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40 「大失態の優勝者」

 作戦はこうだ。

 まずは探知系女子による探知スキルで、敵の居場所を把握。

 ついでに先生達の現在地を割り出してもらった。

 委員長の結界スキルはその場に張ったら移動させることは出来ないということなので、周辺にいる敵を片付けながら、少しずつ結界を解除してからの再び結界を張るという行動を繰り返しながら、一番近くにいる先生のところへみんなで移動していくというもの。


 正直なところ私は戦力外。

 みんなをその気にさせることに成功したとはいえ、私に出来ることが限られていた。

 だから探知した敵を排除するのは、攻撃特化スキルの生徒で行なう。

 主にエドガーやルークといったメンバーで。その他にも剣が得意とか、多少なりとも攻撃魔法が使えるという生徒がいたけど、うん。いちいち覚えられなかったです。

 とにかく彼等で敵を一掃しつつ、結界内には治癒術を使えるサラ、探知系女子などといった攻撃特化スキルを持たない補助や回復をメインとした生徒が残る。

 万が一の為ウィルには、戦闘員ではない生徒を守る為に結界に残ってもらった。


 そして私はというと。

 探知系女子に探知してもらった、一番近くにいる先生の元へ助けを求めに行く、というもの。

 私が唯一持ってる有効なスキル『ステルス』で完全に姿を消して、その先生の元まで駆け抜ける。

 いくら一番近いからって、そこへ向かっていても肝心の先生がどこかへ移動してしまったら元も子もないからね。先生を呼びに行く役を私が引き受けたというわけ。

 本当ならこの襲撃の目的であるサラが安全かどうか、それを見守っておいた方が良かったんだけど。

 そうすると全員が生き残る可能性がどんどん無くなってしまう。

 それだけは避けたかったから、今こうして私が単独で行動しているというわけ。

 木々の間を駆け抜け、ぬかるんだ地面で転倒しそうになりながら、魔物が突然現れて驚きつつ、スキルの効果は魔物にもちゃんと有効なようで。

 駆け抜けているから、多少なりともその痕跡を残しつつ、私は誰にも発見されることなく急ぐ。

 視界の端にチラつくカウントダウン。

 この間は『ステルス』のレベルアップにポイントを割り振ることなく、ステータス値『存在感』に全振りしたからちょっとだけ後悔してる。

 でも一応そっちに割り振っても『ステルス』の性能アップに影響はあるわけだから、全く無駄なことをしたわけじゃないから割り切ることにした。

 

 ここまでとりあえず邪教信者に出くわすことなく、探知で割り出した先生の居場所までもうすぐそこというところで、私は何かに足を引っ掛けて見事に転倒した。

 声を出したらそれは例え『ステルス』を使っていても、相手に聞こえてしまう。

 私は咄嗟に出かけた声を我慢して、何に足を引っ掛けたのかを目で確認しようとした。

 そこには人間が倒れている。黒い衣装に身を包んでいたせいで見えなかったみたい。

 倒れているのは黒いローブを来た男性、つまり邪教信者だ。

 転んだ時に、私は膝を擦りむいて出血してしまったみたい。

 ゆっくりと立ち上がって周囲を警戒した。

 すると生い茂った丈の長い草むらには、複数の邪教信者がみんな倒れている。

 死んでいるわけじゃない、気を失っているわけでもない。

 みんな僅かに呻き声を上げながら、体を震わせていた。


 これは多分、ソレイユ先生の麻痺スキルだ。


 つまり探知した先生はソレイユ先生だったことになる!

 もしかして一人でここら辺の邪教信者と戦っていたのだろうか?

 ソレイユ先生も騎士団の一人なのだから、身体能力も人並み以上……ではあるけど。

 決して身のこなしが特別軽いわけでも、反射神経が特別鋭いわけでもない。

 あくまで「人並み以上」なのだから、一人でこれだけの人数を相手にしていたとなると分が悪い。

 助けを求めて来たくせに、私はソレイユ先生の安否の方が気になった。


 注意を払いながら、不意打ちを食らわないように横たわっている邪教信者からちゃんと離れて、身を隠しながら辺りを見回す。

 少し開けた場所でソレイユ先生が息を切らしながら苦戦している様子だ。

 肩で息をしながら、苦悶の表情で何かを警戒している。

 騎士団のソレイユ先生をここまで追い詰める相手?

 それともあまりに人数が多すぎて疲労しているだけ?

 

「テメェ、生徒を盾にするとは卑怯じゃねぇか。いや、魔王なんかを信仰してるんだから卑怯で当然か」

「何とでも言うがいいさ」


 ソレイユ先生が話しかけていた相手の声を聞いて、私は高い所から落ちたように胸の辺りがヒュッとなる感覚がした。なんで? どうして? という思いしか出て来ない。


「ムカつく相手が欲しいなら、間抜けな自分達の生徒にムカついておくことだな。そいつのおかげで俺達はこの場所を突き止めることが出来たんだから」


 楽しそうに喋る若い男の声。

 この場所を突き止めることが出来た?

