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フラグ52 Sフラグ4

「全国第一戦、みんな悔いの残らないよう全力を出し切りましょう!そんで勝つぞ!さぁいこう!」

「しゃー!」

試合前に円陣を組みキャプテン梅澤の掛け声とともに全員の気合いが入ったところで整列し試合が始まった。

今日のオーダーは、

1番セカンド梅澤海斗(3年)

2番ショート神田颯(3年)

3番センター下野陽(3年)

4番ライト伊勢勇人(3年)

5番キャッチャー原田義希(3年)

6番ファースト岡田大翔(2年)

7番サード浅田尚(2年)

8番レフト三田悟(2年)

9番ピッチャー中嶋廉(3年)

となっている。


6回までお互い点が入らず拮抗し迎えた7回表、陽がヒットで塁に出ると盗塁を成功させノーアウト2塁、4番の伊勢は内野ゴロでランナーは動けず、1アウト2塁、5番の義希がフォアボールを選び1アウト1.2塁となったが、岡田がダブルプレーに打ち取られ攻撃終了。

「ササ!いつでもいける準備しとけ」

「うす!」

オレは体を動かしいつでも代打でいける準備をした。

7回裏、フォアボールでランナーを出すと相手の5番にホームランを打たれ、2-0となった。その後はピンチを背負ったが何とか後続を打ち取り7回裏が終了。

うちの攻撃はあと2回、それでせめて2点を取らなければ負ける。8回表の攻撃は下位打線の7番から、

「ササ、悟のとこで代打いくから思う存分ぶちかましてこい!」

「しゃー!」

2点差とはいえ野球ならすぐ取り返せる点数で投手戦となったこの試合ではお互いピッチャーの球数も多くは無い、しかもエースを下ろすと士気が下がることもある。おそらくこのような理由で9番の廉のところで代打ではなく8番の三田のところで代打なのだろう。

7番の浅田が外野フライに倒れ、打席に向かう。

「代打佐々木です」

「代打佐々木くん!背番号バックネット側に向けて」

選手の交代をお知らせします。8番三田くんに代わり佐々木くん、8番佐々木くん。

そう、アナウンスが流れ打席に入った。

(とりあえず初球まっすぐ!)

俺は初球を打ち損じファウルとなる。

(2球目か、いまのでまっすぐ張ってんのバレたから変化球か?)

2球目外のスライダーを見極めボール

(ふつーは仲のまっすぐとかだけどもう1球変化球来そう)

3球目中のまっすぐに手が出ずストライク、カウント1ボール2ストライクと追い込まれた。

(くっそーもうこっからは反応頼りだ)

4球目、外のスライダーをカットしファウル、5球目はボール。

カウント2ボール2ストライクで迎えた6球目

(甘い、、)

俺は力むことなく素直にバットを出し振り抜いた。

打球は延び、外野を越え、レフトスタンドまで届いた。最後の球だけコースが甘かったのは変化球か何かが抜けたのだろう。

「ササー!」「きたー!」

「しゃー!」

俺は1塁ベースを駆け抜けたところでガッツポーズをし1周した。

「ササ!ナイバッチ!」

次のバッターの廉が待ち構えハイタッチしながらこう言った。

ベンチでも出迎えられ全員とハイタッチした。

「ササないす!」「まだいけるぞまだいける!」

しかし、続く廉と梅澤は凡打に倒れ8回の攻撃が終了。レフトの守りには3年の井原がついた。

8回裏は廉が気合いで三者三振を奪い完全に流れが来ている。

8回を守り9回最後の攻撃に移る前に全員で円陣を組んだ。

「9回!ここ!もう思いっきりやろう!絶対点とって絶対勝つぞ!」

「しゃー!」

打順は2番の神田からですぐに2ストライク追い込まれたが粘り、フォアボールで塁に出た。

3番の陽が初球を捉え外野を越えるかという打球だったが外野が少し後ろに下がっていたためフェンス手前のところで捕られ1アウト。

続く伊勢は初球を見送りボール、2球目変化球を見送りストライク、3球目インコースを弾き返しショートの頭を越えるかと思われたがショートがジャンピングキャッチし2アウト。

2アウト1塁、今日の試合2本のヒットを打っている義希が打席に入る。

(昨日素振りもしたし2本打ってんだから繋いでくれ、義希なら打てる!)

