100 「邪神エルバと女神ナタリー」
なんとか7月中の更新が出来そうです。
記念すべき100話目は、この人物をメインとして書こうと思っていたのですが、どうやら叶ったようです。
思ったよりサクッとなっちゃいましたが、今回も「番外編」みたいな感覚でお付き合いくだされば幸い。
よろしくお願いします。
ナタリーきゃわわわ!
薄水色をした輝く髪も! 指で突いたらぷにぷにして柔らかいお肌も! 桜色でぽってりした愛らしい唇も! キラキラ煌めく宝石みたいな瞳も!
何もかもが可愛くて、綺麗で、全部が愛しい私の妹! ギャンかわ!
でも、そんなナタリーの綺麗な瞳に映る私の姿は……好きじゃない。むしろ嫌い。大嫌い。
ナタリーとは正反対の、墨のように真っ黒な髪。
カサついた肌、舌で舐めないとすぐ干からびるカサカサな唇。
髪と同じように真っ黒な瞳は、澱んでいて薄汚れているようにしか見えない。
でもいいの。私達は母親が違うけど、同じ日に生まれた双子同然の姉妹。
暗くて陰気で悪質な力を持つ私のことを、ナタリーだけは優しく接してくれた。
ナタリーも私のことを好きだと言ってくれた時は、私の人生で最大級に幸せな出来事だ。
いつも一緒で、仲良しで、これから先もずっと変わらないって思ってた、のに……。
「女神ナタリー、世界の礎としてその身を捧げよ」
世界の創造主たる父が、ナタリーにそう命令した。
この世界、ラヴィアンフルールの安寧の為にナタリーは世界を支える世界樹になるのだと。
それは世界と一つになるということ。世界になるということ。
ラヴィアンフルールをあまねく慈愛によって、守り続けること。
ナタリーが樹になったら、ナタリーはどうなるの?
ナタリーの魂はそこにあると父は言った。だから何?
私はナタリーが楽しく、笑顔で、元気でいてくれないと嫌なの。
「エルバ、私は世界樹となってそこから動けなくなるけれど。魂は永遠にそこにあると父が言っていた。だから、私の意識もそこにある。二度と会えなくなるわけじゃないの。私はラヴィアンフルールを愛している。この世界を、人々を、全てを愛している。この世界を守る為に、支える為に、これは私自身が望んだこと。だからそんな悲しそうな顔をしないで、私の半身エルバ。私の愛しいエルバ。私はあなたのことも愛している。世界樹となることは、エルバを守ることでもあるのよ。だから、……さようなら」
私はそんなの、赦さない!!
悪質なる私の力は、この世界に魔の者を生み出した。
私の怒りは、この世界に悪意を生み出した。
ナタリーへの歪んだ愛情は、この世界に闇を生み出した。
世界の創造主たる父、憐れな父、愚かな父、私を忌み嫌い、私からナタリーを奪った罪深き父。
魔族や魔物を統べる女王となった私は彼等を従え、世界を滅ぼさんとする程の暴力で父に対抗した。
ナタリーナタリーナタリーナタリーナタリーナタリー……。
父を手にかけ、私は完全に闇へと堕ちた。
世界が私を拒絶した。
神殺しの悪女。
魔族の女王。
混沌と破壊の女神エルバーー。
人々は、私のことをその名で呼んだ。
世界樹は神々しい光を放っていた。
それは心が安らぐような、私のよく知る慈愛に満ちていた。
血に塗れた手で世界樹に触れようとした瞬間、私の手は弾かれ拒絶される。
『あぁ、私の愛しいエルバ……。私の半身だった者……。私の愛する父を、ラヴィアンフルールをこんなにまでして、私を取り戻そうとするなんて……。あなたからの愛を、私は見誤っていたわ。私は悲しい。とても悲しい……』
「ナタリー? あなたを解放しに来たのよ? 私はナタリーに自由を与えたかった。こんな不自由なことしなくてもいいように、あなたを閉じ込めるラヴィアンフルールという名の鳥籠は、私が全部壊してあげるから……っ! だから私を、私のことを拒絶しないで……っ!!」
世界樹から放たれた聖なる光で、私は弾け飛んだ。
その瞬間、世界樹に成っていた生命の果実もまた、一緒に吹き飛んだのを私は見逃さなかった。
『……それは私の中に残されていた、あなたへの想い。私自身は世界樹としてラヴィアンフルールを守り続ける道を選んでいるけれど、その実には私の魂のひとかけらが込められている。その実からなる生命は、私の魂を宿している。やがてその実が人として生まれ変わった時、その者は私と同様の力を持ったもう一人の私となる』
世界樹は、私に語り続けた。
『世界樹となった私に、あなたを止める術はない。けれど私の魂を宿したその者なら、あなたを止める力となれる』
ナタリーからのメッセージだった。
私への愛の形を示してくれた。
「約束よ、ナタリー。私は私の持てる力全てを使ってでも、世界樹という運命からあなたを解放してあげる! この世界が、ラヴィアンフルールがどうなろうと私の知ったことじゃない! むしろ私からナタリーを奪ったこの世界は、憎しみの対象だから! ナタリー、私はね、あなたのことが大好き! 大好き! 大好きなの!」
私の頭の中はナタリーで満たされてる。
それ以外のことは、もうどうでもいい。
「また一緒に手を繋いで遊ぼう? 天使達をからかったり、禁断の果実をこっそり取ったり、流れ星を掴まえて神泉に向かって水切り遊びしたりしよう?」
『…………』
「約束だからね? 私は何百、何千、何万年かかろうとも絶対に会いに行くから! ナタリーの生まれ変わりを絶対に見つけて、その器に残りの魂を詰め込めばナタリー本人になるも同然よね!?」
ナタリーは誰にも渡さない。
父にも、世界にだって、誰もナタリーの所有者じゃない!
私はナタリーの為ならどこまででも堕ちていける。
何も惜しまない。
何も怖くない。
ナタリーの笑顔が見られれば、他に何もいらないから。
この私ーー破壊の女神エルバは、ナタリーの為なら悪にだってなれる!
破壊の女神はヤンデレ、かつメンヘラ。
完全なエルバ視点の内容なので、実際の事柄や意味合いが大きく乖離してる部分も当然あります。
そこからまた「邪教宗派の捉え方、考え方、理念」も、信仰対象であるエルバの目的とはかけ離れてる部分もあります。
結局みんな「自分の主観でしか物事を受け止めていない」ということです。
次回もよろしくお願いします。




