲み物1つしか頼んでないよ?」

「やば!忘れてた!」

「そういうとこほんと抜けてるよね。つめが甘いというか」

「うっせ」

そう言いながら俺は急いで注文し直した。

「どう?元気だった?」

「それ会って最初に言うことじゃね?まあ元気っちゃ元気だけど」

「たしかに、元気ならよいよい」

「さゆりは?卒論に追われてるぐらい?」

「それもあるけど、内定先行ってちょっと働いてるよ」

「もう働いてんの!?」

「って言っても月に数回とかだけどねー」

「たかとは?就活は?さすがに終わってるでしょ?」

「さすがにね、決まってるよ」

「なんか自慢げ〜、どういうとこ?前に言ってたアニメ関係?」

「それがちが」

「失礼します。生ビールと塩キャベツとポテトフライです」

(タイミング〜)

「はい、ありがとうございます」

「ではでは乾杯しましょう!」

「じゃあ、おつかれーかんぱーい」

「おつおつー」

「ひぃえあーうまいうまい、そんでどういうとこなの?」

「結局さ、アニメ関係の会社は全部落ちちゃって」

「え!そうなの!?」

「うん、まあ、あはは。IT関係のとこにしたよ」

「そっかぁ、そうだったんだ。たかとのことだから色々考えたんでしょ?頑張った頑張った」

そう言いながらさゆりは俺の背中をポンポンと叩いた。

「まあ、そうだけど、たかが何十社も落ちたぐらいだし。さゆりの方が頑張ったでしょ、頑張ってるでしょ」

「まぁそれなりにね。いいのいいのこういうのはみんな頑張ってるみんなおっけーで」

どこまでいってもさゆりに追いつけない、俺にとってはやはり結城さゆりという人間は憧れの対象だった。

「はい!暗い話は終わり終わり!たかとは最近野球部のひとと会った?」

「最近は会ってないなー、年越しは陽と伊勢呼んで年越したけど」

「ほんと仲良いね〜、年越しそばでも作ったの?」

「たしか作ったような?」

「え、そば打ちから?」

「んなわけなえだろ、たぶん麺つゆだけ作って天ぷらとかは買った気がする」

「さすがにか」

「さゆりは?二葉ちゃんとかと会ってる?」

「ちょいちょい連絡取ったりご飯行ったりしてるぐらいかな」

「ま、学校行ってないとそうだよな」

「あ!かのちゃんの誕生日祝った!」

「あぁ聞いたわそれ」

「かのちゃんから?」

「そー」

「へ〜」

「ニヤニヤすんな」

「えー、なんて言ってた?」

「楽しかったって、また誘ってあげな」

「たかとに言われなくてもそうしますぅ」



何時間話したんだろうか、部活のときのことだったり、さゆりのゼミのこと、お互いの趣味のことだったり本当にくだらない話をした。

さゆりとは話しやすくてあっという間に時間が過ぎていった。ひたすら飲んで食べて話しての繰り返しで話題が尽きなかった。

でも、あのクリスマスのことはお互い一切話さなかった。

話が区切れたので、俺はひと口レモンサワーを飲んだ。

すると空気を読んだのかさゆりから相談について話を振ってくれた。

「それで?相談って?」

「うん、、」

俺は一通り、ことの成り行きをさゆりに伝えた。

歌乃が好きになったこと、実菜から告白されたこと、告白されてから、もしかしたら告白される前から自分の気持ちに自信が持てなかったこと、全て話した。

「なるほど、そんなことが。いつの間にかたかとくんもモテるようになったねえ」

と少し茶化し気味に言ったがすぐに真面目な顔になり、口を開いた。

「そうだね、私が個人的に思っているのは、なんてことない事でも話したいと思う相手とか、価値観が合うかとかよくドラマとか歌詞とかにあるじゃん?でも私はそれって友達で良くない?って思っちゃうんだよね。価値観なんて全員他人なんだから違うもんだし、そういうことは大切だし大事だよ?私もそれもいいなって思うんだ。それでもね、当然好きって感情はあっての話なんだけど、、」

さゆりはひとつひとつ丁寧に言葉を紡いでそう言った。そして、ひと呼吸置いてさゆりはこう言った。

「尊敬ができてありのままの自分でいられるかってことだと思うよ。特にたかとは本心を隠して本当の自分をだせないから、、だから、だからこそ、その2人ならどっちがありのままの佐々木貴翔でいられる?」

さすがさゆりだ。中学時代が原因で誰に対しても本心を言えなかったことを話したこと無かったのに、しっくりきてこたえも出た。


「お、こたえが出たのかな、行きなよ。いますぐ伝えたいんでしょ?」

「ごめん、ありがとう!」

俺は札を何枚か置いて店を出た。その時は早くこたえを伝えないといけないと思ったのか、さゆりがひとりになってしまうことが考えられなかったことと札を数える余裕すらなく店を出てしまった。

店を出た後、スマホを見るとちょうど実菜がバイトが終わった時間になってたのですぐに電話した。

「バイトのあと会えない?」

「はい、大丈夫ですけど改札入っちゃったんで出ますね」

「いやいい、俺も改札内にいくから!30分、いや20分で着く!」

「わかりました。まってます」

「ごめん!ありがとう!」

電話越しだからか実菜の声はいつもより冷静に大人っぽく聞こえた。


20分後、俺はバイト先近くのいつも乗っている、告白された駅に着いた。

(やばい!終電ギリギリになっちまう!)

俺は電車を降りて走った。とにかく急いで。

(みつけた!)

「ごめん、、ほんとお待たせ。急いで来たから、、、ちょっと息だけ整わせて」

「相変わらず面白いですね」

実菜はそう言って笑いかけた。

「この前の返事言いに来た」

「はい」

「俺は、、、」

人生において選択をしなければいけないときは必ずある。

そして、幸せを感じる人の裏にはきっと不幸な人がいてこの世は成り立っているのだろう。その日はそう感じた日だった。

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