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48 「脱出」

編集作業中にエラーがあって、もう一度編集作業をしたのですが。

一時間のロスで集中力が途切れました。

変な部分が残っていたらすみません。

 別にヴォルフラムの言葉を鵜呑みにするわけじゃないけど、私は明日脱走することにした。

 日曜日はレオンハルトとジェヴォーダンが礼拝堂へ行く為にこのアジトを離れるという話も、ヴォルフラムがわざと鍵をかけなかったことも、全て罠だという前提で。


 一時は頭がおかしくなりかけていたけど、寝る前のポイント振り分けを忘れてはいない。

 ちなみに振り分けるのを忘れてしまってもポイントは消失されない仕組みだから、面倒なプレイヤーは一気にまとめて振り分けることもある。私はマメに振り分ける派だ。


 そんなことより、ゾフィとヴォルフラムが入れ違いになってからというもの。

 あれ以来ゾフィが私の部屋に押しかけてくることがなかった。

 私の食事を運んでくる信者の女性に聞いてみたところ、ミサにはゾフィも参加するそうだ。

 この人たちは私の世話、というのかな。

 食事を運んだり、トイレやお風呂に行く時に同行する信者の女性は私にとても好意的だった。

 多分私が本物の魔王だと思っているせいだろう。

 私はただの独身非モテ会社員で、どこにでもいる夢小説同人作家だというのに。

 そんな私のどこが魔王だというのか。


 小難しいことは、もっと落ち着ける場所に戻ってから。

 そう、A組のいる学生寮へ。

 先生のいる学園に戻ってからよ。


 一応身構えてはいたけど、その日の夜もゾフィが現れることはなかった。

 ついでに言うとヴォルフラムともあれっきりだ。

 私の世話をする信者は、ヴォルフラムから言われているのか、何の疑問も抱かず鍵をかけずに出入りするものだから、私は何を思ったのか。思い切って堂々と聞いてみた。


「魔王エルバ様を閉じ込めるようなこと、私共が出来るはずもありません。幹部の方々の命令あっての施錠でしたので」らしい。


 つまりもう閉じ込める気はない?

 なんか何もかもが罠に思えて仕方ない。

 私は明日に備えて眠ることにした。

 そう、小難しいことを今ここで考えても仕方ないんだから。



 ***



 外が騒がしい。

 近くでお祭りとか花火でもやってるのかってレベルで。

 そう思った瞬間、細長い鉄格子の嵌った高窓から強烈な光が入ってきて、それが見事私の目元に当たった。

 真っ暗な部屋でいきなり両目めがけてライトを当ててるかと思うほど、まぶた越しからでもわかる。

 その光のあまりの眩しさに私は飛び起きた。

 見るとその明かりは朝日でもなければ花火でもない。ただ激しく点滅したり、長く光ったりして、それはまるで爆弾でも投下され、爆発しているような様だった。


「な、何事? 敵襲?」


 いや、私が敵のアジトにいるんだから。

 これはむしろ味方?

 え? どこの?


 どうにか外の様子がわかればいいのにと思ったが、扉の鍵が開けっ放しであったことを思い出す。

 私は念の為『モブスキル』をオンにして、ゆっくりと扉を開けてその隙間から廊下の様子を窺った。

 時々右から左へ武装した信者が走り抜けていく。

 慌てているのか、動揺しているのか、私がそっと開けている扉の隙間にも気付かない様子だ。

 廊下にも窓はあり、そこから見ても外がよほど攻撃されているということがよくわかった。


「いえ、まさか……ね」


 私はもう誰も通らないよね? と注意しながら、そっと部屋を出て目の前にある廊下の窓から外を覗いた。

 ここはそれなりに高い塔の上らしい。

 下の方を覗いて見ると、中庭と跳ね橋が見えた。

 ここは孤島にぽつんと立てられた塔のようで、ここへ行き来する為にはどうやらあの跳ね橋を渡らなければいけないようだ。

 邪教信者の大半は一般人だ。

 いくら武装したところで、戦闘のプロである騎士団には敵わないだろう。

 全身甲冑姿とまではいかないが、普段の軽装とは違ってきちんと身を守る為の胸当てや肩当てなどを装備した複数の騎士が、この塔へ向かって雪崩れ込んでいくのがよく見えた。

 だが乗り込んでいるのは騎士だけじゃない。


「死ねやクソがあああ!」

「……ちょ、この声は」


 ものすごく聞き慣れた声がした。

 恐らくここら一帯を火の海にしているのは、こいつの仕業だろう。


「手作り料理の約束をまだ果たしていないぞ! E!」

「……ここに来るまで、まさかずっとそのセリフ叫んでないでしょうね?」


 訂正する。

 ここら一帯を火の海にしているのは、どうやらこの二人らしい。

 よく見てみると騎士団に混じって軽装ではあるが、きちんと武装している成績優秀組が戦闘に加わってるのがわかった。後方にはあの探知系女生徒もいる。


「あっ! あそこです!」


 いや、見えてるからもうそれ探知スキルとか関係なくない!?

 それでも私の顔半分しか見えていなかっただろう。

 私は見張りなどを警戒して、あんまり目立たないようにしていたし。何より『モブスキル』を使っているんだから、ほとんど背景に溶け込んで視認出来なかったはずだ。

 それでも発見したということは、それはやはり探知スキルのおかげなんだろう。

 探知系女生徒の声に反応した他のメンバーが口々に文句を言い出した。


「Eさん! もっと自分を大切にしなくちゃダメじゃないか! 君だって僕達と同じA組の生徒なのに!」


 ウィル、お前が言うな?

