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フラグ58 心の陽

部活を引退したあとは、自分が全力を出せる場所を探し、別のチームのボーイズチームに入り、再スタートを切った。

だが、そのチームは全国へ行くレベルで強く俺より上手い人しかいなかった。

悔しいと思い、自分の中では全力を出していたが全く通用しない、というよりは全力で野球をやることを体が忘れていた。1年間ピッチャーをやって守備練習ができなかったというのもあるが格段に下手になっていた。また、打撃に関しても全く打てず、俺は初めて挫折を味わった。


俺は天才なんかじゃなかった。努力で頑張ってきただけの平凡な人間だった。


俺の挫折はこれだけに限らず、そのチームで一番下手だった俺はいじめられた。

キャッチボールのやってもわざと暴投を投げられ取りに行っているときに笑われ、ご飯を食べているだけでも笑われ、今思えばそんなに酷いいじめではなかったのでいじられているだけだと思うが当時の俺はいじられる耐性もなかったため遠征先のバスの中で顔を隠しながら泣き、このチームを辞めると決めた。

因果応報というやつだ。

人にしてきたことは必ず自分に返ってくる。


挫折をして気づいた。小6の時に感じた何かを失ったものとは、一緒に野球をやる仲間の大切さで、シニアの体験練習の時に感じた違和感とは野球に対して全力でプレーができないというものだった。

もう一回中学1年生からやり直したい。いや、もっと前から。

俺は野球の楽しさをみんなに教えてやれなかった。野球漫画の主人公のようになれなかった。


この中学3年で起きたことが原因か分からないが、この頃からある言葉をよく使うようになっていた。

「どうせ」「できない」「無理」

失敗した時のことを考えたり、言い訳ばかりしていた。

そんな俺が嫌いだった。


消えかけていた心の陽が完全に消えた。


その当時は本気で野球を辞めるか悩んだ。高校野球でまた同じことが起こるかもしれない、と。



進路の時期で並行して悩んでいたある学校の帰り道、俺は毎回のように悩んでいた。

これまでは何も考えないでただひたすら野球がやりたい、野球中心の人生だったから何を理由すればいい?今後の人生どう進むべきなんだろう。

とりあえず2校に絞ってはいるけど、家から近い大場東高校か兄が通っていた沼津第一商業高校。

大場東はそこそこ頭の良い高校で進学校で、一商はそんなに頭の良い高校ではなく、しかも商業高校。商業高校なら普通科目はほとんどやらず、会計や情報系を学ぶ。

普通は頭の良い高校で進学校に行けば大学に進んでそれなりにいいところにも就職できるだろう。でも、それでいいのか、そんな普通の人生で普通の理由で決めていいのか、決められた道を歩んでいくのが俺の人生なのか。


違う、絶対に違う、俺は、俺の道は俺が作って走る。

それが俺の人生だ。

でも野球はどうする。高校野球はかなりきついのとどんな人が集まっているかわからない。中学以上のことが起こるかもしれないし、またレギュラーだってとれないかもしれない。

野球のことを考えていると、ちょうど少年野球時代に練習をやっていたグラウンドを通りかかった。

懐かしいなあ。あの頃は今と違って楽しかったなあ。



なにびびってんだよ、それでも佐々木貴翔か?かなりきつい?上等だろそんなもん。今の俺の方がきついわ!野球を好きな気持ちってそんなもんなのか?

でも、、

でもじゃねえ!言い訳すんなうぜえな!違うんだよな?そんなもん俺がいちばん知ってる。俺はお前なんだから。高校でいじめられる?お前さ、兄ちゃんが高校野球やっててお前はどう思った?思い出してみろ兄ちゃんの姿を。お前はもう分かってるはずだぞ!


兄が高校野球をやっていた当時、家に帰ってきては夕飯を食べて風呂に入って寝るだけできつそうでレギュラーでもなかったが、その兄がかっこよく見えたことを思い出した。

いつもかっこいいと思ってあとを追いかけ、小学校でも野球をやり、中学でも部活を選び、ここまできた。それなら兄を追いかけ、同じ高校に入って野球、、やるか!

そして、私立の野球が上手いやつらをなぎ倒して、俺をいじめてきたやつらを見返してやる。


決まりだな。

おう!ありがとな小学生の俺。

おう!じゃあな!


そう決めた時、俺の心の陽が再び灯った気がした。



元々成績が良かった俺はあまり勉強をしなくても一商に入れたが、小学1年生から続けた塾を辞めるのも嫌なのと母親にしっかり勉強も続けることを言われ受験に向けて勉強もやることにした。

勉強をサボっているのが母親にバレてスマホを2階から庭に投げられたこともあったが、それなりには勉強した。勉強は嫌いだったけど。


進路も決まり野球に関しても続けることを選んだ俺は孤独から脱却するかと思ったが、

たとえボーイズチームを辞めてもその傷は残り学校に行っても人と話すことが人と接することが怖くなっていった。部活では友達と呼べる存在がいなくなり、ひとりでいる時間が多くなった。登下校もひとり、休み時間は机の上に突っ伏して寝たフリ、俺には野球しかなかったため野球に興味ある人もいなく、本当に何も無い人間になってしまった。


野球しか取り柄のない、しかもその野球の夢も潰れ何も無い普通の人間、主人公じゃなくなった。


しかし、悪いことだけではなかった。

当時、俺が好きだった子と唯一3年間同じクラスになり、1年生の時に話しかけてくれた事がきっかけで話すようになり好きになっていった。当時メールでもよくやり取りをしていた。たが、2年生になってからは話す回数も減っていき、3年になり、少しだけ話すようになっていた。

