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ロードオブフェアリーズ  作者: 耳無猫(without pockets)
第2章:正義の戦士リリィ
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祭りの続き、とその後

「我が君いいい。申し訳ありませええええええええん。どうな罰でもお与えくださいいいいい」


平謝りのリリィ。『リリィ・アダルト』から、自称『可愛い方の』ボブカットの姿に戻っていたリリィは、膝をつくどころか土下座で賢に謝っていた。


「大人のわたくしになると、賢様と添い遂げたい衝動を抑えられなくなるのです。勝負が白熱してそのことを忘れてしまい、つい変身してしまいました」


「びっくりしたよ。でも怪我とかなかったし、そんなに謝らなくてもいいよ、リリィ」


「本当に、申しわけございませーーーん、うわーーん」


「泣いたって罪は無くならないわよ、リリィ。お兄ちゃんにまたがるなんて許さないんだから!!…私以外」


祥子はまだ怒っていたが、りかが勝負を続ける旨を宣言した。


「おいおい、しょーこ、本音が漏れてるぞ。南条先生と相談した結果、三番勝負もすることになったから、二人とも準備してきてくれ」


「りか、ほんとに続けるの?大体、大半の観客は帰っちゃったじゃない?」


リリィが賢に押し倒してまたがるという前代未聞の珍事が起きたため会場は大混乱、結局、研究所の職員と少数の保安要員以外の観客のほとんどは、会場内で起きたことを口外をしない旨の宣誓書を書かされ帰されてしまった。それでも続けるのは、せっかくイベントを用意したスタッフへの配慮とイベントそのものがリリィの調査を兼ねているためであった。


「いいんじゃね?あたしはまだショウコとリリィの勝負が見たいしね」


「で、なんでアメリカ軍のあんたがここに残ってんのよ?自衛官がみんな帰ったってのに」


「こっちは司令官の許可が降りてんだ。勝手に帰したらそれこそ国際問題になんじゃね」


という理由をつけて、部外者であるはずのヒナコはここに居座っているのであった。


「さあ、準備しに行った行った!観客は少なくなったけどまだ二人には頑張ってもらうよ!」


三番勝負、それは、『ドキドキ水着尻相撲勝負』だった。


「一体なぜこの季節に水着で尻相撲なんて思いついたのよ!?りかの頭の中ってどうなってんの?」


「いやね、面白かったら僕の店でも採用しようかなって」


りかはメイド喫茶の実質的なオーナーである。未成年だし自衛官なので名目上は伯父が経営していることになっているが、実際にはりかが全て取り仕切っていた。


「いいねえ、あの子たちが尻相撲するとこ見たいぜ!じゅるっ」


14歳の少女であるヒナコは、りかのメイド喫茶の常連で重度の変態オタクであった。


「何そのキモい『じゅるっ』は?メスガキのくせにキモオタってどういうキャラなのアンタは?」


「うちの常連客に絡まないでくれる?それも店で1、2を争う太客なんだからさ。それに時間ないんだからさっさと着替えて来たまえよ、しょーこ」


「わかった、わかった、もう」


りかに催促され、祥子とリリィの2人が水着に着替えてきた。 

祥子は、セパレート、ただし上下にフリフリの可愛いデコレーションタイプ、ビキニではないがヘソだしタイプ、リリィはワンピース、こちらも可愛いミニスカートつきだ。


「どうどう、お兄ちゃん、可愛いでしょ?」


「祥子さんなんか見てないでわたくしを見てくださいませ。可愛いリリィをご堪能ください」


「あんだと?お兄ちゃんは私のものよ!アンタなんかお呼びじゃないわ!」


「何度も言ってるでしょ?分身と本体の間の絆に義妹ごときに入る隙などないと」


「いやあ、どっちも可愛いと思うよ。ええと…」


「お兄ちゃん!!そろそろ自分の好みをはっきりして!女の子は選ばれるのをいつだって待っているんだから!」

「ガサツな祥子さんより、わたくしのほうを選びますよね、我が君」


困った顔をする賢をジト目に睨みながら、りかは言い放った。


「朴念仁王にそんなこと言ったって無駄さ。二人ともさっさと勝負用お立ち台に立ってくれ。その闘志を尻相撲に向けてよ」


朴念仁王に詰め寄る乙女二人は致し方なく、狭い尻相撲用お立ち台に尻を向けて立つ。お立ち台の周りは、落ちても怪我をしないようにふわふわのマットが敷き詰めてあった。


「アンタなんかに負けないんだから!お兄ちゃんは渡さない!」

「こちらも負けませんわ。賢様の正妻はこのわたくしに決まってます」


「さあ、始め!!」


りかの号令の元に尻での押し合いが始まる。両者譲らないが、祥子の一撃がクリーンヒットした


「きゃああああ!!」


保護マットに落ちるリリィ。祥子の方が、尻が大きかったようだ。


「別に私太ってないからね!アンタの尻が小さすぎんのよ!!」


と言いつつ、祥子は何かリリィの尻に違和感を感じた。女の子にしては硬すぎる。いや、女性だからといって尻が柔らかいとは限らないが、それにしても細身とはいえリリィはそこまで痩せてないし、もっとプリッとしてていいはずだ。


