86 「魔物がいっぱい! 無理⭐︎」
私以外のメンバー全員が成績優秀な為、私達は一番最後に出発することになった。
つーかもうこうなれば、全員で入って行っても支障ないのでは?
そんなことを思いつつ私は最近サボりがちになっている『モブスキル』を発動させて、みんなの後ろをついて行く。
鼻の利く魔物相手だったら意味ないかもしれないけど、大抵の魔物に真っ先に襲われない為に。いわば保険。
私だけずるい? 戦闘能力ゴミなんだから、むしろもっとサービスが欲しいくらいよ!
エドガーは運動神経もさることながら、その戦闘能力や戦闘センス、相手が誰であろうと怖気付くことのない度胸。一番性格的に相性は良くないけど、その辺の頼り甲斐だけは私も認めている。何様だって話だけど。
そしてウィルはタンク特化型。防御面に偏ってはいるけど、その強靭な肉体で肉弾戦も可能としている。エドガー程のスピードとか、センスは劣るかもしれないけど。普通の一般兵に比べたらかなり優秀な方だと思っている。
あとその性格の良さ、お人好しな部分、正義感の強さから、ウィルは肉壁に一番向いてる!
ルークは、二人の中間といったところ。剣も使えるけど、彼の戦闘スタイルはあくまで魔術。四属性の魔術を自在に操る器用さ、繊細さ。エドガーと違って火力を調整出来るから、戦っていたら周辺が廃墟と化してました……なんてことにならない。あとやっぱりエドガー同様、遠距離攻撃。そしてウィルのような近接戦にも対応出来るのは心強い。
サラは回復、補助のエキスパートと言っても過言じゃないわね。そりゃ聖女候補と言われる位なんだから。仲間を補助魔法でサポートしつつ、怪我や状態異常になったらそれも治癒してもらえる。そして、まぁここではアンデッド系のモンスターが出ることはないと思うけど。そういった死霊系の魔物に対しては、神聖魔法で相手を撃退することが出来るっていう、神の奇跡を行使した攻撃魔法を使うことも可能ってわけ。
あー、でもこれは聖女として覚醒してからだっけ? あくまで神の奇跡で行使することが前提の魔法だもんね。
とにかく、欠かせない人材であることに変わりはない。
そして急遽、遠足感覚で参加することになったフレイヤ・モルガン学園長こと、別名ナーシャ。本人曰く幼女設定なので、表立った活躍は期待出来ないけど。これも本人曰く、魔術の才能は凄いらしい。まぁハイエルフって位だし、中身は熟達した大人を通り越して長老レベルだから、まぁなんとかしてくれるでしょう。
邪教信者の襲撃に備えた上で、自分が参戦したって言うんだから。そこは信じてもいい、と思う。
最後に私、Eはというと。感知能力が低い相手になら、その存在を察知されないように存在感を極限にまで無くすことが出来る『モブスキル』と、数分間なら全員の目から完全に姿を消すことが出来る『ステルス』というスキル。
あと、何もしなくても勝手に親愛度が上がっていく『寵愛』、……そんだけ。
武器? 申し訳程度に持っているショートソードを、ただ装備してるだけ。
魔法? 一切使えません。初級魔法どころか、習得すら出来そうにありません。
んあああああっ!
これだから! こうなるから嫌なのよおおお!
頭を抱えながら悶える私に、エドガーが「うるせえ」と至極当然の注意をしてくる。それを素直に受ける私。
気を取り直して歩を進めようとしたら、先頭を歩いているウィルがさっきからずっと何かをしている様子だった。
見ると、ウィルを先頭にして扇型の布陣。右側をエドガー、左側をルークが歩いて、左右の男子の間にサラ、ナーシャ、最後尾に私……という感じに歩いてるんだけど。
「えっ! えっ! めっちゃ魔物出てない!?」
さっきからぐしゃぐしゃと聞こえていたのは、四方八方から襲ってくる小型のモンスターだった。
これは弱いタイプのスライム、動物型、虫型、コボルト、などなど。
ぞろぞろとめっちゃ出てくるじゃん!
