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フラグ74 好きという感情

結局、夏休みは1度しか会わず、思ったのと違う夏休みが終わり、新学期が始まろうとしていた。

東京のお土産渡すから明日学校が終わったら教室で待ってて

わかった


もはや別れる気しかしないそんなやり取り。でも諦めたくない俺はどうにか話をして盛り返そうとしていた。明日お土産渡すついでにちゃんと話そう。そう思っていた。

そんな夏休み最終日はあまり眠れない状態で、怯えながらも学校へ行き、ずっと何を話すか、別れ話を切り出されたらどうしようかと考えていた。

始業式が終わり、HRも終わると彼女の教室へ向かった。彼女のクラスは俺のクラスより早めにHRが終わったっぽかったが、教室には彼女の姿がなかった。

(待っててって言ったのに)

彼女の教室で待ってるのもうろうろするのもなんか嫌だったので、なんとなく食堂へ行き、適当に飲み物を買って飲み干して再び教室へ行った。

するとちょうど彼女がどこからか戻ってきた。

「これ東京のお土産」

「ありがとう」

「あ、えっと」

「ん?」

(思ったより人がいて話せる空間じゃないよな、明日ちゃんと時間取ってもらうか)

「いや、なんでもない。」

「そ、じゃあ私帰るから」

「じゃ、じゃあまた」

こうして新学期初日は一緒に帰ることも無く終わった。

その日の夜俺は彼女に明日一緒に帰ろうとRINEを送った。その日は返信がなく、何度もRINEを見たが、既読にもならず、この日も眠れなかった。

寝不足と考え事で頭が冴えないまま次の日も学校に行き、教室へ行こうと思ったが勇気が出ず、彼女の教室に行くことは無かった。授業中でも頭が一切冴えることなく、学校も終わり、返信を待つため一旦部室に行った。部室に着いて5分後にようやく返信が来た。

ごめん今日友達と帰るから

(今日話さないとまた眠れなくなるし、今日ちゃんと話さないと!)

話したいことがあるから一緒に帰ろ


そう返信するとすぐに電話が来た。

「あのさ、もう別れよ」

分かっていたが、一瞬時が止まり、頭が真っ白になった。

「いや、まって一旦距離置くとか」

「ごめん、むり」

「別れるにしてもちゃんと話そ」

「いやでも」

「話せば変わるかもしんないし」

「じゃあいまから教室来て」

「わかった」


俺は足がすくみながらも彼女の教室へ行き、何を言うかも考えていなかった。この感覚はそう、夏の大会の時のような感覚だった。

教室に行くと人は誰もいなくなっていた。

「ごめん、時間作ってくれてありがとう」

「うん」

「一旦時間置いたらわかんないしさ」

「うん、たぶんもうむり。わたし1回嫌いになったらもうむりだから」

「わかった」

「うん、じゃあ」

俺は教室を後にし、部室に戻った。

こんなところでは落ち込むにも落ち込めず、何も考えず、何も考えられず、無心で帰った。

面と向かって生まれて初めて「嫌い」と言われた。中学時代に省かれてから人に好かれるように、嫌われないようにしてきたのに、好きで付き合ったのに嫌いと言われた。

きっと俺が彼女に求めていたものは、好きな存在というよりも自分の全てを受け入れてくれる存在が欲しかったんだと思う。誰かの特別になりたかったんだと思う。


後に友達から聞いた話だが、彼女から見て俺は引退してから変わったらしい。それを聞いた俺は、やはり俺には野球しかない、好きなことを全力でやるのが俺なんだと思い、大学でも野球をやると決め、夏の大会で味わった悔しい思いも全部大学で出し切り、野球を楽しもうと決めた。今の俺の好きなことに執着する理由がここからきていると思う。

そして、肝心な時こそいつも通りやるという大切さを知った。夏の大会のこともいつも通りアニメを見て、いつも通り練習をして挑めば結果は変わったかもしれない。彼女のこともいつも通り野球を好きで引退してもだらけることなく生活していればなにか変わったかもしれない。

たぶん俺はひとつの事に集中してしまう性格で、一直線なのは良いことでもあるが悪いことでもあることを知った。

でも、このことがあったからこそ今があるし、別れた当時はだいぶ落ち込んだが、今ではその時の彼女に感謝している。


ただ、ひとつだけ心に残り続けていることがある。

どんなに嬉しいことがあったって幸せだと感じることがあったって終わってしまうことを考えると怖くて、未来に臆病になってしまっていることだ。

こと恋愛においては失敗するというより信頼してた人が自分を好いてくれてた人が遠くなってしまうことが怖い、築いた関係が終わってしまうのが怖いそれで高校から今まで一歩踏み出せないでいた。

それでもさゆりの時も思ったが、人を好きになることは怖いと思いながらもやはり人間というものは人を好きにならずにはいられないのだろう。

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