フラグ29 送別会
リーグ戦の劇的ホームランから数日後、今日のバイトは仕込みからだ。
「はよっすー」
「ういすー」
一緒に仕込み、というか今日も店長代行日なので楽屋にはすでに健人がいた。
「あ、そうだ。俺就職先決まったから3月でここ辞めるわ」
「おー良かったけど寂しいな、最後のシフト日は?」
「まあまあ家は今と変わらないし仕事先もこの辺だし、たまに食べに来るし飲みにも行けるからな。最後はたぶん24かな入れる?」
「それもそうか、たーぶん大丈夫!」
「じゃあ最強メンツにしとくよ、ってことで今日もちゃちゃっと仕込み終わらしてゲーム(switch)でもやりますか」
「おうよ!今日は負けねえ」
最近、店長がいない日は健人がバイト先にゲームを持って行ってやるようになっている。俺とか朔斗、竜生とかの仕込みの時は早めに終わり、暇を持て余すためゲームをするようになった。
1時間ほどで俺も健人も仕込みを終わらせ、開店までの残り1時間はゲームに費やす。ゲームを始める前に健人が誰かと電話をしている。
「じゃあ早く来い、ないす、じゃ、、あゆ(歩)今から来れるって」
「ないすすぎ」
「じゃあ先に始めてますか」
歩は今日17時入りだが、一緒にゲームをやるため早めに呼んだらしい。後輩力高いな相変わらず。
ゲームは対戦ゲームで2回程度俺と健人が戦った後に歩が合流した。
「おはようございます!やってますね」
「早く準備してやろうぜ」
「ちょっと待っててください」
その後、3人で開店の17時前までゲームをやった。戦績は圧倒的に健人が強く、ほぼ俺と歩対健人となっていた。
「あゆよえーな」
「いや、これも作戦です。ここのコンボ技で、、」
「負けてんじゃん」
「こういう時もあります。あとは貴翔さんがやってくれるので」
「これ別にチーム戦じゃないけど」
「任せろ、健人は俺が叩き潰してやる。ここでこれで、、あーい!」
「たかやるねえ、でもまだ勝ってるけど」
「貴翔さん大丈夫です。やれます。自分を信じましょう、、あーそこ違うなあ、健人さんが誘ってきてるんで、、」
「うるさ!」
「はい、これでおわりでーす」
「くそ!」
「あー負けちゃった、、」
「まじうぜぇw小言がうるさすぎ!」
「いや僕はアドバイスしてるだけなんで」
「うざすぎw」
「よし、そろそろみんな来はじめるしこの辺でやめとくか」
(ゲームまで強いって健人に苦手なものとかないんか)
数分後、続々とシフトに入っている子たちが出勤しだし開店する。今日も俺はキッチンで、というかキッチンを覚えたての子が2人以上いない限りはホールをやらない。たまにノリでホールをやる時はあるが、2ヶ月に1回ぐらいだと思う。そして今日は、健人もキッチンだ。普通なら代行の人がホールをやるが、4月から健人もいなくなり竜生もそのうち扶養でフェードアウトしてくのでいずれは歩も店長代行をやるためホールを磨いておく必要があるからだ。歩は頭がいいからか分からないが12月1月で一応キッチンができるようになっていた。さすがにまだ俺の方がキッチンはできる。
「健人さんと貴翔さん休憩入ります?」
「2人同時でいいの?」
「今日平日ですし予約も17時台はないので大丈夫です」
「じゃあ入っちゃいまーす」
「どうぞ!」
「俺一本吸ってから行くからいくわ」
「あいよー」
楽屋に入りスマホを見ると通知が入っていた、渡瀬からだ。
そろそろAllceanのライブ何枚積むか決めようぜ
5月に静岡で行うライブのことだ。積むとは、今回であれば5周年テーマソングCDにライブの応募券が入っているため何枚応募するか、つまり当たる確率を上げるためにCDをたくさん買うということだ。
(あーテーマソングに入ってるんだもんないくらだっけ、、、税込1450円か、とりあえずそのへんあんまわかんねーし)
俺そもそも応募すんの初めてだからどんくらい積んだらいいかわかんねーわ
(おっ、すぐ既読ついた)
俺もこの前積んで当たった訳じゃないからわかんないけど5周年だし5枚にしとく?
(7000円ちょいか、まあいいか)
おけそれで
(とりあえず忘れないうちに予約、って発売明後日やん!あぶねー)
CDの予約をしたとこで健人が楽屋に入ってきた。
「たか、飯作る?」
「仕込み中に少し食ったからいいや」
「じゃあさっきの続きやろうぜ」
「やろうやろう!」
3回戦全敗した。
「俺もう休憩いいや、発注前に長く休憩とりたいし」
「おっけー」
健人は楽屋を出て戻っていった。
少し動画でも見て俺も行くかと思いスマホを見ると今度は竜生からグループが作られ通知が入っていた。
こんばんは!咲さんかなこさん健人の送別会を行います!日程は3/20営業後の24時ぐらいです!場所はいつものとこで!
