80 「Eの素顔」
しばらく投稿が出来てなくてすみません。
書いては投稿、というストック無しなやり方なのでどうしてもこうなってしまってます。
出来る限り投稿頻度を下げないようにしますので、今後もどうかよろしくお願いします。
「聞き捨てならないんですけど!? それどういうこと!? 詳しく!!」
「お、落ち着け。女子が男の胸ぐらを掴むんじゃない! 野獣かお前は!」
モブスキルをオンにした時の私の顔は、淡白が過ぎる程のモブ顔だった。目は黒豆のような粒が二つ、鼻も点みたいなもので見る角度によっては、もはや無いに等しいレベル。モブスキルをオフにしたところで淡白さはほとんど変わらずで、誰の記憶にも残らないような特徴ゼロのキングオブモブな顔。
それを……こいつ、作り替えた、だとぉ!?
私は別の意味で動揺が治らずに、今日イチの勢いで身を乗り出している。我ながらカッコ悪くて情けないなぁと思ってたけど、どうせならさ、ほら……もう少しくらい可愛く転生してもバチは当たらないでしょ?
とりあえずこのまま締め殺しちゃう勢いにまでなった私は、ジンを掴んでいた手を離して平静を装う。すっかり冷めてしまってるけど、残ってた紅茶で喉を潤して深呼吸をした。
ジンも首元の襟を整えて、ジト目で私のことを警戒し出す。やだ、ちょっと距離が出来ちゃった?
「美醜が気になるのか。モブディラン家で育ったくせに」
「モブディラン家で育ったのはEの方であって、私は魔王復活の儀式で転生したばっかり……だったんじゃなかったですかね。だったら美醜にも少しはこだわるでしょ。不細工な魔王も嫌だけど、印象薄い魔王ももっと嫌じゃない?」
魔王といえば恐ろしい人相か、カリスマ性が高そうな美貌を持ってそうなイメージだからね。子供の落書きみたいな簡単な顔をした魔王とか、誰も恐怖を抱かないでしょうよ。
「E……、イビルの容姿は中の上といったところか。絶世の美少女じゃなくて残念だったか?」
「あんた、再会する機会があったらEに土下座して謝りなさいよね」
でも絶世の美少女は別に、そこまで望んでるわけじゃないから……。それじゃ目立って仕方ないだろうし、レイス先生をストーカー出来なくなってたわよね。あれ? 私いつから見守り行為をストーカーって認めるようになったんだろう? おっかしいなぁ?
「その、『メタモルフォーゼ』だっけ? それって自在に変えられるの? 一回戻したら、同じようにまた淡白な顔に戻せないとか、そういうことになったりは」
「自在だよ」
「意外というか、名高い暗部の人間の能力が顔を作り変えることだなんて。もっとこう、戦闘能力に特化したものだと思ってたわ」
そう考えたらジンって、努力で戦闘能力を養ったってことにならない? ちょっと見直したかも。
「スキルが一人一つだと誰から教わった?」
「いや、他にもスキル持ってるんかい」
前言撤回!
「暗部としては、命中率がほぼ100%の『スナイプ』というスキルを持っている」
「実戦演習でエドガー狙った時に外してるじゃない」
「あれはわざと外しただけだ! 失敬だなお前は!」
ダメだ、思わず反論する悪い癖が。これじゃ話が前に進まない。
「ごめん、黙るから続きドゾ」
「そしてもう一つのスキルがさっき言った『メタモルフォーゼ』だ。これも暗部時代でよく使っていたスキル。国王の勅命などで暗殺を命じられた時、相手がどうしても極悪人だと思えなかった時……。このスキルで相手の容姿を変え、国外逃亡させたことが何度かあった」
ジンの話を聞いて、私はモブディラン夫妻の言葉を思い出す。
『彼は潔癖で優しすぎる。潔癖過ぎるが故に、自分の信念にそぐわない命令には、決して従わなかった』
『本当に心底クソみたいな人間しか手を下さなかったの』
そういえば母親の方、確かにクソって言ってたわ。
「そしてEのことも、他の勢力に気取られないよう存在感の薄いモブディラン家で養われることが理想だった」
「モブスキルって、モブディラン家特有のスキル……生まれつき持ってるものじゃないの?」
「養子縁組したことによって、スキルが継承されたのだよ。簡単な儀式を行えば魔法を習得することだって出来る。あとは本人の素養次第だが、Eにはモブスキルを使う才能があったようだ」
へぇ、そうなんだ。それは知らなかったな。呆れ返るほどこのゲーム『ラヴィアンフルール物語』をプレイしてきて、あらゆる公式設定とかも読み尽くしたと思っていたのに。知らないことが次から次へと……。
「さて、Eの素顔に戻りたいんだったな。素手でお前の顔に触れるが、変な声を出すなよ?」
「わかってるわよ。あ、でも臭いとか手汗とかは勘弁してね?」
「本当に注文の多い女だな」
文句を言いながらも、ジンは胸ポケットからハンカチを取り出すと手を拭き出した。
素直な奴なんだな、意外に。
「行くぞ」
「あ〜、目は開けとく? 閉じとく?」
「どっちでもいいわ。静かにしろ」
「息は?」
「うるさい」
ジンの大きな手が私の顔を鷲掴みにする。まさにフェイスハガー!
