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102 「Eの前に立ちはだかるは……」

9月分の更新です。

ついに最終決戦が始まる……。

「どういうことだ、E」

「レオンハルト、だっけ。今まで教主の役割お疲れ様」


 演説会場に邪教宗派の教団全員を集めて、今からスピーチしようという時だというのに。

 いかめしい顔をしたレオンハルトが邪魔にし来る。わかってたけど。

 だって彼はリンを、Eの肉体の中に私と同じように宿っているリンの魂を求めているから。

 リンの復活を。

 かつて愛した女性との再会を。


 親友であるレイス先生を裏切ってまで……。


「邪神エルバの復活に加担すれば、リンの魂を救う約束だったはずだ」

「だから、私の中にちゃんといるってば」


 そう言った瞬間、レオンハルトが剣を抜いてその切先をEの喉元に当てる。

 肌が切れない程度に押し当て、微動だにすることも出来ない緊張感が走った。


「いつ、リンを解放する」

「予定通り、ブラッディ・パレードが終わったら……ね」


 Eが喋ったと同時に、喉に当たっていた剣先がプツリと柔肌に小さな穴を開けた。

 針で軽く刺した程度の出血しかないみたいだけど、ちくっとした痛みは私にも伝わっている。


 レオンハルトが剣をしまった。

 それからサッと背を向けると、もう一度念押しするように低い声で威嚇する。


「約束を反故することだけは許さない、いいな?」

「わかってるわよ」


 レオンハルトがあっさりと引き下がったのは、恐らく彼の持つ『神の目』でEの中にいるリンの魂を見つけたから……だろうか?

 そもそも最初に私ーーEを拉致った時も、レオンハルトは決してこの体を傷付けようだなんてしなかった。

 それはつまり、その時からすでにEの中にリンの魂があることがわかっていたから、なんじゃないだろうか?

 レオンハルトの思惑は周囲に敵を作る。

 死者の魂を現世に甦らせようだなんて、倫理に反している。

 誰もそれを正当な理由としないだろう。


 Eが少し切れた喉の傷口に触れた時、物陰に隠れていたであろう人物が突然飛び出して来て抱きついて来た。


「E様ぁ! 大丈夫!? 痛かったでしょお!? 私が舐め舐めしてあげるからぁ!」


 ゾフィ……。

 久々に出て来たかと思ったら、Eを追いかけ回していたのか。

 それともほんの少し流した血の匂いで追って来たのか……。

 ニチャアっとした笑顔で血色の良い舌を出して、まるで犬みたい。


「あ……っ」


 ゾフィが短く声を上げる。

 側に寄るまではいい、だけどベタベタとくっつき過ぎるのをEは好まない様子だった。

 馴れ馴れしく抱きついて来たゾフィを両手で離す。

 その仕草から、明らかに拒絶していることが見て取れた。

 ゾフィもその行動は予想外だったのか、唖然とした顔をしたまま、ストンと床に尻餅をついて見上げてくる。

 それを上から見下ろすE。


「ごめんね、そういうの……私、嫌いなの」

「あう、Eちゃ……」

「スピーチがあるから。みんな待ってるから早くして」


 手を差し伸べるでもなく、床に座り込んだゾフィに意も介さず通り過ぎて行くE。

 さすがの私でも、それはないんじゃないかと思った。

 いや、別にゾフィが可哀想だとかそんなんじゃなくて。

 仮にもあんた達は仲間同士なんでしょ?

 特にゾフィなんか邪神エルバを信仰してる、盲信者みたいなもんじゃない。

 信じた人に裏切られたみたいにならない?


「そういうこと言ってる場合?」


 え……。


「ここから始まるって言ってるの。ゲームでは確か、ゾフィを手懐けた聖女の手腕でブラッディ・パレードが始まる寸前でアンフルール側が乗り込む手筈になってたのよね」


 う、ゲーム知識まであんたの記憶に流れて行ってるっての!?


「私は邪神エルバの魔力も見せつけ、信者全てを思い通りに操り、導く。そうして私達はラヴィアンフルール王国に向けて、総攻撃を開始する」


 初見プレイの一周目を除いて、大体は信者側からのリークがあって先手を取るルートが普通になってた。

 でも今回はまんま初見プレイみたいな流れになってる、ってこと?

 先手は取れなくても、どのルートにも存在しないような……そんな有利な状況はアンフルール側にもあるはずよ!

 

 そう、メインとなる生徒達の戦闘力の底上げ。

 しかも今回は学園長であり、ハイエルフでもあるフレイヤ・モルガンも、全面的に協力してくれることになってるんだもの。

 何より、私はフレイヤに『ラヴィアンフルール物語』というゲームの存在も明かしているんだから!


「上手く行ったら良いわね」


 大声援と拍手の中、スポットライトが当たるEは片手を上げて信者達に応える。

 見た目には普通の人間から、異種族の者まで、多種多様だ。

 亜人、獣人、悪魔族、そして彼等に加担する普通の人間……。


 Eの隣に控えていた現教主であるレオンハルトが、さっきEの喉に突き立てた剣を抜いて高く掲げる。

 そうすると、それを合図に鳴り止む歓声と拍手。

 一歩前に出たEが、微笑を浮かべて号令する。


「これより、ラヴィアンフルールを攻め落とす。邪神エルバに栄光あれ!」


『邪神エルバに栄光あれ!』


「ブラッディ・パレードの始まりよ!」

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