フラグ6 フラグ強とデジャブ
昼過ぎ、合宿所に到着した。
「運び出して少ししたらグラウンドへ向かうからなー」
「はーい」
キャプテンの指示とともに各々荷物を運び出していく。
俺たち2年生は14人全員同じ大部屋となっている。
「やっぱ移動日に練習はだるいよな」
「それな、全然行く気になんねーわ」
部屋で準備しながら俺と陽が話しているとすかさず3年生が部屋に入ってきてそろそろ行くぞと言い放った。
(めんどくせえ)
そう思いながら再びバスへ乗り込んだ。合宿所にはバスがあるので用務員さんに送ってってもらう。
バスの中はどんよりしており、どう考えても練習へ行く雰囲気ではない。
そんなこんなしているうちにグラウンドに着き準備する。
「とりあえずアップしてキャッチボールまでやろか」
今日はもう15時を回っており今から何をするんだろうとみんなおどおどしている。
キャッチボールまで終わり一旦集合がかかる。
「今日は合宿初日っていうことで、、、ノックとフリー(打撃練習)やったら自主練にします!」
「しゃー!」
軽いメニューだったので一気にムードが変わり俺を含めみんなやる気になった。
「パッパとやって自主やろか!」
いつも以上に早く練習が進みあっという間に自主練になった。
自主練になったタイミングで陽か伊勢を誘って練習しようと思ったがあいつらは先に自主練を始めていたのでどうしようかと思っていたが
「佐々木も賭けノックやろーぜ」と先輩たちから声がかかったのでそっちへ向かった。
ところで賭けノックとはセカンドかショートを守りいちばんエラーしたやつがノックを受けた全員にジュースを奢ると言うやつだ。この部での伝統?なのか去年もやって見事俺が奢ることになってしまったやつだ。
「佐々木先に言っとく、ありがとうな」
「いや!今年は負けないっすよ!」
今年は10人集まった。
「とりあえず17時までにしとくかグラウンド借りられるの18時までだし」
「おけです!」
みんな淡々とボールを捕っていき40分経過してくると集中力が切れ始めたせいかエラーをしていく。
「まだ佐々木がエラーしてないぞ!」
「今日調子いいっす。やっぱ地元なんで」
周りから色んなヤジがとんでくるが今日は調子が良いのかエラーしない気しかしない。
残り10分ともなってくるとさすがに1つ目のエラーをしてしまった。
「やっとやった!」
「いやもうあと10分なんで余裕です!」
とは言いつつラスト1周というところでお決まりの
「最後エラーしたやつエラー3判定な」
俺はなんだかんだで3つエラーしてしまっているので全奢りの射程圏内となってしまう。
そして、現在最下位の先輩がエラーしなかったので最後俺がエラーすれば最下位となってしまう。
「じゃあ最後佐々木!」
「しゃーこいやー!」
ノッカーが打つと案外簡単な打球が来た。
「あーこれは安牌だわ」「これは絶対エラーしないわ」という感じに皆プレッシャーをかけてくる。
(あ、やべ)
一瞬ボールを弾いてしまった。
が、ギリギリのところで捕ことができた。
「これはエラーでしょ!」
「捕ってるんでエラーじゃないです!」
「じゃあここはキャプテンとノッカーとマネージャーに決めてもらおう」
と、先輩が言い出しキャプテンも参加していたのですかさず
「エラーじゃない!」
さすがキャプテン優しい。となると
「エラーです!」
(ですよね)ノッカーの後輩が空気を読み残るはマネージャーのさゆりの判定に全てがかかる。
「んーー、1度弾いちゃってるしなあ、、エラーじゃない!」
大きく丸を作ったのでどっちか分からなかったがジュースを奢るのは先輩となった。
(あっぶねえ、助かった)
「ということで片付け始めるぞー」
「今年は佐々木じゃなかったか〜」
「ごちそうさまです!」
「くっそ〜うぜえ」
と、笑いながら先輩たちも片付け始める。
「おつかれ!勝ててよかったな」
「まじ助かった」
ベンチに帰ると陽と伊勢が労ってくれた。
「次はちゃんと捕ってよ」
さゆりからそう言われながら背中を叩かれた。
「うっせー」
(あーこれが青春ってやつか、こういうのいいな)
「早く片付け行く!」
「はい、すんません」
キモい感情に浸っているといつも通りさゆりに叱咤された。
(いや、ないな)
片付けが終わりバスを待っている間賭けノック参加者には先輩からジュースが奢られた。
「いやー、勝利の味は美味いっすね」
「うっせ、シバくぞ笑」
「すんません笑」
これだけ煽っても怒らない先輩は優しいしこういうの人達の集まりなのでやっぱり意心地がいいと思った。
「とりあえず飯は19時半でそれまでは風呂入ったり自由時間な」
「はーい」
各々部屋に戻っていく。
(何しようかな、とりあえず風呂に)
「風呂入るひとー?」
「はーい!」
2年生を取り仕切っている梅澤海人が聞き当然の如く全員が返事をする。季節は夏でガッツリ汗をかき皆風呂に入りたいのだ。
「じゃあじゃんけんでいこー!一旦全員でじゃんけんすんぞ」
「じゃんけん、、、」
「じゃあ勝ち5人風呂行ってこーい」
とりあえず3回に分け行くこととなり
「まさか最初に負けるとはやっぱ持ってるよなw」
「やかましいわ!まじ最悪さすがに飯前には入りたいぞ、いや入るべきだろ」
「それもそうだな、まあこんな状態じゃ部屋にいてもあれだし散歩でもするか」
