お前には
「……お前、パーティーの日来るのか?」
放課後。バッグに教科書を詰めていた翔太の元に相賀がやってきた。瑠奈達も自分の机から二人を見守っている。
「……さあ、どうかな。僕は友達もいなかったし、クリスマスの良い思い出なんかないんだよね。クリスマスプレゼントも買ったことないし。だからあまり行こうとは思えないけど……君達となら、いいかもね」
それは、本心だった。星の丘中学校に転校してきて、行事が楽しくなかったことはない。
だが、正直不安もあった。
自分が、行って良いのだろうか。いても良いのだろうか。
「……翔太」
不意に、黙っていた相賀が口を開いた。
「お前は楽しむ資格、あるんだからな。……お前には」
「……!」
相賀はそれだけ言って拓真達の元に戻っていった。
(……《《お前には》》?)
翔太は相賀の最後の言葉が引っかかった。まるで、自分には資格がないような口ぶり。しかも、翔太がギリギリ聞き取れたくらいの、独り言のような小さな声だった。
最後に付け足された言葉は、どういう意味なのか。
(……どうすれば良いのかな)
翔太は首に下げているロケットを制服の上から握りしめ、窓の外を見上げた。この間の嵐が嘘のようにきれいな青空が広がっている。だが、翔太の心は暗いままだった。
「ハァッ!」
瑠奈は空手道場にいた。今日のメニューは組手の強化だ。帯の色ごとに分かれ、どんどん試合をしていく。
メンホーをつけた瑠奈は相手と向き合い、礼をした。同い年くらいの、髪をポニーテールにした女子だ。
「始め!」
師範の合図で構えを取る。最初に仕掛けてきたのは相手だった。
一気に瑠奈に飛びかかり、左の正拳突きを繰り出す。それを避けられると、さらに右足で蹴りを放った。
「……っ!」
挟み撃ちにされた瑠奈は蹴りを何とかガードし、中段突きを打ち込む。
「やああああーっ!」
軽く身を引いた相手は瑠奈の腹に中段蹴りを放ち――当たる寸前で止めた。そしてスッと足を引いて構え直す。
「青勝利!」
師範が宣言する。
「嘘……石橋さんが……?」
赤いメンホーを取ってため息をつく瑠奈の耳に、他の生徒達の声が聞こえてくる。
「石橋、悩みごとか?」
髪を結び直していた瑠奈に、師範が話しかけてきた。
「……ええ、まあ」
「迷いは拳に現れる。今日は調子が悪かったな」
「……はい」
瑠奈は曖昧な笑みを浮かべて頷いた。
「瑠奈ちゃん」
と、師範と入れ替わりで先程の相手がやってきた。
「元気になったら、また試合しよ!」
そう言って笑い、去っていく。
「……あの子、誰だろ」
相手は瑠奈のことを知っているようだが、瑠奈は見覚えがなかった。声も、聞いたことがあるようなないような……
「…………まあ、いいか」
悩みがあるのは確かだ。もちろん、翔太のことだ。また、初めて会ったときのように自暴自棄にならなければいいが……
(……心配だな)
瑠奈はタオルで額を拭いながらため息をついた。




