フラグ53 再び日常へ
全国大会から東京に戻り、少しだけバイトをこなしていくうちに夏休みは終わりとなりまた日常が戻ってきていた。
今日からまた大学かー、めんどくせえ行きたくねえ。
そう思いつつ重い腰を上げ2限に間に合うように自転車を走らせ大学へ向かった。
9月に入ったとはいえ、まだ残暑が残るこの気温、10時台であっても大学に着く頃には汗だくになっていた。
汗臭いから着替え持ってこようかな
2限はひとりで受け、昼休みは図書館に涼みに行き、1時間経ち3限のため再び教室に向かった。
今日は後期初めての講義なのでほぼガイダンスで終わりになる。いつもはスマホでゲームしたり寝たりして講義が終わるためガイダンスであってもあまり変わりは無い、少し早めに終わったりするが結局、図書館に引こもるのでそれもあまり変わらない。というわけで、3限までダラダラ過ごし、4限の教室に移動し空いてる席に座った。
ただ、これまでと変わったことというと、
「ういすー」
「ういすーおつかれー」
そう、合宿で話した通り後期は陽と講義を受けるのだ。合わせられる講義のみだが、今日はこの月曜の4限だけ合わせた。
「今日何限から?」
「2限から」
「じゃあ一緒か」
「陽は何限まで?」
「俺はこれで終わりであとは帰るだけー」
「まあ5限とか入れないよな」
「必修じゃない限りね、残単も多いわけじゃないし」
「いくつ残ってる?」
「26」
「ギリ3年で終わんねーじゃん笑」
「まあーフル単とればあと4だからあんま変わらんよ〜、ササは?」
「28」
「去年あれだけ落としたのにそんな変わんねーんだ笑」
「大丈夫、レポートはコピペしてないから笑」
「結局俺らは4年生もあるってことか」
「いやいや学費払ってもらってるから残ってる分受けられるってことじゃん笑」
「間違いねえ笑。じゃあ単位とり終わっても講義は受けるということで」
「それは違う笑」
「笑笑」
そして、90分の講義を耐え、今日の講義は終わり教室を出た。
「ササこれからバイト?」
「そー」
「そっかー飲み行こうかと思ったけど」
「ごめんなー、陽はこれで終わり?」
「そー帰るだけ」
「じゃあ駅まで一緒に行こうぜ」
「あーバイト先って駅の方なんだっけ?」
「そそ、チャリ持ってくるから待っててー」
「あいよー」
「おまたせしやしたー」
「うーい」
「もう来週から秋リーグかあ」
「そうやなー、秋も期待してますぜホームラン」
「いやおれそもそも高校通算1本だから」
「え、じゃあ既に大学で更新されてんじゃん」
「あーそういやそうだったわ笑」
「みんなと野球やんのも最後だもんな」
「そうだなー仲悪いけど」
「悪いっちゃ悪いけど良いっちゃ良いんだよな」
「まあ高校とか中学みたいに毎日一緒にいるわけじゃないからね」
陽と話しながら帰っていると前の方にさゆりとその友達らしき人が歩いているのが見えた。
(なんか気まずい、陽キャならこういうとき声かけるけど、部活以外で話すってなるとなんか気まずいんだよなー誰であっても)
みんなこういう経験はないだろうか、同じクラスで普通に話すが、1対1で話しかけようとすると気まずくなったり、自転車通学とかだと追い抜こうか話しかけようか、気付かないふりをしようか、それに似た感じだ。
「って聞いてる?」
「え?あーなんだっけ」
「10月からのアニメなにがやんのって」
「あーまだ放送情報とか出てないからチェックしてないわ」
「前から気になってたけどササってどうやって見るアニメ決めてんの?」
「んーと、まずはキービジュ見ながら勘でリストアップしてって、そんで次に気になったのをpv見たり制作会社見たり声優とかopedとか諸々見て決めてるかな」
「すげえ、勘って」
「そりゃあだって、6年とかオタクやってるからね。しかももともとアニメに関する勘はいいほうだったから」
「なるほどねー」
「ただね、歴が積み重なっていくと作品数が増えて自動的に続編も増えていくから自然と毎クール見る本数も増えてくっていう嬉しい特典がついてくるんだよ」
「嬉しい、ね」
「どっかのなんかのランキングより俺が言った作品の方が正しいから」
「間違いねえな」
「もうねその人に合ったアニメが分かるしどこから入ればアニメにハマってくのかも分かるよ」
「師匠すぎる笑」
「自分がそうだったし、オタク嫌いだったからこそそっちの気持ちもわかるんだよ」
