表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/86

フラグ28 3本のジュース

よし!いくか!

今日はリーグ戦初戦、相手は俺の代になってから初めて試合をやった相手で俺のタイムリーエラーのせいで負けてしまった相手。今回は梅澤が試合に出場できるのでスタメンではないと思うが、思うところはある。俺はあの時とは違う。何があっても前を向ける、そう思える。気合いを入れるがこういう時は無理に張り切らずいつも通りに、気持ちを落ち着かせながら自転車を漕ぎグラウンドに到着した。

「はよーっすー」

「ういっすー」「おはようございます」

俺の代は1つ上の代よりは真面目系が多く、こういう時はそこそこピリピリはしている。陽も伊勢もレギュラーなので少し緊張気味な面持ちだ。

アップを済ませ一旦集合しスタメンが発表された。

やはり俺はスタメンではなく、陽は3番センター、伊勢は5番ライトであった。

2人とも集中していたので声をかけることなく試合前のノックも終わり円陣を組む。今日の掛け声担当はやはりキャプテン梅澤。

「おはようございます!今日はリーグ戦初戦です!相手は去年の初陣で負けた相手です。ですが、リーグ戦初戦勝って良いスタート切りましょう!さぁいこう!」

「しゃー!!」

整列し試合が始まる。うちは後攻なので守備からだ。

ちなみに監督は今年も学生監督で同じ学年から河野圭吾が就任している。彼は硬式野球部が有名な高校出身で当時レギュラーではなかったが野球知能が高いため監督となった。技術も高く、去年のうちの部では1つ上の代でレギュラーだった。

初回、ピッチャーの立ち上がりが悪く、フォアボールとヒットでノーアウト1.2塁。またもフォアボールを出し、ノーアウト満塁のピンチ。次の打者を内野フライに打ち取り、尚も1アウト満塁のピンチ、そして次の打者のライトフライの間に1点を先制される。しかし、次の打者は打ち取り初回のピンチを切り抜ける。

1回裏、攻撃は3者凡退に終わった。

6回までうちの先発ピッチャーがフォアボールを出しながらピンチの場面もあったが内外野守備陣の好プレーもありなんとか0点に抑えている。

6回裏、打順は8番からフォアボールで塁に出ると9番がバントを成功させ1アウト2塁のチャンスとなった。1番がセカンドゴロを打ち、その間にランナーが3塁に進み2アウト3塁。攻撃もここまでかと思ったが2番の梅澤が2ストライク2ボールと追い込まれていたがヒットを放ち、同点となった。

「しゃー!」「ナイス梅ちゃん!」「さすがキャップ!」

梅澤の時だけあまりヤジがないと思うが人の良さとかキャプテンだからとかいう理由だろう。その後、後続が打ち取られ6回終了で1-1の同点となった。

7.8回まで0点で抑え、抑えられ8回の攻撃は6番打者で終わった。9回表の相手の攻撃に入るタイミングで河野に声をかけられた。

「ササ、たぶん9番のピッチャーのとこで代打行くから準備しとけ」

「おっけーまかせろ」

「7回途中から相手チームも次のピッチャーの準備させてるけどうちヒットあんま出てないしたぶん先発をそのままいかせて9回投げさせるだろうし、疲れもあって甘い球来るからそれいったれ」

「おっけー」

7回途中から両チームとも2番手のピッチャーが継投の準備をしている。うちも延長に入ったら継投させる予定だ。そのへんの読みと打順の巡りでの代打だろう。俺は素振りをして準備をする。ちなみに延長は12回までで決まらなかった場合は引き分けとなる。

9回表、気合いの力投で3者凡退に打ち取ると9回裏、河野の読み通り相手ピッチャーも続投となった。7.8番が打ち取られ河野に呼ばれた。

「ササいけるよな」

「もちろん!」

「よし、いけ!いってこい!一発かましてこい!」

と、言いながら背中を叩かれた。

「しゃー!」

ふぅーっと息を吐きながら打席に入る。

(高校の夏の大会の方が緊張した。大丈夫だ。初球まっすぐきたら振るそれだけだ)

相手投手が一度首を振りサインが決まる。味方ベンチからいけーとかかませーとか打てなかったらしばくぞとか多少のヤジが入っている声援がかすかに聞こえる。

相手ピッチャーがふりかぶり初球、真ん中高めを振り抜いた。レフト方向に打球が飛ぶ、俺は良い感触があったので2塁打だと思い打球を見ながら1塁ベースを回った。回ったところで打球を見失い、どこだと思いレフト方向を見てもボールが見当たらない。するとようやく周りの声に気づき、入った!と味方ベンチの方から聞こえた。

(入った?入った、、入った!?)

ホームランだ。逆転サヨナラホームランだ。

2塁ベース手前で走る速度を落とした。みんなベンチから出てきてホームベース付近に集まり俺を迎える準備をしている。3塁ベースを回ったあたりで早く来いよ!ゆっくり走ってんじゃねえ!とか聞こえる。

(こんな時でもそんなこと言うかね、まったく。でも、、くっそ嬉しいわ!)

ホームインすると頭をぶっ叩かれたり体のありとあらゆる箇所を蹴ったり殴ったりされたが、口ではよくやった!とかさいこー!とかナイス!とか言われながら出迎えられた。

(野球ってやっぱめっちゃ楽しいわ!)

20歳にして改めてこんなことを思うなんて、、、

その後、整列し春リーグ初戦は2-1で勝利した。

ひとまずグラウンド整備と片付けを手分けして行い、各自着替えてからミーティングをした。

「今日はお疲れ様でした。初戦なんとかとれて良かったです。えっと俺からはこれ以上ないので河野からは?」

「えーお疲れ様でした。梅ちゃんが言っていた通り初戦とれて良かったです。えー全体を見るとピッチャーはフォアボールが7個だっけ?多くて、失点以上に内容があまり良くなかったので次の試合までに調整をしっかりしましょう。でも9回投げきってくれて助かりました。それで守備面は良いプレーもあったのでそこで粘れたのかなって思います。攻撃面では最後のホームラン含めてヒットが4つなので各自課題を見つけて取り組みましょう。以上です」

「ということで次も勝ちましょう!お疲れ様でした!」

ミーティングも終わり解散した。

色々祝ってもらったし長くいてもダサいから帰るかと思い自転車の鍵を開けていると自転車のかごに何かを入れられた。

ガシャンガシャン。

なんだと思い見上げると、陽、伊勢、さゆりがジュースを放り込んでいた。

「おつかれー!ナイスホームラン!」

「え、ありがと」

「今日のヒーローが一人で帰ろうとすんなよ、出口まで一緒に帰ろーぜ」

「お、おう」

もらったジュースをバッグに入れ出口へ向かった。

ちなみに陽、伊勢は陽の車で来ており、さゆりは路線バスで来ている。部活の時はたいてい陽と伊勢と駐車場で別れて帰るのだが、今日は出口まで一緒に来てくれた。

「それじゃおつかれー、ジュースもありがとなー」

「ういーおつかれー」

こうして陽と伊勢と別れ、さゆりが乗るバスのバス停は俺の帰り道だったので少し歩きバス停に着いた。

「じゃ、おつかれ、ジュースもありがとな」

「はいはーい!おつかれさま!じゃーね!」

手を振りながら自転車に乗り、いつもよりテンション高めですっとばして帰った。

家に着くとすぐにジュースをありがたく3本飲んだ。

本当にいい人たちに恵まれたな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