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61 「モテ期」

なんとか二日連続更新できました。

これからもよろしくお願いします。

 今度こそ先生と別れて、私は静かに学生寮の玄関を開けた。

 玄関ホールのライトは人感センサーなのか何なのか、魔法の何らかの力によって自動で明かりがつくようになっている。そして当然、玄関のライトが点いたとなれば学生寮で不在だった唯一の人物、私が帰宅したという合図にもあったみたい。


「モブディラン君! 夜遅くなるなら委員長である僕に連絡してくれないとダメじゃないか!」

「いや、先生に送ってもらったし。それに連絡手段が……」


 いつの間にかレギュラー入りしようとしてる委員長が、真っ先に私の方へ向かってくるなりのお説教だったけど。ごめん、もう名前忘れたわ。


「E……、また抜け駆けして先生と一緒にいた、だなんて……」


 これは何も言えない。

 サラがいつの間にか先生大好きルートに突入してるなんて知らなかったから、別に抜け駆けとかそういうのじゃないんだけど。

 下手なことは言わない方がいいよね。

 どうせ私が「先生のことなんて何とも思ってないお?」なんて言っても、多分嘘を見抜かれる気がしてならない。

 聖女の成せる業なのかどうか知らないけど、なんかソッコーでバレそうな気がする。


「うぉらこんぼけがぁ! 夜遊びとはいい度胸だなゴラァ! 一番おとなしそうな奴が一番不良とはよく言ったもんだよなぁ!」

「いや、あんた日増しにガラが悪くなってない? 大丈夫? カルシウム足りてる?」


 でもほんと、顔を合わせる度に輩感がどんどん強くなってる気がするけど、気のせい?

 ゲーム内でもここまで酷くはなかったような。

 

「Eさん、みんな心配してたってことだよ。先生が付き添ってくれてたなら大丈夫だと思うけど、やっぱり何かしら遠くにいてもお互いに連絡をし合える方法を模索した方が……」

「E、明日はお前が夕食当番らしいぞ。何かリクエストとか受け付けてたりするか?」


 はいはい、いつも通りですね。

 てゆうかなんでみんなしてこんなに寄ってたかって出迎えるの?

 今までなんて、私が出て行ったことも帰ってきたことにも気付かなかったじゃない。

 だから好き放題に抜け出したりしてたんだけどさ。主に先生のストー……、いや、それはもういいか。


 代わる代わる声をかけてきて、背中を押されるようにリビングに連れて行かれると、食いっぱぐれた私の為にと残していた夕食を温め直して持って来てくれる。

 別に食堂でちまちま食べるからいいって言ったんだけど、なんだかやけにみんなが構ってくる。

 キラキラチームはほぼいつもと変わらない様子なのに、今まで何の接点もなかったはずのクラスメイトが話しかけてきたり、作ったお菓子をご馳走してくれたり、自分の家が装飾品を取り扱っているとかで、魔法で作られたアクセサリーを一つプレゼントしてくれるだとか。

 なんだこのオタサーの姫みたいな扱いは!

 何、え? モテ期?


 あんまり周囲が賑やかになるものだから、私は食事を全て平らげると「もう疲れたから」と適当な理由を付けて解放してもらうことにした。

 すると案外あっさり聞いてくれて、それからはいつもの通り。

 モブスキルをオフにしてたからなのかどうか知らないけど、オフでもここまで注目浴びたりしなかったわよ。

 あまりに違和感がすごいから、もしかしたら私の中で何かが起きているのかもしれないと思って、私は部屋に閉じこもるとすぐさまステータスを出して調べてみた。


 特に急激なレベルアップみたいなことはなさそう。

 モブスキルもオフ状態。常にポイントを降り続けた『存在感』とか、スキル『ステルス』のレベルが激減したというわけでもない。じゃあ基本ステータス値に問題があるのかな。


 私はひとつひとつじっくりと確かめるように、ゆっくりと見ていく。

 ほぼ変わりなかったと思いきや、一番下の項目に何やら増えていることにようやく気付いた。


「寵愛……? 何、これ。こんなの最初はなかったはずだけど。いつからあったのかしら」


【寵愛】……種族問わず、周囲からあらゆる寵愛を受ける。神、魔王、聖女のみが保有。レベルが上がる程にその効力は増していき、場合によっては相手を洗脳に近い状態にすることも可能。【モブスキル】と併用した場合、【寵愛】が優先される。


 何、これ……?