あと寄せ書きとプレゼントを渡すので寄せ書きは楽屋の僕の棚に紙とペンがあるのでそれに3人分のメッセージを書いといてください!期限は3/19まででおっけーです!期限が短くてすみません!それまでシフト入ってない人は僕に言ってくれれば代筆するのでメッセージを送ってください!プレゼント代は一旦僕が出すので金額はまた言います!そんな高くならないようにするのでよろしくです!
(3/20ってあと1週間やんけ、えっと竜生の棚は、、これか?)
棚にあった紙袋の中身を見ると紙とペンが入っていた。
(せっかくだし書いてから戻るか)
咲さんへ
卒業おめでとうございます
バイトも5年間お疲れ様でした。本当にお世話になりました。たまには食べに来てください!きっとキッチンやっているので
と、
かなこさんへ
卒業おめでとうございますバイトも4年間お疲れ様でした。
新人の時に怒られてから怖かったですけどなんだかんだで仲良くなれて良かったです。時間あったらまたみんなで飲みに行きましょう!
と、
(健人か、少し考えたいから明日でいいか、よし戻ろ)
この日はやはり平日だったこともありあまり売れずクローズも早く終わったので退勤した後も俺と健人と歩は1時間ほどゲームをやって帰った。
1週間後、送別会の日は俺もシフトに入っており24時前にはクローズも終わり店を出ることが出来た。
「よっしゃー!いくぞー!」
「竜生さん、僕先行ってみんな待っときますよ」
「よろしく!新井で予約してあるから」
「おけです!」
竜生は頼んだぞと歩の背中を叩き、その日シフトに入っていた俺と竜生以外を引き連れていった。
「じゃあ俺らは健人待ってから一緒に行くか、そろそろ着くって言ってたし」
「あいよー」
「そういえばこの前大学でたかとと女の子が歩いてるの見たんだけどだれあの女の子」
「え?あーたぶん部活のマネージャー」
「へーなんかないの?」
「なんもないよ、その子彼氏いるし」
「えー!なんだたかとにも春が来たのかと。春休み期間なのになんで2人でいたの?」
「用事があって大学行ったらさゆ、その子とたまたま会ったから一緒にいただけ」
「彼氏いんのに?2人で」
「いやだから偶然だし」
「そっか〜、、あっ、けんといた!」
「ういすー」
「おつー」
「なんか竜生と貴翔が一緒なの不思議な感じだな」
「あーーーたしかに!だいたい健人か朔斗がいるしな」
(言われてみればそうかも)
「何話してた?」
「そう!それがこの前たかとと女の子が、、」
「いやもういいよそれ!もうみんな着いてるら?行くぞ!」
「じゃあその話着いたら詳しく」
「朔斗と歩も交えてな」
「おいー」
居酒屋に着くと咲さんかなこさん含め参加する全員集まっていた。
「おつかれー!今日の主役の一人健人くんでーす!」
「はい、おつおつー」
「お疲れ様です!」「おつかれ!」
俺と健人、竜生の席は既に用意されてあり歩が用意したのだろう。座敷で長テーブルだが俺、健人、竜生、朔斗、歩が近くになるようにされていた。
咲さんとかなこさんは女の子組で固まっていた。
「飲み物まだ頼んでない?」
「いやもう全員分というか、めんどくさいんでビールとレモンサワーとハイボールピッチャーでもらいました」
「ほんとお前はできるやつだな」
「恐縮です」
「言い方うざ」
「なんでですか!?ほらきましたよ」
それぞれピッチャーが置かれ主に歩が注いでいき、全員分注ぎ終わり竜生が立ち上がった。
「おつかれさまです!今日は咲さんかなこさん健人の長年バイトを引っ張ってくれた人の送別会です!楽しく飲んで3人を送り出しましょう!かんぱい!」
「かんぱーい!」
竜生は全員と乾杯するため歩き回り戻ってきた。
「はいおつかれー」
「ういー」
「で、貴翔さっきの話聞かせてよ」
「え!もうすんの?」
「あ、してくれるんだ」
「くっそーハメラレタ」
「なにたかちゃん彼女でもできた?」
「そうなんですか!?貴翔さん」
「なんでお前らも食い気味なんだよ、もう大したことじゃないよ。偶然部活のマネージャーと大学の中を歩いてたとこを偶然竜生が見かけたってだけ」
「なんだそれだけか、つまんな」
「だから大したことじゃないって言ったやんけ」
「でもその子彼氏いるらしいし春休みの人がいない時期に偶然会うってのもおかしくない?」
「まって、その情報あるとあやしいね〜」
「だからほんと偶然だし、俺もバイトあったから一緒に駅まで、、」
(あ、やべ)
「一緒に駅まで!?」
「いや普通に友達だからそんくらいあるでしょ」
「いやー帰る方向一緒だとしても彼氏いんのにそういう行動するかね」
「そういう子だから」
「なに俺は知ってますみたいな」
「あーもうちがうちがう!歩ビールとって!」
「はぐらかしちゃって、ついにたかちゃんにも春が来たのか」
「あーもうそれでいいよ!」
「たかちゃんほんとおもしろいんだから」
「うるせー」
2時間経ったぐらいで竜生が立ち上がった。
