表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/86

フラグ72 俺の高校野球2

一回戦と同様に学校からバスで会場へ行きアップをする。一回戦とは違い、今回は全校応援で基本的に全校生徒が応援に来る。もちろん彼女もだ。

そのことを気にしていたのかわからないが、アップの時点でいつもよりなにかおかしいと思っていた。緊張もあるがなにか嫌な予感がしていて何かやらかしそうな気がしていた。その感覚と共に足が地についてないような感覚だった。

試合前のノックもエラーを連発してしまっていた。

(やばい、どうしよう。試合でもエラーしそう)

切り替えられぬまま試合が始まった。

今回も一商が先攻となり一回表から1.2番のヒットで無死一三塁、3番の三室が三振に倒れ、4番の俺を迎える。暑さもあり、頭が整理しきれていなかった。打席に入る前に監督から出るサインを見てサインが出ていないと思い、初球のストライクを見送った。

すると三塁にいた坂倉がなにか怒っているようで監督も不機嫌になっているのが伝わった。俺は何が起こったか分からなかったが、2球目の外角低めを振り切り、バットの真に当たった。が、打って2歩目で気づいた。

セカンド正面の強い当たりのゴロ、4-6-3のダブルプレーに倒れ初回のチャンスは0点となってしまった。

(あーもう完璧に捉えてたのに!くっそ!)

そう思いながらベンチに戻ると坂倉にこう言われた。

「初球セーフティスクイズだったぞ!ちゃんと見とけ!」

「あ、ごめん」

そう、俺はサインミスをしていたのだ。

セーフティスクイズとはバントをしてホームでセーフになるタイミングなら三塁ランナーはホームに走るという戦術。普通のスクイズは三塁ランナーがホームへ走って打者はボールでも必ずバントをして当てなくてはいけないが、セーフティスクイズはボールでも見逃していいためスクイズに比べるとリスクは低いのだが、俺がバントをする素振りもしなかったためサインミスをしているのにも気づいたのだろう。

そして、監督の意図としてはおそらく、初回の4番バッターがバントなんてしないと相手チームも誰もがそう思っており、意表をついて流れを持ってこようと思ったのだろう。

これがヒットを打てば良かったもののチャンスを潰すダブルプレーと最悪な結果となってしまった。

(やっぱそうだ、やっちゃった。初回のチャンスを潰したし何が4番だよ。でもちゃんと切り替えしないと、次打とう)

心ではそう思っていたもののやはり重いミスをしてしまったという事実は重く、守備の時もあまり集中できていなかった。

そんな2回裏の守備、フェンス際のファーストフライが上がった。いつもならフェンスの確認しながら捕れるのだが、なぜか足が重く走ってもボールに追いつけない気がした。あの瞬間はスローに見えた。

そしてフェンスにびびってフライを捕れなかった。

二回戦目は2年生ピッチャーが先発していたのもあってそのアウトひとつが捕れなくて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

サインミスをする、打てない、守れない。俺は徐々に集中力が下がっていった。

三回表に自分の打席が回ってきたが、そんなやつが打てるわけなく凡退。

(頼むからもう飛んでこないでくれ。これ以上全校生徒の前で恥をかきなくない)

三回以降、ビクビクしがら守備につき、その回から控えのファーストがキャッチボールをしているのが見えた。ベンチは三塁側なので、嫌でも目につく。

(あーそうだよな、使い物になんないもんな)

四回も打席は回ってこず、打球も飛んでこなかったが、2点を入れられ2-0。五回表も打席は回ってこなかった。迎えた五回裏、打球が飛んでこないと祈っていると二死でファーストに打球が飛んできた。しかも難しい打球。

(これエラーしたらほんとにやばい!後悔しかなくなっちまう!)

そう思い、なんとか捕球した。が、ベースまでの距離が遠い、ここまで2年生がよく投げてくれて俺が足を引っ張り続け、少しでも役に立ちたいと思い、ベースまで全力疾走しピッチャーには自分で行くとジェスチャーをしてスライディングをしながらベースに触れた。

判定はアウトになり、俺は一ひと安心した。

そして次の六回表の攻撃は4番からだった。

(なんとか取り返さないと!)

「佐々木、この打席から交代な」

「はい」

(そうだよな、やっぱ交代だよな。あれ、でもこれで終わり?)

4番の途中交代。全部俺のせい。流れも持ってこれずなんの役にもたたず交代となった。

(あ、俺の打順だったんだよな。個人応援させてあげられなかった。くそ、くそ、なんでもっと、、だめだ!まだ試合は終わってない!声出さないと)

色々な悔しい思いが込み上げてきて、泣きそうになったが、ここで泣いたら士気も下がるし試合もまだ終わっていない。

ただ、そうは思ってたがそれからは時の進みが早く六回裏には追加点を許し、4-0となっていた。八回には1点を返したが、反撃虚しく気がつけば4-1のまま9回最後の攻撃もなっていた。

なんとか反撃の口火を切りたかったが、三者凡退に倒れあっけなく夏の大会は終わった。

(え、もう終わり?これが俺の高校野球?ほんとに終わった?途中交代で?)

試合に負けたことよりも自分がした失敗の方が悔しかった。あの時サインミスをしなければ流れが来て、俺も調子を取り戻して勝っていたのかもしれない。負けたとしてもこんな後悔は残らなかったかもしれない。

みんなが整列に向かう流れのまま俺も並び挨拶をした。

相手が校歌を歌っている間も何を考えていたのかどんな気持ちだったのかいまでも思い出せない。

気がつけば応援席に挨拶をしており、横にいた三室が本心なのか俺を無理にでも笑わせたかったのかひとこと

「チンカップ早くとりてえ」

「まだ待ちなさい」

そんなやり取りをしていたのもあって俺は完全に泣くタイミングを失っていた。


挨拶が終わってからも泣いてる部員は多く、なんなら泣いていない3年生は俺と三室ぐらいだった。

たぶん俺は心のどこかで今日の試合で泣く資格があるんだろうか、そう思っていたのかと思う。

お通夜空気のバスの中、俺は彼女にRINEした。

ごめん勝てなかった、俺のミスで

ううん!かっこよかったよ!

引退しても彼女でいてくれる?

もちろんだよ!なにいってるの!

ありがとう


そのやりとりだけで少し救われた気がした。その後はバスの中で眠ってしまい起きたら学校に着いていた。


学校に着くと最後のミーティングが始まり、3年生は最後に一言挨拶をしていった。各々が色んな思い出といま思っていることを話していき、俺の番になった。

「お疲れ様です。2年ちょいありがとうございました。えー、まずは坂本先生(顧問)本当にお世話になりました。この代になってからファーストとして使っていただき4番を任せていただきありがとうございました。そして、3年生のみんな、色々ぶつかったり励ましあったり本当に楽しかったです。この10人、マネージャーを入れて11人で野球ができて本当に楽しくて、、バカなことも含めて最高の2年間でした。1.2年生もこんな3年生についてきてくれてありがとう。

ただ、、今日の試合、4番として役割を果たせなくてすみませんでした。1回戦目から打てなくて、、みんなに支えてもらってばかりでなにも返せなくてすみませんでした。1.2年生は僕ら3年生よりも上手い人たちが集まっているので大丈夫だと思います。明日から島内を中心に新体制で頑張ってください。ありがとうございました」

後悔は後から来るもので、途中から今日の試合を思い出して涙が止まらなくなった。本当に情けない。チームの主軸があの体たらく、チームの勢いをつけるのが4番なのにその役割を果たせなかった。それどころかチームの勢いを止めてしまった。


その後悔は今もずっと消えることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