義希は初球際どいコースを見極めボール、2球目をファウル、3球目はボールとこの場面でもちゃんと自分が打てる球を待っている。4球目もボール、5球目を見送りストライクとなり、カウント3ボール2ストライク、続く6球目をカットしファウル、7球目もカットしファウルと義希の気合いが感じられる。

8球目を打ち、外野に飛ぶ

(打ち取られた)

外野の定位置に打球は飛び難なく捕球し3アウト、ゲームセット。

義希は涙を浮かべるが、それでも整列し汗と涙が混じりあった顔で一礼をしていた。

ベンチに戻り、次のチームが入ってくるので荷物を片付けダグアウトに行こうとしたが、先に梅澤と義希が荷物を持ってダグアウトに行った。

(いつも雰囲気はサークルみたいだったけどそりゃ悔しいよな、もうちょい経ってからいこ)

俺は自分の道具とボールやらカゴやらを持ち少し時間をかけてベンチを出た。

全体が暗い雰囲気のままダグアウトに向かうと梅澤と義希に加え、廉といつも感情は出さない神田まで泣いていた。

(1点差だし悔しいよなーやっぱ試合出てる人と出てない人と比べたら熱量違うもんな)

俺は大学生になって初めてレギュラーをとれなく、ベンチメンバーの気持ちも分かるようになり、前までは試合に出ている人の気持ちしか分からなかったが今ではどちらの気持ちも分かる。次のリーグ戦が最後で次があるって考えても負けは負けでやはり悔しいものだ。


全員集まったところでダグアウトにてミーティングが始まった。

「とりあえずおつかれさん。結果は結果として受け入れて来月からの秋リーグに向けて切り替えていこう。梅ちゃんからは?」

「まあ河野が言ってくれたようにまだこれで終わりじゃないので秋リーグ優勝して3年生はやり切りましょう」

河野と梅澤がひとことずつ軽く話し、ミーティングは終わった。

ミーティング後、各々荷物をまとめバスに乗り込んだ。

(長野とももうお別れか、2年連続でここに来れてよかったな)

照りつける日差しの中、俺はそう思い球場を去った。


部屋に戻った後、義希を1人にした方がいいと思い俺は部屋を出てホテルの中を散策した。

(まだ14時か〜そういや昼飯食ってねえな。昨日食いすぎたとはいえ少し腹が減ったな)

俺はコンビニに行きおにぎりを買ってコンビニの外で食べた。

(暑いしアイスでも買ってちょっと散歩でもするか)

アイスを買ってコンビニを出ると同時に歌乃がコンビニに入ってきた。

「あれ、どしたー?」

「お昼食べてなかったので買いに」

「ひとりで?」

「はい、えっとさゆりさんを1人にした方がいいと思って二葉さんと出てきたんです」

「その二葉ちゃんは?」

「暑いからとホテル内を歩いてみるそうです」

「そっか」

「たかとさんは、、」

「ん?」

「いや、なんでもないです」

歌乃は何か言いかけたがそれを飲み込みコンビニで食べ物を買って出てきた。

「あ、戻ったんじゃ」

「あー外でアイス食べたかったし」

「そ、そうですか。じゃあ私はこれで」

「はーい」

(なんか気使われたかな)

俺は少し外を散歩しホテルに戻った。

(まだ15時前か、陽と伊勢の部屋に行くのもなあ。かといって自分の部屋に戻るのもなあ)

どこに行くのも気まづくなった俺はロビーにある椅子に座りスマホゲームをしたりSNSを眺めたりして時間を潰した。

30分ぐらい経った頃、大宮が通りかかり話しかけてきた。

「あれサっさんなにしてんすか?」

「ひまつぶしー」

「なんすかそれ、、あ!暇だったら僕の部屋きてスマホの野球ゲームで対決しましょ」

「えーいいよ」

「あざす!」

俺は大宮の部屋に行くと1年生が数人集まっていた。

「みんなーサっさん捕まえてきたぞー」

「人をモンスターみたいに言うな」

「すんません、じゃあみんなで対戦しようぜ」

俺は1年生に混じり時間を潰した。

「他の3年生はなにしてんすか」

「しらん」

「えー、一緒の部屋って誰っすか」

「義希」

「義希さんとなんか話さないんですか?」

「いやー、1人にしてあげようかなって」

「あーなるほど、だからロビーにひとりでいたんすね」

「そゆこと、でもまあもう大丈夫だと思うからそろそろ部屋戻るわ」

「おけっす!また夕飯で」

「あいよー」

部屋に戻ると義希の姿はなく、17時をまわっていたのでひとりで大浴場に行き再び部屋に戻ってきた。

(あれ、入れ違いだったかな)

夕食の19時まで待ったが、今日も義希は戻ってこなかったのでひとりで夕食会場に行った。


そして夕食もお通夜状態、、でもなく夕食時間には全員立ち直りいつも通り騒がしくしていた。

(やっぱりこうなったか)

昨日と同じく陽と伊勢と同じテーブルで食べていたが、隣のテーブルではもう廉がホームランを打たれたことをいじり始めている。そして神田が泣いていたこともいじられていた。

