フラグ73 期待した夏休み
夏の大会が終わってからすぐに夏休みに入ったが、全てのやる気を失っていた。
何年も暑い時期を乗り越え、この夏休みぐらいはゆっくり過ごそうと思っていた。人生の夏休みだ。バイトを始めようともせずひたすら家でゴロゴロしてアニメを見て時間が過ぎてく自堕落な生活をしていた。
その時は大学で野球をやろうと思ってなかったので野球は一旦終わりにして、休みを満喫しようと思っていた。そう、彼女もいるし、、、
夏休み入ってすぐの頃は彼女と毎日何通かやりとりをしていた。映画も見に行ったし順調に思えていた。
しかし、次第に返信が遅くなっていた。彼女はバイトを始め、時間もそんなに取れなくなっていたのだ。そして明らかに距離が遠くなっているのを感じていた。
ガキだった俺はなんですぐ返信しないのか、バイトの合間でも移動中でも返信できるだろと思っていた。しかも付き合いたての時に既読無視するなと言っていたのに自分の方こそ未読で連絡してこないじゃんと思っていた。
日が経つにつれて彼女への思いが重くなっていった。たぶんだけど、中学時代の信用してた人から裏切られるその恐怖が蘇ってきたんだと思う。
そんな思いが募っていたある日、彼女が何しているのか気になり、RINEを送った。
今日なにしてんの?
すると約3時間ほど経ってから返事が来た。
遊びいってる
(へー普段返事返さないのに遊び行く時間はあるんだ)
誰と?
友達と
(この前遊びの誘い断っといて友達と遊ぶ時間はあるんだ)
そう思いつつも自分から何かを言って傷つけるのが怖くて、自分が傷つくのが怖くて結局なにも言えなかった。
悶々とした夏休みも佳境に入ったある日、小栗から連絡が来た。
小栗って誰かって?簡単に言えば俺のアニメの師匠だよ。時々出てくるし紹介はそんだけでいっか。
ささきー、コミケ行かね?
(コミケかぁ、たしかアニメでやってたよな。オタクが集まる地かぁ、気分転換に行ってみるか)
いくか!
渡瀬も誘ってみるわ
おけ
渡瀬むりだってー、部活だってー
なんで?
なんか手伝いらしい
まじかー残念、しょうがないから小栗と2人で行ってやるかw
しょうがないってなんだよw
会場は東京。そう、あの大都会のTOKYO。彼女との事を落ち込みながらもやはり内心ドキドキしていた。コミケ、東京に行くのもそうだが、友達と遠出するのも記憶の中では初めてのことだったので楽しみに当日を迎えた。持ち物は財布、スマホ、イヤホン、以上。
朝5時に起き、お金もないので鈍行で向かった。
ちなみに小栗とは同じ市内なので俺の最寄り駅から合流した。電車はあまり乗ったことがないため、乗り換えアプリを頼りに電車に乗り、最初に向かったのは、、
(あっきはばらー!やっと言えた)
「おい!ささき!やばいな!」
「まじでやばい!色んな意味でアニメ通りすぎる!」
「はやくいこうぜ!」
「ちょっとまて、マップみねえとわかんねえって!」
東京の街並みはキラキラと輝いており、しかもあのオタクの街、秋葉原。そこら中にアニメの宣伝広告が掲載されており、本当に胸が踊った。
秋葉原に着くとすぐに地図アプリを見ながらグッズを漁りに秋葉原のホビーショップに向かった。
すると、見たこともない、何階建てかもわからないビル全体がお店になっていた。
「こんなの初めて見たぞ!」
「これコミケ行く前に金なくなっちゃうんじゃね!?」
「とりあえず入ろう入ろう」
中に入ると、田舎では見たこともない数の多さのグッズが並んでおり選び放題だった。
「小栗やばくね!」
「まじで金なくなっちゃいそうだわ!」
漫画もグッズもアニメ関連グッズのありとあらゆる物が置いてあり、テンションが上がりすぎて買いすぎるところだった。
(うわーやべえまじ全部売ってんじゃん、あ、これななが見てるって言ってたアニメのラバストだ。推しわかんないけど買っちゃうか!)