なんか顔面全体が痙攣を起こしているみたいに、激しくピクピクして気持ちが悪い。顔の内側からこねくり回されているみたいで、痛みはあまりないんだけど、揉みほぐされているみたいで決して心地がいいとは言えない。
ものの数秒だった。少し顔が火照ったようにぽかぽかしてる。内側から揉みほぐされていた感覚が、血行を良くしたんだろうかと思う。顔面マッサージかよ。
「鏡を見てみろ。それがEの本来の素顔だ」
そうは言われても、と思いながら私は周囲を見渡して鏡がどこかにないか探してみる。すると壁にアンティークな感じの古い鏡が、壁に掛けられていたのを見つけて私はそこまで歩いて行く。
なんかドキドキするな。顔のどこかしらを整形したことがある人も、こんな感じなのかな。どんな風に生まれ変わったのか、初めて見る自分の顔に。
「うっわ……」
これは、夢みたいだ。
髪の色は当然、顔面とは関係ないからそのままなんだけど。顔つきが変わっただけで、こんなにも雰囲気が変わるものなんだろうか。焦茶のハーフアップに結わえた髪型ですら、あっという間にご令嬢って感じがする。
肌の色も変わらない。いつもの白くも黒くもない、日にほんの少し焼けた程度の健康的な肌の色だ。
なんだろう、やっぱり顔の印象を完全に変えてしまった一番の原因は「目」なんだろうな。学園一の美少女サラほどではないけれど、庇護欲がそそられそうな大きな瞳。毛量と長さがカサ増しされたまつ毛に、くっきりとした二重。目を少し細めると、より際立つ涙袋。普段はドライアイかよって位、私の目は少しカサカサなのに水分を含んだように潤んだ瞳は、なんていうか、女特有のあざとさを感じさせる。
鼻筋は通っていて、高過ぎず低過ぎずな感じ。口はアヒル口とは言わないけれど、これまた微笑んだ時の口の形が男の欲情をそそりそうな、絶妙な形……。分厚くはないけれど、ぷるんとしていて思わず触りたくなる綺麗なピンク色をした唇。
気のせいか顔の形も、少し小顔になってる? あれ? これ女子としては完璧な造形じゃない?
「あんた、これ見てよく中の上とか言えたわね」
「好みは人それぞれだろうが」
「まぁ、そりゃそうだけど……。これ、どちらかと言えば可愛いというより、かなり美人の部類じゃない? 印象としては暗い雰囲気を纏ってるのが気になるけど、これはもうE本来の性質なんだろうな。いや、それにしても、これ目立つ……」
私はゾッとした。Eがこんな美女だとは思わなかったから。せいぜい、淡白な顔より少しいい感じになる程度だろう、だなんてタカを括ってた。これ、あかんやつ!
「も、元に戻して……」
「気に入らんのか?」
「そういうわけじゃないけど、なんか落ち着かない! それにいきなり私の顔が変わったら、回りの人間が変に思うでしょ? Eの素顔はわかったから、元のモブディランの顔に戻して!」
ジンはさっきと同じようにフェイスハガーして、私の顔面が内側からマッサージされて、もう一度鏡を見たら実家のような安心感を得た。
「これこれ、よく見る顔のやーつ。あー落ち着くわー。こっちのが安心感ぱないわー」
「変わったやつだな。女はみんな美人がいいんじゃないのか」
「私は目立ちたくないタイプなの。あんな派手な顔してたら、回りから注目浴び過ぎて発狂しちゃうわ」
「わからんでもない」
うお、初めて意見が一致した!
ひとしきり見慣れた顔を見続けて、心を落ち着かせた私は改めて話を戻す。
「とにかく、色々わかったわ。ヴォルフラムのことも、あんたのことも。わかった上で言う。……私は、ある人の幸せを確実のものとする為に動いてきた。これは今後も変わらない。だからそれにそぐわない方向へ向かうようなことがあったら、私は魔王としての力を存分に敵対する相手に向けるつもりだから。それは覚悟しておいてね」
「……レイス・シュレディンガーか」
だからなぁんでみんなすぐにわかっちゃうのよおおお!?
私、そんなに隠し切れてませんかあああ!?
こんな話数になるまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
ブクマ登録もおかげさまで(減っていなければ)90件を達成することが出来ました。
念願の1,000件まで果てしなく遠いですが、完結までお付き合いしてくださることが、何より嬉しいことと思います。
どうか次回もよろしくお願いします。




