フラグ84 Mフラグ2
今日は久々に仕込みからかー。店長と話すのちょっとめんどくせえんだよな。話合うからそんな苦痛ではないけど。
6月も最終日、まだ梅雨明けはせず今日も今日とて雨。今日は2限のみだったので授業を受けて、かるーくテスト勉強しながら大学の図書館にいた。
てか3回連続でバイト回かよ。
と、ともかく入り時間の15時に間に合うように大学を出た。
「おはようございまーす」
「おっす!おはよう!」
(店長、無駄に上機嫌だな)
俺は着替えてキッチンの仕込みをしようとすると、店長から話しかけてきた。
「今日、実菜をキッチンやらせようと思うんだけどいい?」
(おぉはえーな。ま、平日だし月末ではあるけどいいんじゃね)
「大丈夫ですよ。オーダーさばきながら見とくんで」
「ありがとう!助かる!」
「いえいえ」
(じゃあきもーち多めに仕込んどくか)
今日のシフトは健人、ゆうと、栞、実菜で健人はともかく全員キッチンできるため、もしオーダーがさばけなくなってもどうにかなるっていう魂胆だろう。
俺はちょくちょくバレないようにつまみ食いをしながら昼飯(仮)を済ませて仕込みも終わらせた。
「おはようございます!」
「はよー」
今日の一番乗りは実菜だ。
「今日キッチンね」
「え、はい」
「よろしくー」
「あ、ほんとですか!?」
「がちだって」
「が、がんばります!」
「いい気合いだねー、着替えといで」
「はい!」
そう言うと、実菜は早めに着替えを済ませて出てきた。
「たかとさんがついてくれるんですよね?」
「そそ」
「じゃあ早速教えてもらってもいいですか?」
「まだ17時になってないけどいいの?」
「大丈夫です!お客さん来る前になるべく頭に叩き込みたいので!」
(めっちゃ気合い入ってんな)
「おっけー」
俺はいつも通り、冷凍庫にある肉の位置や解凍時間など頭がパンクしない程度に教えた。
「一旦こんなもんか、今日は遅くてもいいから丁寧になるべく間違えないようにやってこう」
「わかりました!」
「わかんないことがあったら悩まないで俺のことは気にせずきいて」
「ありがとうございます!やっぱたかとさんサラダ場やりながら教えてくれるんですね」
「平日だしつきっきりじゃなくてもある程度見れるからね」
「すごすぎます」
「いやいやこんなもんだれでもできるよ」
「たかとさんはどのくらいキッチンやってるんですか?」
「2年だか1年か、のときにはやってたから2、3年は経つかな」
「ほんと師匠なんですね」
「それあゆむとかから吹き込まれてるだろ」
「よくわかりましたね」
「そうやって言ってるのあいつぐらいだからな。一応ちゃんとホールもたまにだけどやってるからね」
「わかってますよー」
「ま、今年はキッチン教育に力を入れてるけど。来年にはいないし」
「そうですよね、来年の今頃にはいないんですよね」
「バイトなんてそんなもんだら」
「そう、、ですよね」
そのときの実菜は含みがあるような顔をしていた。
「あ、来店だ。ついにオーダー来ちゃうねー」
「緊張します」
「気楽にやってこう!ちゃんとみとくから」
「はい!」
そこからそれなりに来店が続き、食べ放題どアラカルトが入り交じっていたが、なんとかこなしていた。
「たかとさんピンチかもです。オーダーがたまっていて」
(オーダーたまってるけどほとんどたべほだし大丈夫っぽいな)
「もうちょいがんばろ、たべほばっかだから大丈夫!」
「わかりました!もう少しがんばります!」
(歌乃とか歩とかほどじゃないけどそれなりにできてるんだよなー)
数分した後、横を見ると結構焦っていたので、とりあえず肉の解凍だけやるようにした
「だいぶたまったね〜、足りない肉わかる?」
