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ロードオブフェアリーズ  作者: 耳無猫(without pockets)
第2章:正義の戦士リリィ
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『戦闘狂』スミス

「いやあああああああああ!!!変態、変態!!!なんで裸になるんですの!!!せめて下半身ぐらい隠しなさい!!」


「うるさい女だな。性器も排泄口もこの下半身にはついておらん。我ら分身には必要ないものだからな。問題なかろう?」


「ダメです。大問題です。ついてなくてもちゃんと隠すのが紳士です!!!隠さないのは変態だけです!!」


「…仕方あるまい」


スミスは異空間からレスラーが履くような黒のパンツを自分の下半身に出現させた。


「申し訳ないがぼっちゃまのを拝借した。これでよかろう?」


「自らの本体の物を勝手に使うなど、貴方の忠誠心を疑わざろう得ませんが、まあいいでしょう」


「さて、始めさせてもらうか」


スミスは、闘争再開のゴングを鳴らす。リリィは身がま——


「どこを見ている?」


リリィはいつの間に蹴りを喰らい、飛ばされていた。


「いやああああああああああああ」


蹴られたことすら知覚が遅れていたが、やっと悲鳴が上げることができた。だが、


「叫んでいる暇など与えん」


知らぬ間にまた攻撃を喰らい、リリィは墜落、ビルの屋上に叩きつけられた。


自分がダメージを受けたことにリリィはやっと気がつく。


「ううううううううぐぐ」


リリィは痛みに耐え、転移させて無理やり自分を立たせた。


スミスは空中からビルの屋上におり降り、リリィにゆっくり近づく。


「どうせ貴様は消滅する。せめてこの俺の能力を教えてやるのが武人ってやつだろうな。俺は『量子転移』ができるのだ。『跳躍』のように出現位置は予測できん。転移に全く時間がかからん」


「自ら能力を教えるなぞ、ロックされたいのですか?」


「『量子転移』はまずロックできん技だ。量子揺らぎとは絶対零度でも止められない揺らぎ。揺らいでいてはロックなどできまい?」


リリィが聞いている会話をインカムを通して聞いたヒナコは『量子転移』という単語に驚愕した。彼女は、実は物理、流体力学分野で若干14歳ながら博士号を持っていた。量子論などは専門外ではあったが当然勉強している。一種の量子テレポーテーションという現象を応用したものであることも理解できた。しかしそう言った量子現象は原子とか大きくても分子レベルの現象で、人間サイズをどうにかできるものではない。


「あいつ、やべえ…」


それはきっと、物理法則を捻じ曲げて実現しているということを意味していた。あの筋肉ムキムキの変態男はリリィと同様分身であるらしい。しかも『純白の女王』などという女の分身の分身、ならば、その『女王』は一体どんな力を持つというのか。物理法則を変更するなど、もはや神とか女神といういうとんでもない存在と対峙しているのではないか、そう思うとヒナコは身震いしたくなる。