 どうやって?


「何言ってんのかさっぱりだぜ。やっぱ邪教信者の奴らは頭がイカれてやがんなぁ。俺達の生徒が何をしたって言うんだ」


 ソレイユ先生の口調、セリフ、多分これ……相手に説明させようとしている。

 でないと腑に落ちない。

 この若い男がここにいる理由が。


 見晴らしの良い草原でエドガーを攻撃したのは間違いなく、ジン・レンブラントだろう。

 一般人に等しい邪教信者、それにゾフィや獣人ジェヴォーダンにそんな技術はない。

 そして私達のチームを狙ったということは、レイス先生がその相手を見逃すはずがないから。

 戦力を分散されたはずの邪教信者の中で、戦闘経験のある幹部がたまたま今回襲撃してきたメンバーに含まれていたということ。

 そこから割り出した結論は、今回のメンバーで最も危険な相手は、エドガーを襲った相手「一人だけ」だと。

 でもそれがそもそもの間違い、勘違いだった。

 幹部は二人、来ていたんだ。


 ただでさえ人数を割く時に、場所が不確定だから1チームに二人以上の幹部を含まないのだと判断していた。

 でも違った。

 どうやってかは知らないけど、相手は実戦演習がアインゲートホルクであることを特定していたことになる。

 そうすると当然、幹部を複数配置するのは当然だ。

 もしかしたら全勢力で押しかけているのかもしれない。

 本当に敵が、この場所を事前に特定していたのなら……。


「バカなよ、生徒がいたんだよな。そいつは無謀にも我が教主様に逆らった」

「え」


 思わず声が出てしまう。


「教主様的には別にそいつをボコボコにするつもりはなかったんだろうけど、まぁ血の気が盛んな熱狂的信者のすることだよな。教主様に逆らった罰として、その生徒をボコボコにしてやったら何が手に入ると思う?」


 黙って聞くしかない私とソレイユ先生。

 私は街中で起きた出来事が、ありありと目に浮かんで来る。

 冷や汗が額を、背中を伝う。


「意識が混濁していてそいつは気付かなかったみたいだけどな、手に入れてたんだよ。そいつの血を」


 私は手で額を抑えた。

 頭が痛い……、確かに全く気付かなかった。

 でも、そうだ。

 レオンハルトは私に全く近付かなかったわけじゃない。

 暴行された私を抱き抱えて、立たせてた。

 まさかその時に?

 それが念の為だったのなら、周到すぎるでしょ……。


「そうさ! 俺達の仲間の中にはダンピールがいる! お前達が大嫌いな異種族がな! 教主様はその血を仲間のダンピールに味見させて、血の痕を辿らせた。そしてここが判明したってわけだよ。間抜けだよなぁ!」


 大失態の優勝者は、私かあああ!

 ゾフィ、お前……っ! そのダンピールって絶対にゾフィでしょそれ!

 他にダンピールがいたかもしれないけど、もしかしてレオンハルトがちょいちょい言ってた「お前のことを気に入ってる娘」って、ゾフィのことかいいい!

 なんていう大失態! 大失敗! それじゃ全部私が悪いじゃない!

 幹部がジン・レンブラントと、もう一人!

 今ソレイユ先生と対峙してる、ヒャッハー男のヴォルフラム・フリードリヒ!

 またしてもゲームと違う! 

 演習場所を邪教宗派側が事前に知っていたとしても、襲撃してくる幹部はジン・レンブラントと獣人ジェヴォーダンだったはず!

 なんでこの男がここに!

 この……っ、攻略対象の一人でもある邪教信者のイカれヒャッハーが来てるのよ!

 あんたは二学期でサラが聖女として覚醒する場所に居合わせる時が、初登場シーンでしょうが!


 その時に……。


 サラを守ろうとしたレイス先生が、ヴォルフラムと戦って……。

 そうだ、あんたはまだこのタイミングで出て来ちゃダメだ。

 ストーリー的な問題もある。

 人間関係の問題でも、ここであんたが来ちゃ絶対にダメなんだ。


 ヴォルフラムのスキル『弱体化ナーフ』で、先生のスキル『スキル無効化』が弱体化されてしまう。

 こいつとの戦いで先生は、大切な片目を喪失してしまう。

 ただでさえ片目を失ってスキルの効力は半減してしまうのに、そこに更に追い打ちをかけるようにレイス先生のスキルを弱体化させるという、邪教信者側の一番の功労者となるヴォルフラム。


 それに、それだけじゃない。

 こいつは、今ここで出会うわけにはいかないの。


 ラヴィアンフルール国、時期国王の第一継承者……ルークの実兄。

 邪教に心酔する余り、父王自ら勘当同然で追放された第一王子ヴォルフラム・ラドクリフ。


 この、最悪の状況は、何っ!?  

またトントン拍子に展開していきますが、置いてけぼりになっていないでしょうか。

私の技術不足ですみません。善処します。

そして次回もお楽しみください。

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