「えっと、ごめんなさいわからないです」
「おっけー、一旦見て解凍しちゃうねー」
「ありがとうございます」
「それと、焦る気持ちはわかるけど、一旦深呼吸してここのオーダーやっちゃおっか」
「わかりました」
(肉切る系はまだありそうだから、、バラとハラミと豚タンか)
俺は肉が入ったパックをレンジに突っ込み、実菜の方のオーダーを軽くさばいた。
ピピッ
(お、ちょうど。さすがおれ。時間管理完璧すぎんぜ、解凍もちょうどよき)
「とりあえずバラは解凍して豚タンレンジの中入れとくから終わったら出しといて」
「ありがとうございます。あれ、オーダーだいぶ減ってる」
「もう大丈夫そうだら」
「はい!」
そんな感じでたまに俺が手伝いながら20時まで耐えきった。
店長からどっちか休憩と言われたので、さすがに実菜を行かすことにした。
「実菜行っといで、もう頭パンパンだら?」
「はい、行ってきます」
(最初はみんな頭フル回転だから満身創痍になるんだよな)
少しすると実菜が賄いを作りに来た。
「たかとさんちょっといいですか?」
「ん?」
「あの、作り間違えちゃったのって、、」
「食べちゃえ食べちゃえ。証拠隠滅しとけ」
「いいんですか?」
「捨てるよりかはいいっしょ」
「じゃ、じゃあ」
「さすがに3皿は量的にバレそうだから1皿か2皿にしときな、残ったのはおれ食べるよ」
「さすがに申し訳ないです」
「ちょうどその肉食べたかったからちょうど良かったよ」
「本当ですか?」
「ほんとほんと、だから気にしなくて大丈夫」
「すみません、じゃあ残りはお願いします」
「はいよー」
実菜は疲れそうにしながら賄いを作って楽屋に戻っていった。
実菜が休憩から戻ってくると、今度は健人が指示をした。
「たかと休憩行ってきて、栞を代わりに入れるわ」
「はいよー」
栞がキッチンに入ってきたので、おれは適当に引き継いで休憩を取った。
(絶妙につかれたー、ちょっと休んで飯つくるかー)
そう思ってスマホをいじっていると店長が楽屋に入ってきた。
「実菜はどう?」
「まあ、最初にしてはできてる方ですよ」
「だよな、よかった」
「少なくともゆうとよりはできてますよ」
「比べるとこそこか」
「ですね。まぁ別にこれからもできそうですよ」
「ほんとたかとがいてくれて助かるわ」
「いやいや」
「そんじゃ、反省もよろしくな」
「はい」
(それ聞きに来ただけなのね、飯作りに行くかー)
キッチンに戻ると実菜と栞が仲良さそうに話していた。
「あ、たかとさんすみません、作り間違えの、、」
「あぁほんとに気にしなくていいよ」
「ありがとうございます」
「たかとさん、ご飯どのくらい食べます?よそりますよ?」
「栞までどうした?それになんかその先輩扱いやだわ笑」
「そんなそんな、オーダー来てないですし、いつも教えてもらってるのでこのくらいは」
「じゃあ大ぐらいでよそっといて」
「りょうかいです!」
(なんだこのハーレム状態は?嫌すぎる)
俺はそそくさと賄いを作って楽屋へ戻った。
(やっと飯食えるぜー、アニメの切り抜きでも見ながら食いますかー)
休憩後、俺は実菜にクローズも教えて、洗浄機の方も教えた。
少し経ってから実菜に余裕が見えたので、今日の反省を聞いた。
「どうだった?初日は?」
「ほんときつかったです。みんなよくあんな早く作れるなと」
「そう思うよなー」
「たかとさんにも手伝ってもらっちゃいましたし」
「あんなもん手伝ううちに入ってないって笑」
「ほんとありがとうございます」
「これからできるようになればいいよ、たぶんまだレシピとか肉の位置とかあいまいだから徐々に覚えていけば大丈夫だと思うよ」
「頭に入れていたんですけど、焦ってしまって」