 お前はゲーム内で散々自分を自己犠牲しまくって、守らなくちゃいけないメンバーに自分が入ってないってこと、よくあったじゃん? そのままブーメランするわ。


「E! テメェこのクソ野郎が! A組助けた英雄だとでも思ってんだろ!? いい気になってんじゃねぇぞ!」


 エドガー、うん、そこまで思ってないよ?

 いい気になってないからね? それから私は野郎じゃないからね?


「E! お前が死んだら誰が晩ご飯担当するんだ!」


 いや、生徒は他にもいるでしょ!

 なんでコックさんポジションになってんのよ!

 本当にいい加減にしなさいよ、ルーク!


 何これ、みんなが私に声をかける度にツッコミ入れなきゃいけないやつ?

 それはさすがに疲れるんですが。

 私はこれ以上遠くからわざわざコメントされて、周囲にダダ漏れするのが嫌で頭を引っ込める。

 とにかく下に行けばいいことだけはよくわかった。

 騎士団が乗り込んで来た。

 学園の生徒である私を救出する為なのか、イベントにある『邪教信者のアジトの塔を攻略せよ』に関連することなのかわからないけど。

 まぁこれは一学期のイベントで実際にゲーム内であったことだから、何も不思議な点はない。

 目的が私であろうとなかろうと、とにかくこの塔から出れば私は晴れて自由の身というわけね!

 こういうこともあろうかとステータス値「存在感」に結構割り振っておいてよかったわ。

 おかげで『ステルス』を使わなくても、こうやって壁伝いにしゃがんだだけで、なぜか信者達は気付かず走り抜けて行く。

 本当に、なんで!?

 細かいことはもう考えないようにして、私はぐるりと円周状になっている塔を下りの階段目指して走った。

 東側にあった下り階段を下りたら、次は北側、次は西側、という構造で階段が設けられている。

 一階へ到着するまで、ぐるぐると私は塔の中を走り続けないといけない。

 下りていく毎に戦闘の声や音が大きくなっていった。

 私は階段を下りる度に下の様子を窺ってから、その階に着くようにしている。すぐ近くで幹部に鉢合わせたら笑えないからだ。

 でも塔の中は混乱を極めていて、騎士団側が圧倒的有利に思えた。

 あと何階で地上に辿り着くんだろうと思いながら、階下を覗いた時だ。

 走り回る信者の群れの中から、長身の青い髪の男が姿を現す。

 私は階段を踏み外しそうになった。


ーーレオンハルト!?


 やっぱりヴォルフラムの言っていたことは嘘だったんだ。

 ミサに出席する為に本山近くの礼拝堂に行ってなんかいなかった。

 まだこの塔に残っていたんだ。

 当然レオンハルトも私を見つけ、いや……わかっていたんだろう。

 私が軟禁されていた部屋から出るところも、階段を使ってここまで下りて来ることも、全てその『神の目』で見ていたに違いない。

 余裕のある不敵な笑みを浮かべるレオンハルト。

 やがてこの階にいたほとんどの信者が階下へ向かった時、外はこんなにも騒がしいのにここだけ時が止まったように不気味な静けさが漂っていた。

 まるで外の喧騒がBGM代わりに付けているテレビの音のように、無機質に、他人事のように聞こえるようだ。


「やはり行ってしまうのか。わかっていたが」

「当たり前でしょ。私が魔王だなんて、ぶっ飛んだ冗談だわ」


 本当におかしかったのか、吹き出すレオンハルトに怒りさえ覚える。

 先生の無二の親友が、先生を一番泣かせてどうする!

 頭に来た私は乙女ゲームでの知識だということも忘れて、ありったけの文句をぶつけた。

 ゲームをしてきた時から! ずっと言いたかったの! やっと面と向かって言えるわ!


「本当はレイス先生のことを今も大切に思ってるくせに! もうリンがどこにもいないってわかってるくせに! そうやってカッコつけて破滅の道を進むことが、自分の贖罪だと思ってるんならとんだ大馬鹿者よ!」


 何も知らないはずの私の口からこんな言葉が出て来れば、嫌でも反応するでしょうよ。

 レオンハルトの眉間に皺が寄る。

 真面目な奴ほど、正論をぶつけられたらブチギレるものなのよ!


「お前に何がわかるって言いたい顔ね! わかるわよ! だって愛する人を失うことがどれだけの絶望なのか、私にだって経験あるもの! でもね、魔王復活の儀式をしたってリンは復活しないんだから!」


 私を睨み付けるレオンハルトの目から、血の涙が零れ落ちる。

 真っ赤に充血した目、『神の目』の使い過ぎで涙点から排出される血はレオンハルトの頬を伝っていった。


「それが、お前の本当の姿か……。黒髪の、そばかす顔が……」

「えっ……」


 レオンハルトが口にした特徴……。

 それはまさしく『現実世界の私』、なぎこの姿と一致していた……。 

話を短めに区切るのが難しくなり、ここ数話、少し長くなってしまいました。

「手軽く読めるように」を重きに書いているのですが、上手くいかないこともあります。

次回もお楽しみに。

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