祥子はお立ち台から降りると保護用マットから抜け出して悔しそうにするリリィにつかつかと近づいた。


「??なんですの??負けたわたくしを嘲笑するおつもりですか?」


訝しるリリィに、祥子は、あろうことか、その股間に手を伸ばし、


「いやああああああ!!!!何するんですのおおおおおお!!」


ぐい、っと握った。


「ややっややっぱり!!!あ、あんtあ、ああaんたおと、おと、男ね!!!ここんな立派なもの持ってるくせにおおお兄ちゃんにい!!」


「この『可愛い』姿では、男性体ですの!!!」


「んじゃ、あの大人の姿わああ?」


「変身すると、女性体になるんですの!!!女性体になると、子宮が疼いてさっきみたいに暴走してしまうので、普段は男性体なんですの!!人の股間を握るなんてこの変態女!!」


「何それ!?変態はアンタよ!男でも女でも!!出鱈目すぎるわ」


つのつき合わせて歪み合う二人。


「ははは。祥子はリリィが普段は男だって知らなかったのか…。いや、俺が把握できるのは当然なのかな?」


「笑ってないで、二人を止めてよ。朴念仁王陛下!!」


りかに言われて、やれやれと二人の元へ向かう賢なのであった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


祭りの後。片付けの最中に話し込むりかとリリィ。


「いやあ、はちゃめちゃで面白かったよ。リリィ。しっかし、しょーこが反則2、リリィが反則1

でリリィが勝ちって、全然女子力対決になってないな」


リリィの股間を鷲掴みした行動を問題行動として、三番勝負は祥子の反則負けという判定をりかは下したのであった。


「良いのではありませんか?祥子さんも元気になられたようですし。我が君もお楽しみのようでしたし」


「まあ、そうだね。えっと、ところで、君はこれからどうするんだい?」


「わたくしは賢様の分身。当然ながらこれからもいつ何時でも我が君のおそばにおりますが」


「そうは言ってもねえ。人間には社会的な活動も必要だ。いや、君は分身だけどさ。どうだい、僕の店でメイドを募集しててさ、リリィにはピッタリだと思うんだよね」


「でも今のわたくしは男性体ですが」


「いや、男の娘って希少で需要があるんだよ。リリィみたいな超絶美少女ルックスならさらに。きひひ」


「考えておきましょう。ところで、祥子さんは?」


背後から答えが返ってきた。


「祥子なら先に部屋に戻って行ったぞ」


「我が君?」


袴田賢が会話に割り込んできたのだった。


「賢様。会場の片付けなど下々に任せて、居室にお戻りになられませ」


「そうはいかないよ。だいたい俺は、下士官ですらないんだよ」


「我が君を雑兵扱いとは、ニンゲンどもの横暴は目に余ります」


「まあまあ、賢さんの扱いは自衛隊の上層部でも困ってるんだ。最重要人物の賢さんに階級があるとややこしいので、一旦陸上自衛隊の陸士はやめてもらって研究所所属にしようって話があるみたいだけど。僕も王様に上官扱いされたくないしね。きひひ」


「いやいや、南2尉にはこれからも自衛隊員としてご指導をいただきたい」


「やめてよ、階級で呼ぶの。賢さんに上官扱いされると調子狂うよ」


「そうです、この時空にあまねく君臨する我が君はもっと毅然とした態度でいらしていただかないと」


「王様扱いの方がよっぽど調子狂うんだけどね」


賢は苦笑いしつつ、ぼそっとぼやいた賢だった。


…が、突然表情が変わった。


「賢さん?」


「…悲鳴?そう悲鳴だ!!祥子が誰かに襲われている!!」


「我が君!!」


「祥子の居室だ!!リリィ、跳躍だ!」


「な、なんだ!?祥子の部屋に行くのか?とにかく僕も一緒に連れてってくれ!」


「飛びます!りかさん、目を瞑って、歯を食いしばって!!」


リリィは、りかと賢の手を握り、転移能力を起動した。


一瞬目の前が真っ暗になり、すぐに違う風景が目に入った。それは、ひどく荒れた祥子の居室だった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ウプぷぷぷ」