「そうだね、焦るのはわかるよ。おれもいまですら焦る時あるし、だからこそ冷静に何を出すか何を解凍するかとか考えれば少しずつできるようになるよ」
「がんばります」
「あとなんか聞きたいこととか、これできなかったなぁとかある?」
「できなかったことはいま言ってたらへんだと思います。ちなみにたかとさんってどうやってオーダーさばいてますか?」
「どうやってかぁ、、んと、感覚的なこともあるけど、とりあえず最初はとにかく手数を減らすとかかな」
「手数?ですか?」
「同じ卓の同じ味の肉は一緒に盛っちゃうとか、冷蔵庫開けて同じ場所の肉は取って皿に盛っちゃうとか」
「あ、みんなよくやってるやつですね!」
「それをできるようになればだいぶまわせるようになるよ」
「なるほど!ありがとうございます!」
「それも今日わりとできてたからとりあえず場数踏めばまわせるようになるよ」
「ほんとですか!がんばります!」
「そゆことでサクッとクローズ終わらせちゃおう!」
「はい!」
「ホール上がっちゃうよー」
クローズを進めてなんだかんだで時刻は24時前、健人がキッチン(おれに)聞いてきたので、それに答えた。
「はいよー」
「なんか手伝うことある?」
「いや、大丈夫。さんきゅー」
「はーい」
10分ほどして実菜から声がかかった。
「洗浄機も終わったので確認おねがいします」
「はいよー」
(大丈夫そうだな)
「おっけ、肉場も見たから上がっちゃお」
「はい、ありがとうございましたぁ」
俺と実菜は退勤して実菜が着替えて出てくる頃には、ゆうとと栞は課題があるからとそそくさと帰っていき、健人はタクシーで帰るといい、残った俺と実菜は一緒に駅へと向かった。
珍しく?改札通るまでは一言も話さず、俺も話題を探していた。改札を通り、少ししたところで実菜が口を開いた。
「あの、、ずっとききたかったこときいてもいいですか?」
「なに?改まって」
「えっと、その、、貴翔さんって歌乃と付き合ってるんですか?」
「え!付き合ってないよ。なんで?」
「なんか仲良いので」
「それは部活でも一緒だったからだと思うけど」
「ほんとにそれだけですか?」
(圧がすごいな)
「それだけではなくはなくはないっていうか、、じゃ、じゃあ俺こっちの線だからまた」
「まってください」
俺が逃げるように歩こうとすると実菜が俺の服の袖を掴んだ。
(ちょっ、)
実菜は俺から目を逸らさずにこう言った。
「私、貴翔さんのこと好きなんです」
(え、いまなんて?スキナンデス?え、じゃなくて、返事!)
「あ、えっと、」
「今日みたいにちゃんと話を聞いてくれて大丈夫、できるって言ってくれますし、そのときの笑った顔がすきで、、なんか、、たかとさんにそう言われると本当にできる!って思えるんです。」
「そう思ってくれてたのうれしいよ、、、えっと、、」
「返事は!また今度でいいので!!」
俺が返事しようとするのを遮るように実菜は言った。
「ああ、ごめん、、じゃなくて、ありがとう」
「あ!もう終電なんで!返事、待ってます」
慌てたように実菜は走っていった。
(ちょいちょいちょいちょい、俺好きですって言われた?言われたよな。でもおれは歌乃のことが好きだし。断ろうとしたよな。でもさっき一瞬考えた?好きでもないならすぐ断ればよかっただろ。すぐ断んなかったのは少しでも実菜のことが気になるからなのか?それか告られて舞い上がってんのか。しかもすでにちゃんと断れなくて実菜には申し訳ないことしちゃってるし、、いや、あのとき返事できなかった時点で歌乃に対しても、、最低男すぎるわ。まじどうしよ、、おれって実菜のことも好きなんかな。そんなことない!そんなことない、、はずなのに。わっかんねえ)