 こんなの、知らない。

 聖女も保有してるってあるけど、サラのステータスにそんなのあった?

 記憶にないだけ? いや、違う。これでもかっていうほどプレイした私が言うんだから、間違いない。

 こんなステータス存在しなかった。

 何が原因か知らないけど、あらゆる面で改変されてる……。


 まだ続きがあるわね。

 えっと、【寵愛】はカリスマ性に近い。相手を惹きつけ、心酔させることに長けた能力……。

 まず相手から「気になる人物」として意識されるようになり、徐々に親近感が湧くようになり、やがて一方的な友情が芽生え、そして愛情へと発展する。

 最終的には奴隷の駒の如く、自らの命を投げ打ってでも尽くしたいと思うようになる。

 特にポイントを振る必要はなく、日ごとに影響を与えていくというのが特徴である……。

 あまりに自然な流れで惹きつけられていく為に、相手は【寵愛】の影響を受けていることに気付くことはない。

 

「え……?」


 じゃあ、今までのって……全部この【寵愛】によるものだったっていうことなの?

 私が寵愛を受ける側だから、クラスメイトも……ゲーム内でのメインキャラ達もみんなこれのせいで私のことを気に掛けてたってこと?


 レイス先生、も……?

 このステータスの影響で、私のことが好きだって思い込んでいるだけ?

 みんな、今までのこと全部……、私がいい気になってただけってことなの?


 自分の存在を認められていたわけじゃなかった。

 みんなが私に優しくしてくれてたのも、話し掛けてくれたのも、構ってくれていたのも、何もかも全部……これのせいだってわけ?


 それなら納得がいく。

 私自身がおかしいって思ってたもん。

 特にみんなに気に入られるようなことをしてきたわけじゃないし、みんなの為に何かをしてきたわけじゃない。

 何もしないでみんなに好かれてたと思うなんて……、なんて傲慢なんだろう。

 

 全部、【寵愛】のせいだったんだ。

 レイス先生は、私のことを好きだったわけじゃない。

 本人が気付かない内に影響を受けているってしっかり書いてあるもん。

 なんだ……、そっか。

 ここでガッカリするってことは、やっぱり私……ちょっとは期待してたんじゃん。

 馬鹿みたい。

 

 どうしようもない馬鹿だ。

 うわ、どうしよう。

 カラクリが何もかもわかったら、なんだか本気で死にたくなってきた。

 何もかもどうでもいい。

 誰も本当の私を見ていたわけじゃないんだもん。

 何よこれ、ラヴィアンフルールの主人公になったとでも思った?

 残念、所詮こんなもんよね。

 私はどこまで行っても脇役、その他でしかなかったんだ。

 魔王とか意味わかんない。どうしよう、マジでわけわかんない。


 甘くて幸せ過ぎた日々や時間が、何もかも創られた虚構だったってことに気付いて、私は途方もなく泣いて、泣いて、泣きじゃくった。

 こんなに泣いたのはいつ振りだろう。

 ちょっと前にも泣いた気がする。

 

 憎らしい【寵愛】の説明文を見つめながら、ある一文がロックされていることに気付く。

 ロックって何なのよ。

 本人なんだからちゃんと読めるようにしなさいよね!

 つーか隠す意味なんかあるのかよ!

 ふざけんな! これ以上何が隠されていようと、これよりもっと酷いことなんてないんだから!


 もう、何もかも……バーカ!!

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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