「そうだな」
ということで伊勢とともに散歩しに行くこととなった。
出口へ向かうと3年のマネージャーとさゆりがいた。
「2人ともどこ行くの?」
「ちょっと散歩してくるわ」
「風呂入ってからいけばいいのに」
その言葉にはおそらく汚いから先に風呂入ればいいのにが含まれているのだろう。
「俺らもそうしたいわ!じゃんけんで負けたんだよ!」
「ああ、そうなんだごめーん笑」
「したらさ、一旦全員でじゃんけんしたんだけどサッサが1人負けしたんだよ。さすがだよな」
「まじで?さっすがー」
「うっせー、ほっとけ」
「じゃあ気をつけてねー」
「ういー」
そんな感じでさゆりからも多少いじられ外へ出た。アニメの話しやら野球の話しやらいつも通りの話をしながら10分程歩いた時に伊勢から話を振ってきた。
「あのさ1回聞いてみたかったんだけどさゆりのことどう思う?」
「ええ!あー、んー、どうだろうな普通に可愛いし明るいしいい子だとは思うよ」
「いやまあそう、なんだけどなんだろうな女として見れるかってこと」
「んーーーーー、見れ、、るけど俺はともかくあいつは友達としか見てない気がするけど。俺に限らず部員全員」
「いや、、、まあいいや」
「?」
「ほらもう戻ってきたんだしサクッと風呂入っちまおうぜ」
「え、ああ、おう」
何か言いたげだったが今度聞けばいいだろう。
「ただまー」
「ういー、さっき2回目の班が行ったぞー」
「じゃあまだもうちょいかかるか」
「そだなー」
1回目の班のやつが帰ってきていてそう言うのでとりあえずスマホでもいじって時間を潰すことにした。
(飯まであと40分ぐらいなんだからはやくしてくれよ)
10分ぐらいすると2回目の班が帰ってきたのですぐさま準備して風呂へ向かった。
サクッと風呂に入り夕飯まであと3分のとこで部屋に戻りすぐに夕飯が準備されている広間へ向かった。
「お、きたきた」
「すみません、2年最後です」
「3年も1年もいるな、じゃあ1年よろしく」
キャプテンからそう指示が出ると1年の1人が前に出て号令をする。これもこの部の伝統で飯前の挨拶は1年がやることになっている。
俺ももちろん去年じゃんけんで負けてやらされた。
「1日目お疲れ様でした。明日明後日とまだ合宿は続きますが頑張っていきましょう。じゃあ手を合わせて頂き」
「いただきます」
日頃バイトの賄いや自炊をしても野菜炒めなど簡単なものばっか食べているので焼き魚や小鉢など色々あると美味しい。
1時間程して皆食べ終わっていくとキャプテンから号令がかかる。
「一旦締めようか1年よろしく」
始まりと同じように最後の挨拶も1年の役割だ。
「えー、明日も頑張りましょう。じゃあ手を合わせて頂き」
「ごちそうさまでした」
「はーい、業務連絡です。何時に寝るかは自由だけど明日は7時半朝食で8時半出発の9時から始める予定なんでよろしく」
「はーい」
そうキャプテンから伝えられると各々部屋へ戻っていく。
「陽、洗濯物ぶち込みにいこーぜ」
「おっけー」
洗濯は合宿所に洗濯機と乾燥機があるので各自で行う事となっている。
「これでおっけーっと、終わる時間になったらまた乾燥機にぶち込みに来るか」
「そうだな、とりあえずコンビニいかね?たしかあったよな」
「全然アリ、歩いて15分ぐらいかな」
「さすが地元民」
財布を取りに戻るついでに伊勢も誘ってみたがめんどくさいので行かないと言っているので陽と出口へ向かう途中またさゆりとすれ違った。
「あれ、デジャブ?また散歩?」
「いや、コンビニ行ってくるわ」
「あ、じゃあアイス買ってきて」
「え、ああいいけど」
「手出して」
「はい」
「じゃーんけーんぽん」
「奢りね♪」
「は?」
「じゃあよろしくー」
「おい!って行っちゃった」
(てか、またじゃんけん負けた)
行くかと聞いて陽を見たらなにか遠い目でこちらを見ていた。
コンビニに着くととりあえず何か飲み物と一応の夜食を買い、頼まれたアイスを選んでいた。
(そういえば何がいいかきいてなかった、なんか絶妙に安いやつでいいか)
アイスキャンディーの部類に入るアイスを買い合宿へ戻る。
「なあ、さゆりのことどう思ってんの?」
「え?」
これもデジャブと思いながら陽にも同じように説明したら伊勢と同じような何か言いたげな顔をされた。
(だからなんだよそれ)
「まあその話はいいからさっさと戻ろうぜアイス溶けたらドヤされる」
「そう、、だな」
合宿所へ戻るとさゆりが待っていた。
「おっかえりー、ちゃんと買ってきた?」
「しょうがないから買ってきたぞ」
レジ袋からアイスを取り出している間に陽が先に行ってるわと言い部屋へ戻って行った。
「はいこれ」
「わーありがとう!これ好きなやつだ!」
「それはそれはご所望に応えられて良かったです」
「あ、でも若干溶けてるから減点」
「しょうがないだろ夏なんだから」
「アハハ、ごめんごめん、お金渡すよ」
「いやいいよ、てか奢りって言ったのさゆりじゃん」
「やっさしい〜」
「そんな数百円で優しいなら世の中の男全員優しいわ」
「アハハ、ナイスツッコミ、ありがとね」
「はーい」
じゃあと部屋に戻ろうとすると待ってと引き止められた。
「えーと、明日も頑張ろうねおやすみ」
「お、おうおやすみ」
なんかいつもと違ったと思いつつ部屋に戻った。