フラグ51 負けず嫌いめ
合宿から10日経ち、全国大会を行う長野県に向け出発となる。
昨年と同じように初日はバス移動と開会式のみで今回も旅行気分である。
11時半には会場に着きこれからのスケジュールについて梅澤から話があった。
「13時から開会式なのでベンチ入りメンバーは12時半に3塁側の外野席に集まってください。それまでは自由行動です」
「うーす」
外は暑いのでバスの中で昼食を済ませ、飲み物を買いに行こうと席を立った。
「どこ行くん?」
「飲みもん買いに」
「じゃあおれもいくー」
横に座っていた陽と一緒にバスを出て自販機へ向かった。
「長野も暑いなー」
「軽井沢とかじゃないからね」
「にしてもほんとよく全国行けたな。去年より確実に弱いのに」
「そうやなー、ピッチャーはいいんだけど打てないからなー。ササのおかげじゃね?」
「いや俺たかが代打だぞ」
「でもうちの打点王じゃん」
「たまたまだよ〜」
「その打力を俺にも分けてくれよ」
「陽も打ってるやんけ」
「そんな打ってないって」
「まあ試合出てる人と代打とじゃ集中力が違うからしゃーないって、こっちは1打席集中すりゃいいんだから」
「それでもすごいよー」
「いやあ、ありがとうございますー」
(あ、あれ歩じゃね)
「バイトの後輩っぽいのいたから話しかけてくるー。先戻っててー」
「あいよー」
俺はほっつき歩いてる歩の肩を叩いた。
「はい?あ、たかとさんか」
「なんだよそのめんどくさい人に会っちゃったみたいな感じは」
「違いますよー、そういえば全国決まったって言ってましたもんね」
「まあレギュラーじゃないからほぼ旅行だけどな」
「うわーずるいっすねー。あ、さっき歌乃にも会いましたよ可愛い人2人ぐらい連れて」
「おまえなー」
「マネージャーさんっすか」
「そうだけど」
「あ、なんか前に話してた大学一緒に歩いてたっていう」
「おまえよくそんなこと覚えてんな」
「2人のうちのどっちなんですか?」
(うぜえー)
「教えねーよ」
「うわ、さらに怪しいっすね」
(まじうぜえー)
「ほらそろそろ時間だからチームのとこ行った方がいいだろ」
「あ、そっすね。じゃあまた」
「ういー」
「あ、たぶんホテルもうちと一緒なんでよろしくですー」
(はあ?)
そう言いながら歩は走っていった。
(あ、でも去年も学栄いたなー。めんどくせー)
時間も時間なので俺も走って3塁側へ向かった。
「ササにしてはギリギリだったねー」
「あーちょっと話しすぎちゃった」
「そっかそっか、でもそれ」
「え?あー!飲みもん持ったままだ!どうしよ」
「こっち来る前さっきさゆりとすれ違ったから渡してくれば」
「そーする!」
(やべえやべえ)
俺は階段を駆け上がりスタンドにいるであろうさゆりの元に向かった。
(たぶん写真撮る準備してるから、、、いた!)