テンションが上がりすぎてて彼女とうまくいっていないのにお土産を買ってしまった。
「ふぅー、まじやばかったな」
「さすが東京やな」
「いや、こっからが本番だぞ」
「だな」
秋葉原に満足しきった俺たちはお台場へ向かった。
「これやば、今日の始発だって」
「うわ!ガチ勢やん!すげえなこいつら」
「冬は本気出して行くかー」
「行っちゃうかー」
「まあ、バイト休めればだけど」
「ラーメン屋なんだっけ?」
「おうよ!ささきもやる?」
「んー、そろそろバイトやろうと思ってるしやろうかな」
「なんだったら店長に話通しとくよ?」
「一旦まだ考えるわ」(ななのこともあるし)
「りょ」
「あ!見えてきた!あれだら!」
「おー!本当に見れるとは」
「アニメと一緒だあ」
「だな!」
電車を降りて会場に向かうとそこは楽園のようだった。
みんなが大好きを突き詰めてぶつける場所、コミックマーケット。そこにはキャラTを着た人、全身をアニメグッズに身を包んだ人、戦利品を手にして晴れやかな表情の人、コスプレイヤーなどなど、夢にまで見た光景だった。
「すげえな」
「だなー」
お互い感動して語彙力が極限に無くなっていた。
「入口、、探すか」
「おう」
「これさ、本当に無料なんだよな」
「おう、そこはちゃんと調べたし」
「こんな夢の国無料でいいんか」
「いいんだら」
「まじかー」
そう、昔はお金かからなかったよ。
それと今の俺とは違って、ガチガチに行った訳では無いのであまり持ち物は必要なく、また、時間も遅めにフリー入場の時間帯に行ったので入ること自体は時間はかからなかったよ。
入口まで行くと、企業ブースと同人誌ブースに別れており、俺は同人には興味がなかったため、というよりもエロ系しかないと思っていたため企業ブースを選んだ。
そもそもで会場の中を把握してるわけでもないので、どういう順路で行けばいいかあまり分からなかったがとりあえず「企業ブースはこちら」の矢印に従いながら歩いていき、無事企業ブースに着いた。企業ブースに入るとかなり賑わっており、その人数の多さと熱量に圧倒された。
「めっちゃ人いんな」
「せやなー」
「とりあえず一通りまわってみるか」
「だな」
特に下調べをしていないので、俺と小栗は一緒に各ブースをまわった。
(まじ色々売ってんだな、タペにTシャツにマグカップ?金さえあれば全部買いたいのに)
「買いたいものあった?」
「んーいまんとこねえな、金もそんなないから選ぶってなると決め金ちゃんうんだよな」
「まじそれ」
「でも、、」
(あ!Chase promiseじゃん!!めっちゃほしい!けどタペかあ、タペはなあ、でもレトルト?だよな、でカレーだよな。これならいいかも!あとTシャツか、んー、買っちゃえ!)
「ちょっ、小栗、俺ここ並ぶわ!」
「お!いいの見つけた?」
「チェイプロ(Chase promise)のグッズ買うわ!」
「チェイプロか!ええな!ささきはチェイプロ好きだもんなー」
「まあ色々思い入れがあるからね。で、列はどこに並べば」
(Chase promise最後尾?あそこか?)
「たぶんあっちに列あるっぽいから並ぶわ」
「じゃあ俺も並ぼうかな」
「買いたいもんあんの?」
「んー、ないけど付き添い?」
俺と小栗は最後尾の列を目指し、人をかき分け進んでいくとすぐに最後尾らしい列があった。そこに並ぶとすぐに声をかけられた。
「ここ最後尾じゃないんで、たぶん外に最後尾あると思いますよ」
「え、あ、すみません」
どうも外に列があるらしい。さらに人をかき分け進んでいった。
「なんかめっちゃ遠くに列あるんやな」
「そうみたいだけど、、って、え!これ!この列並ぶの!?」
そこには大行列ができており、暑い中オタクたちが並んでいた。
「これがコミケってやつか」
「これを耐えた者だけが買えるってことなんやな」
「ま、まあ暑さには慣れてるし大丈夫大丈夫、たぶん」
俺と小栗は最後尾へ行くと、最後尾のプラカードを持ってる人がいた。
「すみません、これお願いします」
そう言われ、プラカードを渡された。
(こういうシステムになってんのか)
すぐに俺の後ろにも人が来てプラカードを渡した。
「すげえな、こうやってみんなで協力してんのな」
「さっきは勘違いして恥ずかったけど、ルールみたいのがあるんやな」
灼熱の中、俺と小栗は並び、1時間してようやく屋内の列に入ろうとしていた。
「はい!じゃあここからここまでの人手上げてー!」
(え?なになに?手あげる?)
