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怪盗Rと怪盗A  作者: 瑠奈
TARGET8 〜仲間の裏切り〜
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80/250

暗示

 昼休み。翔太は屋上に向かっていた。弁当が入った保冷バッグを片手に、屋上の扉を開ける。


 屋上には先客がいた。フェンスに寄りかかって空を眺めているのは――伊月だ。


「……どういうつもりだ? ベクルックス」


 顔をしかめ、わざとコードネームで呼ぶ。伊月はゆっくりと振り返った。


「死にに来たのか?」


「ここでは撃たないだろ。お前らは表社会に知られちゃまずいからな」


 伊月はフッと笑みを浮かべ、羽織っていた学ランの内側から拳銃を取り出して翔太に消音器《サイレンサー》をつけた銃口を向けた。


「――っ!!」


 翔太が一歩後退る。


「撃ちはしねぇよ。学校で騒ぎを起こす気もない。貴様の言う通り、表社会に顔を知られるのは都合が悪い。けどな、だから何もしてこないとは思わないことだな」


「……お前が、わざわざ学校に潜り込んでいるのはなぜだ?」


 深呼吸をした翔太は尋ねた。冷や汗が背中を流れていく。


「さあな。……ボスの命令だ。オレが知ったことじゃねぇ」


 伊月は拳銃をホルスターに戻し、翔太の横をすり抜けて屋上を出ていった。


「ハァ……」


 張り詰めていた空気が一気に緩み、翔太は息を吐きながらフェンスにぶつかるように寄りかかった。


『だから何もしてこないとは思わないことだな』


 伊月の言葉が脳裏に響く。


(あいつら……今度は何をしてくるんだ……)


 前髪をかきあげ、オッドアイを細めた。



「屋敷の中にいた奴らからは何も情報を聞き出せなかったわ。下っ端だったんでしょうね」


 放課後、教室の隅で壁に寄りかかっていた実鈴は隣に立つ相賀に話した。


「多分、アルタイル達のコードネームすら知らされてないんじゃないか? 六等星か五等星あたりの奴らだろうな。――逆に良かったな」


「え?」


 実鈴は相賀が発した意外な言葉に振り返った。


「あいつらは自分達の情報が漏れそうになったらすぐに制裁を下す。もし佐東達が逮捕した黒服達の中に二等星レベルの奴らがいたら、そいつはもうとっくに消されてるだろうからな」


「……」


 実鈴は何も言わず、前を向いた。その時、ある疑問が湧いた。


「なら、どうして貴方達はまだ生きてるの?」


「あー……」


 口を開きかけた相賀は何を思ったか唇をギュッと結んだ。


「……知ったら、お前も狙われることになるぞ」


 実鈴はわかった。今話しているのは木戸相賀ではない。怪盗Aだ。自分のことを『お前』と呼んだ。


「わかってるわ。私も、貴方達に協力したいから」


「え?」


 今度は相賀が目を丸くした。


「いいのかよ? 俺達は怪盗だぞ?」


「貴方達を捕まえるより組織を捕まえるほうが先だと思ったの。だって、貴方達は組織を壊滅させるために動いてるんでしょ? だったら、協力したって文句は言われないはずよ」


 実鈴の言葉は的を射ている。


 しばらく考えた相賀は顔を上げた。


「わかった。なら話そう」


 相賀はゆっくりと話しだした。

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