「さゆり、、ちょっとこれ、もってて」
「えー!なんでこんなとこにいるの!息まで切らして!」
「飲みもん買ったまま入場口行っちゃって」
「わかったから早く戻りな!」
「ごめんありがとう!」
俺は大急ぎで戻り無事、入場行進までに間に合った。
開会式は猛暑の中、1時間して終わった。退場した後、梅澤から14時半にはバス出発するからそれまでてきとーにと言われたが、特に歩以外知り合いがいないので俺は1人でバスへと戻った。
バスに戻るとすでにベンチ外メンバー(入場行進しなかった組)が乗っておりマネージャー3人も乗っていた。
「さゆり飲みもんありがとう」
「まったくもう、はい」
「あ、たかとさん、開会式前に歩さんにばったり会いました」
「きいたきいた、俺も会ったよ」
「それじゃあ入れ違いだったんですね」
「みたいだね」
「なんかユニフォーム姿の歩さん新鮮でした笑」
「私服とバイト着してみてないからね、あいつあれでレギュラーだしな」
「すごいですよねほんと」
「学栄同じホテルらしいからまた会えると思うよ」
「そうなんですね」
話の切れ目が分からなかったが、ちょうどその時神田がバスに入ってきたのでそのまま自分の席についた。
全員揃うとバスが出発し昨年と同じホテルに着き、荷物をおろし自分の部屋へと向かった。
今回は2人部屋のため、陽と伊勢とは同じにならず義希と同じ部屋になった。
「ササ、ちょっと素振りしに行こーぜ」
「いーよー、でも素振りできるとこなんてあんの?」
「許可とったから素振りやるひとは外でってRINEきてたぞ」
「え?あーほんとだ。じゃあいこういこう」
俺と義希はバットをもって外に出て素振りを始めた。
「たぶん明日も代打あるからちゃんと準備しとけよ」
「任せとけって」
「俺はほんとはササにスタメンで出て欲しかったけど」
「まあ河野がこういう方針でいってるからしゃーなしだ。でもサンキューな」
「ほんとササいいやつだよな」
「そんなことないよ」
「初めて会った時はほんとに野球部かって思ったけど」
「おい」
「だって授業で自己紹介したとき野球部って言って、しかも小学生からって」
「やかましいわ」
「でも一緒に野球やってたらアツいやつなんだって思った」
(キャッチャーってバッターを観察したり周りを見る役目があるから本当の性格に気づくって職業病みたいなもんなんだろうな)
「いやまあありがとう」
「おうよ!」
その後は淡々とバットを振り30分ほど素振りをして部屋に戻った。
「じゃあ汗をかいたし風呂行くか!」
「あいよー」
大浴場に行くと他の学校の野球部らしき学生がいて混んでいた。俺も義希もせっかちなのですぐに体と髪を洗って湯船に浸かり30分もしないうちに風呂から出た。
「飯何時だっけ?」
「えっとー19時やな」
「あと1時間半とかか」
「俺はアニメでも見てるから他の部屋でも行ってきたら?」
「そうだなー飯食ったあとは中嶋とかとミーティングするし河野とかのとこ行ってくるわ」
「あいあーい、飯はそのまま行っちゃう?」
「んーたぶん。てきとーに行ってていいよ」
「おけー」
義希は部屋から出ていき完全にひとりとなった。
(ひとりじゃー!前よりよくはなったけどやっぱ人とずっと一緒にいると疲れんだよな。アニメみーよう)
義希が戻ってこなかったので夕食会場に向かった。去年と同じくバイキング方式だ。
「うっすー、ここいっすか」
「どうぞー」
先に来ていた陽と伊勢と同じテーブルに座った。
「どう?義希お同じ部屋は?」
「思ったよりふつーだよ、ここまできて破天荒じゃねえ笑」
「だよなー」
「特に義希は攻守の要だからな、じゃあ食いもんとってくるわ」
「ういー」
(日頃食べれないものばっかだから色んなものたーべよ)
料理は得意でだいたいのものは作れるが、食材にお金がかかってしまうため簡単なものしか作らない。こんなときこそ普段食べれないものを食べて胃の中に食べ物貯金をしとかなければ。
「いや小学生か」
テーブルに戻ると伊勢にこう言われた。
「いやーだって普段食べれないものばっかだし限界大学生だから笑」
「それでも寿司と揚げ物とハンバーグって」
「さすがに取りすぎちゃった笑」
「ちゃんと全部食えよー」
「それはちゃんとたべるよー、デザートもあったし」
「吐くなよ」
「大丈夫大丈夫、たぶん」
「おいー」
その後もローストビーフやギョーザ、春巻きなど賄いでも作れないものを取り続けデザートも果物とアイスを食べた。
ほんと茶色いもんばっか。
(さすがに食いすぎた〜)
「俺らもう部屋戻るけどササも戻る?」
「ごめんすぐに動けない笑」
「じゃあ俺ら先戻ってるわ」
「ういー」
その後10分ほどして会場を出た。
(そういや歩いなかったな、入れ違いだったのかも)
「うっすー、これからなにすんのっ?」
と、さゆりが肩を当ててきた。
(なんでそんなルンルンなんだ)
「まあ、もうやることないしアニメでも見よっかなー。だいぶ食べすぎたし」
「えーじゃあ運動がてらコンビニついてきてっ」
「えーいいよ」
「いいんだ笑」
「じゃあいかないけど」
「うそうそ、おねがーい」
「よかろう」
「ぷっははーなにそれー」
数分圏内にコンビニがあるのでそこに向かった。
ウィン
コンビニの入口が開きレジに見覚えがある横顔の男がいた。
(うわ!やばい!)
