幼馴染みの相談
放課後。約束通りに瑠奈が相賀の家に行くと、制服姿の相賀が顔を出した。
「え、まだ制服なの?」
そう言う瑠奈は、薄いパーカーにデニムとラフな格好に着替えている。
「着替えるの面倒くさいし」
相賀らしすぎる返答に、瑠奈は呆れてものも言えなかった。
「で、話したいことって何?」
「相談したいことがあるんだ」
「もしかして、学年三位が二位に教えを請うの?」
瑠奈は茶化して言ってみた。学年三位、二位というのはテストの順位だ。二人は小学生の頃から順位を競い合っている。この間行われた実力テストは、瑠奈が二位、相賀が三位だった。
「いや違う。真剣な話だ」
相賀は今まで見たことがないほど真剣な表情をしていた。瑠奈はため息をついた。
「はいはい、わかったわ。それで?」
「とりあえず入ってくれ」
短く言った相賀は背を向けて家に入っていった。瑠奈も相賀を追いかけて家に入る。階段を登って自室に入った相賀は机の横の何もない壁を押した。すると、壁がドアのように開く。
「隠し部屋……?」
瑠奈が思わず呟くと、相賀はニヤリと笑った。
「もちろん、見せたいのはこれじゃない。この奥にある部屋だ」
そう言ってドアを通り、先の階段を降りていく。瑠奈は少し気味悪く思ったが、ここまで来て逃げるわけにもいかないと、深呼吸をして相賀を追いかけていった。
「何? これ……」
階段の突き当りにあった部屋に入った瑠奈は思わず呟いた。
コンクリートが剥き出しになった広い部屋で、正面の壁には星の丘やその周辺の地図が貼られ、ソファや簡易キッチン、パソコンが乗ったデスク、クローゼット等が置いてある。
「地下室なの? ここ」
「半分正解、半分ハズレだな。ここはアジトだ。怪盗Aのな」
相賀はニヤリと笑ってキッチンに向かったが、瑠奈はその場に突っ立っていた。
(怪盗A? 相賀が? Aといえば、ここ最近星の丘を騒がせ始めた泥棒だけど……)
「どうした? 流石の学年二位も理解不能か?」
グラスにコーラを注いでいた相賀が意地悪く笑う。
「なんなの……? どうしたのよ相賀……」
瑠奈が思わず数歩下がる。
すると、相賀はフッと悲しげな顔になった。
「……だよな。こんなこと言ったって、混乱するだけだよな……。やっぱりやめておくべきだったか……。いいんだ、瑠奈。全部忘れてくれ」
それだけ言うと、部屋を出ていく。グラスに入った氷がたてるカランという音が部屋に寂しく響いた。
「えっ、あ、ちょっと待ってよ!」
瑠奈が慌てて追いかける。相賀は自室のベランダに立ち、手すりに寄り掛かって景色を眺めていた。側には天体望遠鏡が置いてある。もう空は茜色に染まりつつあった。
「何? さっきの話」
「忘れろって言ったろ」
相賀は瑠奈の顔を見ようとしない。
「そんなのできない。なんで犯罪者になったの?」
「犯罪者って言い方は好きじゃないな。もう少しマシな言い方ないのか?」
「はい?」
瑠奈が眉をひそめると、相賀はようやく瑠奈を見た。今にも泣きそうな、怒りそうな顔をしている。
「……警察に通報するか?」
「そんなわけない」
瑠奈は即答した。
「だから、聞かせて。どうして怪盗なんてやってるのか」
相賀は目を伏せて再び前を向いた。
「……長くなるぞ」
「聞かせて」
瑠奈がハッキリ言うと、相賀は息をついて重い口を開いた。