俺がどん底だったことを露知らず、その子は漫画の話をして当時ハマっていた野球漫画を貸してくれたり、時には休み時間にその漫画の話をしたりした。そんな日々が続き、無事高校も合格し、卒業式の練習をしていたある日、友達もいない俺はパイプ椅子にひとりで座っていた。

(あーつかれたーだりいー、かえりてえー)

「たかとーつかれたあ」

「!?」

その子は後ろの椅子に座りながら俺の肩に顔を乗せてきた。

「そ、そうだねー」

そしてその後、練習の続きが始まると離れていった。

そんなことが起きた数日後に卒業式が行われ、終わったあとは形だけ同じ部活のやつらと写真を取ったりして告白もせず、されず、アニメみたいなことは起こらずすぐに帰宅した。


その夜、伝えるだけ伝えようとその子にRINEをした。

3年間好きだったよいまは友達と思ってるけど


そう、答えから逃げたのだ。この時からヘタレなのは変わっていない。

返事はというと、


そうだったんだー!気づかなかった!ありがとう!

それだけだった。その後どう返したかはもう覚えていない。


そして、切り替え高校に入学した俺は野球部に入部しきつい日々だったがそれなりに楽しんでやっていた。新しい環境で新しい仲間と切磋琢磨して野球をやっていた。中学のようなことも起こらず、本当に濃い日々を送っていた。

あれ、どこからアニメを好きになったのかわからない?

それについては、


入学して3ヶ月経った時、結局中学のその子のことがまだ気になっており、なにか話す内容がないか考え、それがアニメだった。

そう、めちゃくちゃ不純な動機だった。でも、心のどこかで普通の人間はもうなりたくないと思っていたのかもしれない。

もともと野球しか、運動しかやってこなかったためかオタクには偏見を持っており、正直キモイなと思っていた。

だが、そう思ってもその子と連絡をとりたかったのだ。

絶対その理由の方がキモイけど。

まあ、今はそのことは置いといて、RINEを送った。


久しぶりー、菜々果ってアニメ詳しかったよね?おすすめのアニメない?

怪奇邪道とChase promiseとオタクのミリヤくんかな、怪奇邪道はグロイ系だよー

分かったありがとう!

(いや、会話終わっちゃったよ。とりあえずChase promise?ってのみてみよー)

当時はアニメ知識が皆無で何も知らなかったが、今考えるとこの3作品は当時の覇権でとくに俺が見た通称チェイプロはこの年の覇権と言っても過言ではないくらい有名な作品となった。このアニメの内容としては、主人公がとにかくクズでそんなクズが特殊能力を持ち非人道的なことに使おうとするがヒロインと会ったことがきっかけで少しずつ自分の生き方を見直し能力を人のために使い、最後には自分を犠牲にしてでもヒロインを助けたり世界を助けたりしていくという物語で学園も恋愛も伏線もあったりで、まあそんな作品を初めに見たらそりゃアニメにハマるわけで、自分がバカにしていたものはこんなにもよくできていて色んな人が関わってこんなに素敵なものを作って人に届けれるんだ。そう思った。

それからはアニメにハマりだし、今に至っているというわけだ。その時から、普通だった俺にオタクというアイデンティティが付与されたのだ。

ちなみにその子(菜々果)とはその後少しだけ連絡をとっていたが、いつの間にか連絡をとらなくなり、高校中退したということを聞いて以降、いまはどこで何をやっているかわからない。


ん?高校時代?大丈夫大丈夫また話す時が来るから。

延ばすなあ


と、まあ、青年期にこんなことがあったからこそ今度こそは全力で追い続けるし、たとえ好きになった先に誰もいなくても好きでい続ける。もう中途半端なことして全力が出せなくなる方が嫌だから。まあ、物事に対する熱量が戻り、心に陽が灯り再び燃え上がり、性格も青年期のように戻ったのは最近で、Allceanのおかげだし今いる部活のみんなやバイトのみんなのおかげただけど。

今思えば俺の性格とオタクは合っていたのかもしれない。もともと熱い、というか熱苦しい人間で器用に見えて不器用だから0か100かしか知らないし、どんなジャンルのオタクは熱量が凄まじくこの世にオタクが居続ける限り孤独にはならないと思う。




「そんなことがあったのか、いまのたかとからは想像つかないや。たかとが武力制圧してたなんて、でもいじられキャラはどこで確立したの?笑」

「なんか知らん間に高校からいじられ始めた。まあ実際おいしいから全然あり。うざかったらキレるけど笑」

「ははは、ヘタレはその頃から治ってないんだ」

「否定も言い訳もしないけど、たぶんそのことがあって好きな人に、人に嫌われるのが怖いんだと思う」

「まあ、そうだろうけど、、、傷つけられる覚悟も傷つける覚悟もなきゃその先だってないぜ」

(こいつはたまにこういうこと言うんだから)

「竜生みたいなクズ男がモテるってこういうとこなんだろうな!」

「どういうところだよ!」



午前5時、店を出たあとにふとSNSを見るとAllceanのキャストによる生配信が発表されており1週間後の水曜からとなっており、ちょうど奇跡的にバイトもなかったので見れると思い、酔っていたのもプラスされテンション爆上がりで爆速で帰った。

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