「あれ?たかとさん買い物っすか」
歩だ。
「そ、そー」
(いまいちばん会いたくねえやつに会っちまったー!)
「そちらは、、マネージャーさん?歌乃と一緒にいた」
「あ、どうも」
(人見知りすんのかい)
「いつもたかとさんがお世話になってますー」
「お前は俺のなんなんだよ笑」
「挨拶だいじなんで笑」
「うっせーわ、ほら友達待ってんぞ」
「あ、じゃあまた!お互いがんばりましょう!」
歩はそう言ってコンビニを出ていった。
(後ろでにやにやしてんのが目に浮かぶわー、今度バイト被った時いじられそう)
食べ物と飲み物を見ながらさゆりが話を振ってきた。
「礼儀正しい子だね」
「いやいやいやいや、いじってるだろあれ。一応は野球部だし礼儀は正しいけども」
「たかとってどんな後輩に対してもあんな感じだよね」
「いやーほんとは歳下とどう接していいか分かんなくてああなってるだけだけど」
「えーそうなの?」
「俺さ、親戚の中でもいちばん歳下ってせいか扱いがわからないっていうか」
「そうだったんだ、そんな末っ子な感じしないけど。あ、わたしこれにしよ」
「んー人によりけりかも、上いるとも言われるし、下がいるとも言われるし、あーでも一人っ子とは言われないなー」
「それって、、」
「あ、これにしよー。ごめんなんか言いかけた?」
「いや別に」
「じゃあはい」
「なに?」
「え、奢ってもらう気だったんじゃないの?」
「ち、ちがうよー!そこまでがめつくないって!」
「え?じゃあなんで行こうって言ったの?」
「うっさい!ありがとう!はい!」
「なんだそれ」
俺がさゆりの分も支払い、コンビニを出た。
「そういやさゆりは兄弟いるの?」
「わたし?じゃあ当ててみて」
「んーー、一人っ子だろ」
「え!せいかい!なんでなんで!?知ってた?」
「いや知らんけど、なんとなく?」
「えーなんかくやしいー」
「ふふーん、人を見る目には自信があるんでー」
「うわっうざー」
「ちょっと傷つくからやめよーね」
「じゃあわたしは何型でしょう?」
「負けず嫌いめ、んーーー、ABかAなんだよなー、ABで」
「ぶっぶーA型でした〜ざんねーん」
「言い方うぜぇー」
「ってことでこのへんで〜、ありがとね。明日がんばろう!」
「はーい」
さゆりが手をあげてたので俺も手をあげてわかれようとした。
「ちょっとちょっと」
さゆりが俺の服の袖を掴んだので振り返った。
「ん!」
「ん?」
「ほら、手!」
「え?だからじゃあまたあしたー」
「ちがうちがう!ほらハイタッチ」
「え、ああ、そっちね」
パンッ
「じゃあまたあしたねー」
「うーい」
明日は全国第一戦、出番があるかわからないが出場したら全力でやる。ただそれだけだ。