「一体どうすんだよ、リリィ。あんなの勝てっこないじゃんか」


「心配には及びません。必ず、必ずあの変態、倒してみせます」


半分独り言に近い言葉をリリィは拾い、ヒナコのインカムを通じて返す。


「さて、どうする、リリィとやら。もう手も足も出ないか?」


「まだまだ。まだまだです!好きなだけ油断をしていてくださいませ」


「油断は強者の特権だ」


「では、大技を披露しますがよろしいですか?」


スミスは圧倒的強者。『戦闘狂』ならばきっと誘いに乗ってくるはずだ。


「ふ。いいだろう。だが次も通用しないなら、もうそろそろ貴様には消滅してもらうがな」


「地上には被害を出したくないので空中に行きますよ。ついてきなさい」


「ニンゲン供の被害などなぜ気にするのかまるでわからんが、いいだろう。その誘いに乗ってやる」


二人はビルから上空へ飛び立つ。


「何をするか知らんがさっさと仕掛けてくるがいい。くだらん技ならすぐさま貴様を消滅させるぞ」


「言ってなさい。そのふざけた余裕もここまでです!」


リリィはグングニルを放り投げ、グングニルは宙に消えた。


「出なさい、氷結牢獄」


各辺10mほどの氷でできた立方体がスミスを閉じ込めた。氷は空気に含まれる水蒸気を集めて、生成したようだ。


「なんの真似だ?異次元方向に移動できる我らを3次元物体で閉じ込めることなどできんだろうに」


異次元に跳躍できる者を壁で囲っても、足元に置いた縄の如く簡単に飛び越えられてしまう。が、


「氷の壁をよくご覧なさい。それは異次元の氷壁です。貴方は、多次元で閉じ込められていますよ!転移して逃げることは不可能!」


リリィは、異次元方向に『高く』伸びる壁を作ったのだ。異次元跳躍で飛べる『高さ』を超える壁を乗り越えることはできない。


「…ならば破壊するまで」


スミスは光弾を全身から発射し氷壁が破壊されるが、破壊される側から氷壁が再生していく。


「む!?」


「氷壁を破壊しようとしても無駄ですよ。空気中に水分子がある限り無限に再生されます」


リリィは両手で何かを潰すような仕草をした。


「さあ、その氷結牢獄ごと潰れて異空間を永遠に彷徨いなさい!」


氷の立方体、『氷結地獄』が一気に小さくなっていく。


「ぐ、グアアああああ!」


低い悲鳴とともに、縮む『氷結地獄』は空に消えていった。


ヒナコのインカムに通信が入る。


「ヒナコ!急いで祥子さんを連れて逃げて!」


「え、わ、わかった!」


ヒナコは隠れていたビルから異空間跳躍し、祥子が縛られていた十字架のあるビルに飛ぶ。すると、リリィもそこに跳躍してきた。そして、倒れた。


「お、おい、大丈夫なのかよ!」


「ちょっと疲れた、だけです」

「疲れたってレベルじゃないだろ!今の技、負担が大きすぎたんじゃないのか!」


「私のことはいいから!早く、祥子さんを!あの男なら氷結牢獄から脱出してくる、かもしれません、早く!!!」


ビルの屋上で倒れたままで、顔だけ上げてヒナコを急かす。確かにあの変態野郎はヤバい奴だ。祥子を連れてさっさと離脱すべきだ。ヒナコは十字架に駆け寄ったが、


突然何かの衝撃を受けて吹っ飛ばされ、悲鳴をあげる。


「いやああああああああああ」


十字架のそばには、


スミスが立っていた。


「俺から逃げられるとでも?」


「な!!こんなに早く氷結牢獄から!?」


驚くリリィに、


「俺は『量子転移』ができると言わなかったか?量子相関さえ結ばれていれば、多次元の壁があろうが、何億光年離れていようが、一瞬で移動できる。まあ、貴様の技には驚かされたがな。『女王』にも匹敵する能力だ。が、主人が『幼虫』ではエネルギー切れにもなろう」


「く! 勝負は貴方の勝ちです。だから、もう、祥子さんとヒナコを解放してください。貴方には、どうでもいい存在でしょう?」


倒れ伏すリリィにスミスは告げる。


「そうはいかん。勝者には報酬が必要だ。負けた相手も、その仲間も、なぶり殺しにすることこそが俺が受け取るべき報酬だ。そう思うだろう?ククククあははははははは」


常に無表情だったスミスの表情が歪む。邪悪に醜悪に卑劣に嗤う。闘うために生まれた男は、生まれて初めて喜びの感情を得た。敗者を蹂躙する喜びを。


「く、この男は!」


リリィたちは絶体絶命であった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リリィたちの闘っている間、祥子は意識を失っていた。


だが、激しい闘いが繰り広げられていることを脳の一部が知覚していた。


ふと、祥子の目の前に何かの映像らしきものが突然映し出された。


<これ、何?>


その映像には、一人の少年と少女が二人いた。


<あれは、もしかしてお兄ちゃん!?それも小さい頃の?>


そしてもう一人の少女は、


<あれって私?>


祥子の幼い頃だ。だが、


<あの子、一体誰?>


どうやらこの映像は、賢や祥子の幼い頃のもののようだ。背景も、遠い記憶に重なる。だが、記憶にない要素があった。


幼い祥子と同じくらいの歳、背格好の、知らない少女。全く記憶にない。あの少女は一体誰なの?


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