「え、そうだったの?」
「あれ言わなかったっけ?おれ別に最初からアニメめっちゃ好きって訳じゃないしアイドルアニメも長年嫌で見なかったんだよ」
「ええーめっちゃ意外なんだけど」
「まあ色々とあった訳ですよ」
「そうかーそうなんだ、ササってなんかギャップというかなんかそういうのあるよね」
「そう?好きなことだけやってたらこうなっただけだよ笑」
「好きなことかーそうだよなー大事だよな」
「まあ俺は無理にアニメを好きになれなんて言わないけどおすすめはするよ、好きの押しつけをしないのがオタクだからな」
「なんなかっけえな」
「あ、でも色んな人に言いたいのはアイドルが好きなわけじゃないんだよ」
「え、あ、そーなの?」
「いやね、ライブには行ってるけどあれはアニメを見てるのと同じなんだよ」
「というと?」
「その世界観に入れるっていうか、もうキャストがメンバーだし俺にはキャストもメンバーも見えてるから。でもキャストが近くに来たら嬉しいのは嬉しいからなんとも言えない部分もあるけど」
「それは声優グループのライブ行ってる人にしか分からないかもね」
「これが近くで声優見れるとか話せるとかのイベントが行ければ違うと思うんだけど」
「そんなのあるんだ」
「なんか、なんかしらのお渡し会みたいのはあるらしい。写真集とか買うと応募できてポストカードを渡してもらって少し話せる的な」
「応募しないの?」
「静岡にいた頃は学生で金もないし会場がほぼ東京だから、というかそんなのあるの知らなかったし」
「でもいま行けるじゃん」
「そーなんだけど写真集とか買う予定ないから必然的に応募もくそもないという」
「あー行きたい気持ちはあるの?」
「そりゃあるよ!夢にでも出てきてんだから!」
「それはかなり会いたがってるね笑」
「会ったら何話すんだろうなー、あ、俺こっちだから」
「うーい、それじゃ」
「ういーおつー」
陽とわかれた俺は自転車に乗り、少し漕いで自転車を駐輪場に停めた。
今日は朔斗の代行日だっけか
「ういっすー」
「あ、モテ男きた!」
「なんやねんそれ!」
「全国で一緒にコンビニ来た人って例の人ですよね!」
(うわっ、忘れてたーうぜえー)
「はいはいそうそう」
歩は全国大会で勝ち進み準優勝して帰ってきた。俺も歩も念の為、全国大会の期間はシフトに入らなかったため、あの一件以降被るのが初めてとなった。
ちなみに、冒頭でバイトをしたと言ったが人数が足りない時に入ったためミスっているわけじゃないよ。
「夜に一緒にコンビニ行くなんてもうありますよ」
「たまたま会ったからだよ」
「いやいやいや」
「あーもう着替えっからあとでその話しような」
「ちゃんと聞かせてくださいよ?」
「話すことないけどな」
「えー」
今日はいつもの平日の流れで空いても混んでもなく、淡々とキッチンをこなし20時に休憩に入った。
いつも通り賄いを作り楽屋に戻るとすぐに歩が入ってきて休憩だと言う。
20分程すると歩が賄いを作り終わり戻ってくると案の定さゆりの話になった。
「たかとさんの好きな人可愛いですね」
「好き、なんかじゃ」
(あれ彼氏いないってことはまた好きになっていいんだよな)
「どうしました?」
「あ、いやなんでも」
「どういう存在なんですか?友達?」
「友達だけど、、なんだろうわかんない」
その時、俺にとってさゆりはどういう存在なのか分からなかった。ただ、俺に生き方を教えてくれた人というだけでどういう存在なのがはっきりさせるのが怖かったこととちゃんと考えたことはなかったんだと思う。
「なんなんすかー」
「なんだろうねえ」
「でもマネージャーさん可愛い子ばっかで羨ましいです」
「そうだなー、ひとり同じバイト混じってるけど」
「歌乃はどうなんすか?」
「どうって、2人とも仲良くしてて頑張ってるけど」
「あーそうですか」
「なんだよその反応」
「別になんでもないっす」
「じゃあそろそろ休憩終わりだし行くかなー」
「はーい」
この日は無難にバイトが終わり、飲みにも行かず帰路に着いた。
夏の夜ってなんかいいんだよなー、もう夏じゃないけど。夜、チャリに乗ると高校の頃思い出すし、ほんとよく通ってたな、あの距離を。
来年のこの時期はもう就職先が決まっているだろうか、どんな思いで夜空を見上げているのか、就職、就職か〜ほんとどうなるんだろう。
静かな夜道を浸りながら自転車をこいで帰った。




