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9 「モブの早朝ルーティン」

出来るだけしんみりしないような内容を心掛けています。

心掛けばかりですね。

楽しいと思える話作りを頑張ります。

 ポイント振り分けも終わり、部屋の惨状に私はにっこりしながら今日はもう休むことにした。

 入学式から色々ありすぎて疲れたというのもあるんだけど、この世界に転生したという自覚を持ってから現在に至るまで。本当に色んなことがありすぎて私の心が保たなかったこともあるかもしれない。

 でも……、やっぱり先生はカッコよかった。

 生で見てさらに惚れ直したというか。一見小汚くてモテなさそうに見えるのに、よく見れば顔立ちはとても整っているし、身長も高くて低音イケメンボイスで、戦闘能力も指揮能力も騎士団長を務めているだけあってとても高い。何よりぶっきらぼうで厳しく見える反面、厳しさの中にある優しさというの?

 それを知ってるからこそ先生は私にとって高嶺の花なのよ。これ男性相手にも使えたっけ?

 とにかくこれから授業のある日は毎日会えると思うと、私の心臓……保つかな……。


 翌朝、私は目覚めてすぐに準備を始めた。

 私は別に朝型な方じゃないけど、この世界で生きることになったのならやることは決まっている。

 学園指定の制服に着替えて身だしなみを整え、食堂兼談話室に行くとまだぽつりぽつりとしか他の生徒は起きてきてない。そりゃそうよね、まだ六時にもなっていないもん。逆によくこんな時間に起きてきたものよね、他の人。

 私は部屋を出る時にモブスキルをオンにしておいた。先生からは学園長の許可を取ってから、改めて先生から許可してもらうことになってるけど。

 今は誰にも気付かれたくないし、面倒な厄介事に巻き込まれるのは面倒だから今だけオンにしておいた、というわけ。だからといって堂々とはしないけど、一応こっそり通り過ぎて無事クラスメイトに気付かれることなく、昨夜決めたであろう食事当番のリストに目を通した。

 日めくりみたいになっていて、そこに担当の生徒を男女二人ずつ名前が書いてある。朝食担当の男子AとB、女子AとBがみんなの朝食を作ることになっていて、それが終わると次のページがめくられる。

 そこには夕食担当の男子CとD、女子CとDの名前が書いてあってその四人が夕食を作る……といった感じみたいだけど。朝食にまず四人必要かって話だし、それなら同じ人数になってる夕食担当の方が大変なのでは? とも思う。

 彼達の料理の腕がどれくらいあるのか想像もつかないけれど、そこはまぁ……優秀な生徒として料理も頑張って欲しいものだ。なんだったらモブスキル発動状態で私がこっそり手伝うのもありかもしれない。


 今朝の食事当番は知らないクラスメイトばかり、つまり私と同じモブだった。

 私は朝食の時間に間に合うように気をつけながら寮から出る。寮の規約で早朝に出歩いてはいけないとは書いてなかった。自主練をする生徒がいる可能性を想定して、あえてそれを禁止しなかったみたい。

 その代わり夜の門限は七時になっている。

 教師達も六時には定時で帰宅しているだろうし、それはまぁいいわ。

 私は寮を出て外の空気を吸う。決して朝型ではない私がなぜこんなに清々しい朝を迎えているのか。

 騎士団の隊長という身分である先生は、教師としての仕事を終えるとそのまま騎士団本部へと向かう。そこで騎士団隊長としての職務に就くんだけど、その業務は事務処理から町の警護と。とても忙しいご身分だ。

 そして騎士団隊長としての仕事を終えた先生は、大体いつも朝帰りをする。

 私は学園の正門を見渡せる位置に移動し、そこにある大木の近くで待機。そして守衛に身分証を見せて帰ってくる先生。今日は同僚のソレイユ・アルマンド先生も一緒か。あの二人すごく仲がいいのよね。性格は正反対なのに。いや、正反対だからこそ?

 二人とも寝不足なのか、足元がおぼつかない様子でとぼとぼと歩いていく。私が隠れている大木の近くを通った時に少しだけ会話が聞こえた。


「最近邪教集団の行動が活発になってるな……。今年はそれらしき人物は入学してないと聞いているが」

「あぁ、しっかり洗ってるはずだからそれはないって話だぜ。内通者がいたらそれこそ怪しい情報だわな」


 いますよ。しっかり入学してます。ゾフィ・ブラッドリーって女子生徒がその邪教集団関係者ですよ先生!

 そうやって先生に情報を流すことが出来たらいいんだけど、そうするとそれを知ってる私が逆に怪しまれちゃうから変な行動を取れないのがもどかしい……。

 先生達がお疲れなのも、邪教集団があちこちで強引に信者を集めたり暴動を起こしたり。そういった事件を頻繁に起こすから騎士団はその都度駆り出される羽目になっている。

 何周目かの先生ルートで、先生自身がヒロインであるサラにそうこぼしていたのを私は覚えていた。だからこうやってここで先生達が帰ってくる時間帯を把握して、出待ちで先生のご尊顔を拝むことが出来たのよ!