「はい!では咲さん、かなこさん、健人立っていただいて、、歩そのへんの袋全部とって」
咲さん、かなこさん、健人は立ち上がり横一列に並んだ。
「これですか?」
「そう!」
歩は渡しに行きそのまま竜生の隣で助手をしている。
「えっとまずは咲さん!卒業おめでとうございます!お疲れ様でした!」
歩が持ってきた紙袋から寄せ書きとプレゼントを渡した。
「ありがとう!」
「じゃあひとことおねがいします!」
「あ、えーとみんなありがと〜4月からがんばるね〜」
「はい!ありがとうございます!次!かなこさん!卒業おめでとうございます!お疲れ様でした!」
「ありがと!あれこれ健人の寄せ書きじゃない?」
「すみません間違えました!なにしとんねん!歩!クソボケが!」
「あたりつよ、すみませんこっちです」
(もはや舎弟みたくなってんな)
「では、気を取り直してテイクツー!卒業おめでとうございます!お疲れ様でした!」
「ありがと!」
「ひとことおねがいします!」
「大学1年から入って人生で初めてのバイトだったんですけど本当にここがバイト先で良かったです!楽しかった!ありがとう!」
「はい!ありがとうございます!最後は朔斗から渡してもらいます!」
「はいおつかれー」
「はいありがとう」
「なんやねんそれ、健人からもひとこと」
「えー3年ほどだったんですけど本当にお世話になりました。ありがとうございました」
「はい!ありがとうございます!えっとー以上です!」
「プレゼントは開けていいのー?」
「はい!どうぞ!」
「私たちは、、コスメだ!」
「色々迷ったんですけど使ってもらう系がいいと思ったので!」
「これ最近出たやつでほしかったんだ!」
「なんで竜生がコスメなんて知ってんの?誰チョイス?」
「それは、シークレットで」
ここで女の子組が何も言わないなら竜生の彼女チョイスだなとみんな思った。
「健人はなに?って言ってもだいたいわかるけど」
「まあもちろん、、ジッポーだね」
「毎年恒例喫煙者はジッポーです!」
「ありがたく使わせてもらいます。無くさないように」
「さすがに今日は持って帰れよ」
「今日もな」
プレゼント開封の儀はこれで終わり3人とも寄せ書きを読んでいる。
「貴翔、意外と長いな」
「やめてー恥ずいから」
「えっと、、、健人へ入った時は怖かったけどでも案外すぐに仲良くなれて本当に良かった!どんなときでも冷静でそれでいて面白い部分もあって特にバイトの時は健人みたく何があっても冷静に行動できればなって思ってた。2年間だったけど本当にありがとう!また飲み行こうな、、か」
「音読すんなー!」
「ちょっと泣きそうになったわ」
「まじで?」
「おおまじ」
「ちょっ、もういい俺のターンおわり!」
その後の健人は結構飲んで酔っ払い、かなりベロベロの状態になっていた。
「たか!たか!かんぱいしよかんぱい、さくともおなじとしーかんぱーい」
3人で乾杯し飲みきったところで健人は寝てしまった。その後は残った人で1時間ほど飲んだとこで閉店の時間となり潰れている人を起こしながら店を出ようとした。もちろん健人も無理やり起こし店から出させようとするが全く動かない。すると扱いが分かっている竜生と朔斗が来た。ちなみに竜生は幹事なので今日はちゃんとしている。結構ギリギリだと思うが。
「けん!けん!起きろ!」
「んーうっさいわー」
「わかったから出るぞ」
ようやく起きて出させようとするが最後に1杯だけみんなで乾杯しようと言い出し、その場にいた俺、竜生、朔斗、歩と残っているグラスを集めて乾杯して最後の1杯を飲んだ。すると気が済んだのかようやく一人で歩き店を出ることができた。そう、とりあえず店を出て出た瞬間に健人が吐いた。
「ちょ、あゆむ!けんと見といて!」「すみませんこんな状態ですが、いつもですけど、、一旦これで解散です!咲さん、かなこさん、ありがとうございました!健人はまだ最後24日あるけどありがとう!えー解散です!お疲れ様でした!」
咲さんとかなこさんは最後のバイトが終わっているのでありがとうと言って帰っていった。
朔斗はこういう時何も言わず帰るタイプなので知らない間にいなくなっていた。
残ったのは潰れている健人とギリギリの竜生、数ヶ月経って成長し酒に強くなった歩と二日酔い確定で明日バイトの俺。
「あゆむとたかとはあした(今日)バイト入ってる?」
「俺は仕込みっていうかお前の代行日だよ」「僕は入ってないです」
「あれそうだっけ、まあとりあえず2人帰ってていいよ」
「まあ24日も入ってるから俺は帰るわ、ねっむい」
「僕は今日なにもないので一応います」
「おっけーありがと、じゃあたかとあしたな」「お疲れ様です」
「あいよー」
俺は眠気も酔いもMAXな中帰った。
次の日俺はというと二日酔いのまま仕込みをやって開店しても二日酔い状態で竜生はというと仕込み中ずっと吐いていたという。




