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怪盗Rと怪盗A  作者: 瑠奈
TARGET4 〜アンタレス〜
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いじめ

「えっと……。コレクション展をやってるのはムーンタワーだな。二十階の展望台でやってるみたいだな」


 エレベーターの側に貼ってあるチラシを見た相賀はエレベーターのボタンを押した。


「あれ? 相賀に瑠奈さん。どうしたの?」


 突然話し掛けられ驚いて振り返ると、海音、拓真、詩乃、朝井雪美が立っていた。その側には翔太もいる。


「皆!?」


「何でここにいるんだよ!?」


 相賀が驚いて聞くと、海音は笑みを浮かべた。


「このツインタワー、渡部財閥が建てたものなんだよ。だから皆と来たんだ。二人も誘おうと思ったんだけど、二人でどこかに行く話してたみたいだから諦めたんだ」


「い、いや、別に……」


 相賀はほんのり頬を染めた。


 その時、エレベーターが到着して扉が開いた。


「あ、来たよ」


 瑠奈はそそくさとエレベーターに乗り込み、他の面々も続く。


 翔太は羨ましそうに頬が赤い相賀と瑠奈を見つめていた。青い左目の奥には哀しげな光が揺れていた。


 やがてエレベーターは二十階に到着し、扉が開いた。


 ドーナツ状の展望台はガラス張りになっていて、星の丘の全貌が見渡せる。その展望台の一角に、宝石や絵画が飾られていた。


(これか……アメジストは……。でけーな……。夜中は警備員が一時間ごとに巡回するだけだから監視カメラをどうにかすれば簡単だな……)


 その時、詩乃の足がもつれた。バランスを崩し、拓真にぶつかる。


「どないした、詩乃」


「わかんない……急にバランスが……」


 詩乃の呼吸は浅く早くなっていて、顔色も悪い。


「高い所が苦手なんじゃ? 一回窓から離そう」


 海音が言い、拓真は頷いて詩乃を抱きかかえ、近くのベンチに座らせた。


「せやけどよくわかったな、海音」


「僕の妹がそうだからね」


「ほー……」



「えっ、これって……」


 実鈴はパソコンを操作していた。自分の名前で警察のデータベースにアクセスし、キーボードを打っていく。


「そういうことね……」


(これなら、不審な点の辻褄が合う……。じゃあ、もしかして……)


 実鈴はどんどん深い思考に入り込んでいった。



 あるビルの廊下。黒服の男二人がタバコをふかしていた。


「用意できたか?」


「ああ、なんとかな。でもいいのか? ほんとにやって……」


「捕まえればそれでいいんだ。手段は問われてねーよ。んじゃあ手筈通りによろしくな」


 片方の男がタバコを落として踏み潰した。


「どうなっても知らねーぞ。殺される危険だって……」


「どこまで心配性なんだお前は。捕まえればそれでいいんだろ? 殺される義理はねー」


 タバコを踏んだ男はそう言って去っていった。


 残されたもう一人の男は、タバコをくわえながらフッと笑った。


「ゴミめ……。せいぜい残りの人生を楽しんでろ」


 吐き捨てた男はニヤリと不気味な笑みを浮かべた。



 そいつらの顔は、もう覚えていない。どこだったのかも定かではないが、多分教室だろう。


 はっきり覚えているのは、そいつらの冷たい眼差しと罵詈雑言。


「お前、高山って言ったっけ?」


 緊張からか静かめな教室で、不意に話しかけられる。


 顔をあげると、小一にしては体格がいい男子三人。日焼けしていて、見るからに元気ハツラツとした男子だった。


「そうだけど……」


 戸惑う。幼稚園のときでも、そんなふうに話しかけられた経験はなかった。まあ、この小学校には幼稚園で一緒だった子はいないのだから、当然だが。


「その目、何?」


 男子が指したのは、その左目。少し長めの前髪がかかっているが、今よりは隠していなかった。


「これ? えっと……お父さんが青い目をしてるんだ。僕の目が赤になった理由はよくわからないけど――」


 ガン。鈍い音と共に椅子と翔太が吹っ飛んだ。何が起こったのか理解するまで数秒かかった。


「……気持ち悪い」


 何を言われたのかわからない。蹴られた右脛あたりが痛い。クラスメートから向けられる冷たい眼差しも痛い。



「っ!!」


 跳ね起きる。嫌な汗をジットリかいていて、前髪も濡れていた。


「また、この夢か……」


 家族が殺される夢をよく見る翔太だが、その次によく見るのがこのいじめられる夢だ。


「……くだらない」


 汗で濡れた前髪をかきあげる。


「もう朝か」


 少し開いたカーテンから朝日が射し込んでいた。




「舞台は中世ヨーロッパ。家族から虐げられて王宮から追い出された王子が旅をしながら大切なものを見つけていく……。うん、いいんじゃない? 中世ヨーロッパって、結構舞台になること多いから人気がありそうだし」


 一週間後。明歩が書いてきた脚本を読んだ翼は称賛した。


「ううん、部活もあってまだ荒削りなんだ。これから直していくけど、とりあえずキャラはそれで固定のつもり」


 明歩は吹奏楽部で打楽器パーカッションをしている。文化祭で発表するため、最近は延長がかかっているらしい。


「えっと……あれ、この劇、登場キャラが十人くらいしかいないよ?」


 横から台本を覗き込んでいた香澄が言った。


「音響とか照明とかに回さなきゃいけないでしょ?」


「それは先生達がやってくれるぞ」


 いつものように慧悟とじゃれていた竜一が口を挟む。


「あ、そうなの? 実はさ、一応キャラは十六人分あるんだよね。削って十人くらいにしたけど……。じゃあ直しとくね」


「うん、よろしく。今日はキャラを決めようか」


 翼が言い、皆が頷いた。

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