 疲れ切った先生のお顔も素敵です!

 猫背気味だった先生の姿勢がさらに崩れているのも愛おしいです!

 それにしても先生のスキル『スキル無効化』は、私のモブスキル発動前に私のことを視界に入れてから無効化が発動されるものなのか。はたまたモブスキル発動中は私の存在を視認することが出来なくて、無効化を発動出来ないのか。

 無効化が発動するのか、しないのか。

 それによって私が今こうして先生のことをじっとり見守っているこの状況を本人に知られて、私が完全に先生をストーカーしている変態生徒として要注意人物になるかどうか、私の命運が左右されるわけなんですが?

 どっちなんですか! 先生!

 息を潜めて隠れていると、二人は私に気付くことなく教員寮へと戻って行った。よし、バレなかった!

 だけどこんな毎日を過ごしていたら私まで寝不足になってしまう……。

 そりゃ先生に比べればマシかもしれないよ? 先生は騎士団本部で多少仮眠を取っているかもしれないけど、ほぼ毎日こうした朝帰りをするほど多忙なんだから。私なんかよりよっぽど疲労が溜まってるわよね。ご自愛ください……!

 さて、朝の目の保養は済んだ! 帰ろ。


 私はそのまま学生寮に戻ると、すでに何人かは起き出していて朝の準備に取り掛かっていた。

 さすがは優等生が集うA組! 寝坊や遅刻なんてしないのね! すごいわ!

 私はモブスキルをオンにしたまま、セルフ方式のキッチンに行って朝食担当の生徒が作ってくれた朝食を運んで、一番端っこに座って朝食を食べ始める。

 トースト、目玉焼き、ウィンナー、レタス、そしてコーヒー。無難だけど、食べられないものが出てこなくて私は安心した。


「目玉焼きにはソースだろうが!」

「ケチャップじゃないのか?」

「あぁ? ケチャップなんて論外じゃ! お子様かよ!」

「美味いぞ、ケチャップ」


 なんてやり取りが聞こえてきた。

 目玉焼きにはソース派のエドガーに、ケチャップ派なルークが会話をしているなんて珍しい。

 そして女子相手にはサラとしか会話が出来ないウィルは、サラと楽しそうに会話をしている。サラは基本のほほんとしているので、時々エドガーの暴走を宥めつつウィルとの会話を素直に楽しんでいる様子だ。

 他の生徒に至っても、昨日今日ですっかり仲の良い相手を見つけたのか。それぞれで会話しながら朝食を楽しんでいる。私はというと……、モブスキルの甲斐あってか誰からも認識されることなく一人でひっそり黙々食事をしている。いいのよ、その方が落ち着くし。

 一人で食事をすること、一人行動、一人でお出掛け……。

 私はそれを寂しいと思ったことがない。むしろ自由で、誰にも気を使うことなくのんびり過ごすことが出来たから、私はそれを変だとは思っていない。

 周りの知り合いなんかは「友達いないの?」とか「寂しくない?」とか聞いてくるけど、友達がいないわけじゃないし、むしろ大人数で行動する方が私は息が苦しくなる。

 コミュ症なんだろうな、根っからの。

 同じ趣味の、同じ趣向を持った相手としか喋れない。楽しいと感じられない。

 だから私は創作活動は好きだったし、そういった繋がりでネットで知り合う友達はたくさんいた。コミケで交友関係は広がったし、合同作品も何作か作ったことがある。

 趣味の合わない友達と無理して出掛けるより、好きなことが同じ人達とコミュニケーションしている方がよっぽど有意義な時間だった。

 だから私はこの世界で堂々とモブとして生きられるのが、なんだか性に合っていて心地よく思えるんだけど。

 やっぱりこれって変なのかな? 私自身は変だと思ってないけど、時々振り返ってしまう。

 それでも一人行動はやめられない。一人の時間が静かで落ち着くから。


 やがてみんなは食事を終えて、後片付けをしてから登校していく。私もみんなと同じ行動を取る。私も遅れてみんなの後をついて行く。空気のように、背景のように、ただみんなの背後にいる存在。

 私はそれで十分だと思っている。

 さぁ、これから先生をしっかり拝める時間が始まるよ!

 私は先生に注意される前に、学生寮を出ると同時にモブスキルをオフにすると……。


「あ、おはよう。モブディラン。昨日はゆっくり寝れたか?」


 早速ルークに話しかけられてしまった。

 こいつ、餌付けされて懐いてきよる!

 だからファンの間でクール・チョロクリフって呼ばれんのよ!

 これがきっかけでルークのルートに入りませんように!

  

一人称って難しいですね。

もっと読み手が楽しくさっくり読めるお話が書けるように頑張ります。

これからもよろしくお願いします。

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