実戦演習をした森の比じゃないんだけど!?
「さっきっから襲われとるわ! 一人だけぼうっとしてたんか!」
「気をつけて! まだ集団で襲ってくる気配はないけど、結構引っ切り無しに出てくるから!」
「この森ではこの遭遇率は普通なのか? これじゃすぐに体力も魔力も尽きてしまうぞ!」
「もう! このままじゃ埒が明かないじゃない! わ、私も応戦するわ!」
そう言ってマジックワンドを構えたサラが、後方から来ている蛇の小型モンスターに立ち向かおうとした時だ。
ナーシャが小さな火炎球を放って、魔物を一瞬で黒焦げにする。
「サラ君、無闇に出ては行けないよ。君はこのパーティーで最も重要な回復要因なのだ。君に何かあったら、誰が怪我人を治すと言うのだね」
「え、えっと……。ごめんなさい……」
学園長、素の喋り方に戻し過ぎ……。
サラも幼女らしからぬ口調でちょっと引いてんじゃん。
「でも、埒が明かないのは変わらないわよね。どうする? 早速だけど、魔除けの聖水を振りかける?」
そう言って私が取り出したのは、キャンプ用具と一緒に先生から全員に配布されたアイテムだ。
これを全員の体に振りかけたらおよそ半日、弱い魔物なら近寄って来なくなるという優れ物だ。もちろん強い魔物には関係ないけど。
「あぁ? 入って三十分も経ってねぇんだぞ! 使うの早すぎるわ!」
「そ、そうよねー」
そう言って引っ込める私。
「どこか拠点になりそうな場所を見つけるまで、地道に凌いでいくしかないんじゃないかな!? 多分、他のメンバーも僕達と同じような状況に遭ってると思う」
それはそうだけど、実戦経験の乏しい生徒に、こんな危険な場所で二十日間サバイバルさせるのって……難易度高くない? こんな頻度で襲われたら、それこそ身も心も持たないじゃない。
ゲームと現実が異なるのは承知してるけど、ゲーム内では拠点となる場所まで辿り着けたら、そこでは魔物に襲われることなく休憩が出来た。
最初の内はそこで回復とセーブをしつつ、拠点を出てレベル上げとか素材集めとかして、二十日間をなんとか生き延びる……みたいな流れだったけど。
「サバイバルだけだと言うならまだしも、キャンプって言ってんだから。もしかしたら魔物が出る頻度の低い場所があるのかもしれない……わよ?」
ゲーム内知識だけど、とりあえずヒントみたいなことは言っておく。
いや、これがヒントになってるかどうかわかんないけど。
ただの生徒にこんな危険しかない場所で、二十四時間魔物に襲われっ放しの状態で二十日間生き延びろ……だなんて、言わないと思うのよ。
本物の騎士になってから、そういう状況になったのならともかくだけど。
これはあくまで想定なはずだから。
そういった措置があってもおかしくないと、先生方を信じたい!
言ってる間に、魔物の大きさもレベルも徐々に増してきて、本当にジリ貧になって来る。
みんなの疲れも見え始めてきた。
他の生徒はどうしてる?
仮にもこっちは戦闘力が割と特化型のメンバーなのよ。
他のチームは、どちらかと言えば戦闘力というより、サポートとかそういった方面に強い生徒ばかり……。
やっぱり抜け道とかある!?
そんなひらめきと共に、目の前から恐竜が出てきた。
「いやああああ!」
「まじか、くそがあああ!」
「こんなの無理よおおお!」
なんでこんなに襲われまくるのよ!
おかしいでしょ!
さすがに真っ向から戦っていたら消耗が激しいと判断した私達は、恐竜が顔を覗かせた途端に回れ右をして走り出す。その間も森の中からちょろちょろと小さい魔物がちょっかいかけてきたけど、蹴飛ばしたり武器で弾いたり、まともに相手にしてる余裕なんてない。
これ本当に、どうなってんのおおお!?
無理だってええええ!