初めて転移を経験したりかは吐きそうになっていたが、


「吐くのは我慢してください、りかさん。今はそれどころじゃありません!」


「わ、わかってるよ。しょーこは、一体?」


「あれを見るんだ」


賢が指差した先に、一枚の紙が壁にナイフで固定さてれいた。


『小娘は預かった。返してほしくばこの前闘ったビルに来い。何人連れて来てもかまわん。戦力になるならな』


「な!?しょーこが誘拐された?リリィが闘ったっていう謎の男か!?」


「あの男以外考えられません。人質を取るなんて舐めた真似を!」


りかは、通信端末ですぐさま通話をした。相手は袴田賢の姉にしてりかの上司、袴田陽子第1妖精隊司令だった。


祥子が誘拐されたことを伝え、命令を受けたようだ。


「僕はこれから隊舎に戻って第1中隊の隊長代理として待機する!陽子司令が駆けつけるらしいから二人はここで待っててくれ!」


りかは祥子の部屋から飛び出して走って行った。


「リリィ!!俺たちは祥子を助けに向かうぞ!!」


「お待ちください!我が君!!わたくしが必ずや祥子さんを助けて参ります。賢様にはここにて戦況をご覧いただきたく…」


「そうは行くか!!」


「何とぞ、何とぞ、御自ら御出陣されるのはお考え直しを。過去にも申し上げましたが、我が君は未だ幼虫に在らせられます。今は羽化を控えた大事な時期。この時期にダメージを受ければ回復不能になり得ます。何とぞ!」


「リリィ。俺は何だ?」


「は?」


「俺は何だと聞いている。答えろ!」


リリィは跪き、頭を下げて答える。


「賢様こそ、この時空に生きとし生ける者、全てを統べる太陽の王にございます」


「ならばついて来い、リリィ!」


跪くリリィの手を引っ張って、賢は部屋を出ようとした。


「我が君、申し訳ありません」


「ん?」


賢は急に眩暈を感じた。もしやと思い振り返ると本当に申し訳なさそうな表情をしたリリィの顔が目に入った。


「リリィ、いったい…。何、を」


「本当に、本当に申し訳ありません。しかし、わたくしは…王を守護するために生まれて参りました。たとえ、その御意志に背いたとしても、如何なるお叱りを受けたとしても、御身を危険に晒すことなぞわたくしには到底できません。祥子さんはこのリリィが必ずや助け出してご覧に入れます。罰はその後にいくらでも」


「やめ、やめるん、だ、リ、リィ。お、れを、おれ、を、止めな、いでく、れ。俺、は、みんな、おま、えも、まもり、まも…」


リリィは幼虫である賢を守護するために与えられた権能を発現させた。この権能は危険な状態にある主の代謝を一時的に停止させ、主の能力を代行する緊急用のものだった。


賢は意識を失って停止した。リリィはその体を支え、ぎゅっと抱きしめた。愛おしそうに、涙を浮かべて。


「ごめんね、ごめんなさい」


リリィは賢を抱きしめながら語りかける。


「貴方はいつだって、底なしに優しいのだから。本当にいつも、自身より他人の心配ばかりして。だからわたし、今度も貴方を守るの。もう思い出せるはずがないのに、世界の道理を破って、わたしをここに…。本当に、貴方って人は」


「だから、わたし、貴方の大事な人を助け出して見せる。待っててね、賢ちゃん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リリィは賢を両手に抱き、長い研究所の廊下を歩いて居室へと向かっていた。跳躍で一瞬でたどり着くこともできたが、機能を停止した賢に負担を与えないために、歩いて居室に向かっていたのだ。


そこに前方から袴田賢の姉、袴田陽子がリリィ達を見るなり走ってきた。


「リリィ、これはいったいどういうこと!?」


「我が君には、お休みいただきました」


「…そう」


賢が祥子を助けに行くと言わないわけがない。それを眠らせたというなら、助けに行こうとする賢を無理やり止めたということは容易に想像ができた。


「あんた、一人で行くのね」


「はい。妖精隊全隊員が出動しても手も足も出ませんし」


妖精隊員どころか、自衛隊全部隊を投入したところで何の意味もないのだ。


「お姉様。賢様をお願いします」


「ちょ、ちょっと!!」


リリィは両手に抱く賢をそのまま渡たした。


「お姉様は妖精だったのでしょ?少しでも『力』を起動できれば重さを感じることはないはず」


「わ、分かってるわよ、そんなこと。なんでお姉様なんてあんたに呼ばれなければならないのよ、まったく」


「では、これより妹君を奪還して参ります。敵は私との戦闘をお望みのようですので、祥子さんには危害を加えてないはず」


「あんたのいうとおり、敵はバトルマニアなの?」


「そうですね。祥子さんを攫ったのも、わたくしを挑発して本気を出させるためなんでしょう。そういう敵です」


「祥子をお願い」


「行って参ります」


と、歩き出すリリィの後ろから再度話しかける。


「ちょっと待ちなさい」


「まだ何か?」


「私はあんたを知らない。賢もあんたを知らなかった。でも、賢にとって、あんたは、心の奥底にある、とても大事な存在だったってことはわかる。知らないけど、感じる。遠い、遠い記憶の向こうにね。必ず帰ってきなさい、リリィ。賢はあんたを失ってはいけない」


「ありがとうございます、お姉様。必ず、帰ってきます。そして賢ちゃんに言うの。やっぱり大好きだって」


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