「じゃあゆっくり移動するんで前の人に続いてゆっくり歩いてくださーい!」
俺と小栗はそれに従い手を上げ、前の人に続いてゆっくり歩いて移動した。
「これもひとつのルールってことなんやな」
「これはなんで手あげんだろうね」
「横入り防止みたいなもんなんじゃね」
「あー、でもこんなんで防止できんのか」
「んー、たぶん?」
「てか、小栗抜け出せない雰囲気だけどどうすんの?」
「なんか買うかあ」
「この流れじゃ買うっきゃないら」
俺は無事目当ての物を買え、小栗はキーホルダーを買っていた。
「じゃあまたまわりますか」
「そやな、てかまだ全然ブースなんのな」
「ほんとそれな」
一通り企業をまわり、紆余曲折あったが金銭的に買えるものが少ないため見て楽しんだ。そして、小栗は同人誌ブースへ行き、俺はその間にだいぶ歩いて疲れたので日陰で休むことにした。
(そういえば、今日ななにRINE送ってからだいぶ経つけど、、きてないか、あーもう考えない考えない、せっかくのコミケなんだから)
SNSを見たり、アプリゲームをしながら暇を潰していると1時間後小栗から連絡があった。
こっち終わったぞい
出口で待ち合わせるか
おけ
俺は企業ブースを出て出口へと向かった。
(ええと、出口出口は、、あっちか、エスカレーターで降りてと、)
俺は出口の方へ通ずる順路を辿り、エスカレーターに乗った。誰も歩いていないのを不思議に思い、エスカレーターに乗ると、これまたスタッフの人が声を荒らげて言っていた。
「エスカレーターは危ないので歩かないでくださーい!」
(え?これもだめなの?すっげえ厳しいんだな。でもこういうひとつひとつを守んないとこんだけ人がいるから危ないんだろうな)
色々学びながら会場を出ると案外すぐに小栗を見つけて合流した。
「どうだった?」
「めっちゃ良かった!これで金があればよかったんだが」
「まあ、しゃーねえよ学生だし、冬までにまた金貯めて来ようぜ」
「バイト頑張るかあ」
「んじゃ帰りますか」
「うい」
俺と小栗は駅に向かい、歩き出そうとすると小栗がコスプレイヤーを見てこう言った。
「あ、あれ俺の好きなキャラだ」
「どれ?あのコスプレイヤー?」
「おん」
「じゃあ写真撮ってもらえよ」
「まじそうしよっかな」
俺は冗談半分で言ったが、会場の出口付近にいた小栗はコスプレイヤーさんに話しかけに行き、OKをもらってきた。
「ささき撮ってくんね?」
「任せとけ」
「じゃあいきまーす、はいチーズ。もう1枚いきまーす、はいチーズ」
「ありがとうございました!」
「こちらこそありがとうございました」
小栗がお礼を言うとコスプレイヤーさんも丁寧に返してくれた。
「いい思い出ができてよかったな」
「ささきはとんなくていいんか?」
「俺はそんなコミュ力ないしいいわ」
「そっかあ、なんなら俺が言ってきてやろうか?」
「んー、好きなキャラのコスプレイヤーもいないしいいや」
「そっかぁ、じゃあ帰るか!」
「そうだな、我が故郷に」
「おう!」
(また冬に来れたら来れますように)
こうして記念すべきコミケ参戦第1回は幕を閉じた。