「お前が首振ったからまっすぐ投げさせてやったのに打たれたじゃねえか」

「いけるとおもったんだよ!」


「神田の泣き真似、、」

「おいやめろ」

こんな感じであれだけ暗かったのにもうネタになっている。こういうところが東彩大軟式野球部の良いところであり悪いところである。


そして、夕食後は去年と同様に外で小さいお疲れ様会をした。

「みんなー!今日はおつかれ!今日は飲んで飲んで飲みまくるぞー!」

「いえーい!」

「外だから吐いても大丈夫だぞー!」

「いえーい!」

「ではみなさん缶やコップをもって〜かんぱーい!」

「かんぱーい!」

ライブか

珍しく梅澤がハイテンションで乾杯の音頭を取りちょい宴が始まった。


「ササ!まじないすホームラン!」

「あざーす!」

「もう秋リーグのセカンドはササでいこう!」

「あざーす!」

河野と梅澤に絡まれて言われたが、俺は知っているそんなことはないだろうと。


「おいササ!もっと本気出せよ!」

「出してるわ!ホームラン打ったろ!」

「たりねえよ!」

「どうしろってんだよ!」

「全打席打てよ!」

「じゃあやってやんよ!」

「ういー!かんぱーい!」

何故か今日は色んな人に絡まれる。義希はノリなのかなんなのかわからないがこういう時には必ず本気出せ、諦めんなと言ってくる。

わけわからん、でもおもしろいし楽しい。

中学の時と違って良い仲間、良い友達ができて本当に良かった。この大学にこの部活に入って本当に良かったと思った。


「サっさんまじあのホームランぱねえっす!ほんとしびれたっす!」

(こんどはおまえ(大宮)かー)

「はいはいありがと。てかお前何飲んで」

「それ以上は言わない約束ですよ」

「おい素に戻るな」

本人曰く、雰囲気に酔ったらしい。そう、本人曰く。

「でも野球ゲームくそ弱いんで練習してきてください」

「はい、シバキマース」


特に今回は腹が痛くなるくらい、おかしくなるくらい笑って飲み会で一番かと思うくらいみんなで楽しんで笑った。


そしてちょうどひとりになったタイミングでさゆりに声をかけられた。

「たかと、ちょっと歩かない?」

「え?いいけど2人で?」

「うん」

(えーなにこれ、どういうアニメ?)

適当に歩きながら他愛もない会話をして5分ぐらいしたところでさゆりが声色を変えて話し出した。

「わたしさ、4月に別れたっていったじゃん」

「うん」

「なんでかきかないの?」

「それは、、気にはなっていたけどきいていいもんなのかわからなかったし、、」

「たかとらしいね、、、浮気、されたんだ」

「そっか」

俺みたいな恋愛スキルも女心もわからない人間がどう反応していいのかわからなかった。

だからこそこう言った。

「さゆりが話したいなら話して話したくないことなら何も聞かない」

「ふふっ、ありがとう」

さゆりにしては少し悲しいような笑い方をした。一息ついてさゆりが話し出した。

「元彼はねバイト先の先輩で初めて会った時から気になってたの、1年の冬あたりかなその先輩がアプローチしてきて何回かデートしたりして、去年の今ぐらいだったかな、付き合おうって言われて付き合ったの、元々気になっていた人だし初めは楽しくて色んなところに行ったし旅行にも行ったんだけど、少しして予定が合わなくなったりドタキャンされたりで、その時からかな心のどこかで私はこの人の事本当に好きなのかなって思い始めてたのは。いや、今思うと最初から好きだったのかな、、それである日一緒にいる時たまたまその人のスマホの通知が見えて浮気されてたことがわかったの。

だからその日にお別れしてって感じで。

別れてからはすっきりしたけどなんか悔しくて、よくわからなくなって、何を持って好きなんだろう、人を好きになるってなんなんだろうって思い始めて、、ずっともやもやするし全力で楽しめない日々が続いて、、ちょっと自分が嫌になっちゃった。」

俺は元彼の表現が徐々に他人へと変わっていくのが気になった。

「その人バイトは?」

「やめちゃった、私のせいだよね」

「そう、かもしれないけど自業自得だとは」

「そっか」

会話が途切れ横を向くとさゆりは泣いていた。

「えと、さゆりは悪くない、というか頑張ってるのを知ってるし、、俺はさゆりがずこい人間っていうのを知ってるから嫌になんてなるなよ」

と、俺はさゆりの涙を拭った。

「たかと、、手ちょっと酒臭い」

「それいまいう?」

「あははーごめん、、ありがと」

「まあ、無理に前向けとは言わんからさゆっくり自分のペースで頑張ればいいんじゃない」

「そっか、そうだね!そうだ!」

「あとこの際だから言うけど、さゆりのおかげで毎日楽しもう、全力でやってみようって俺は思えたから本当にさゆりには感謝してるよ」

「え、、あ、ありがとう」

「なに照れてんの?」

「うっさいばか!たかともじゃん!それに慰めるの下手!」

「はあー?」

「ぷっははは、ほんとありがとね。」

「どういたしまして」

俺とさゆりはみんなが飲んでいるところに引き返した。

「あ!みえたみえた!無事戻ってこれてよかったあ」

「だな」

「あのさ!お互いクリスマスに彼氏彼女いなかったらその日デートしよ!」

「は?」

「約束ねー!」

そう言ってさゆりは走っていった。

(はあー!?どういうことー!?)


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