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12.鉄砲鍛冶師


「帰蝶様。あそこで鉄を打っているのがくだんの鍛冶師となります」


「……へぇ、あの人が」


 橘屋又三郎さんと今井宗久さんにすぐ近くの鍛冶場へ案内された私は、一人の男性を紹介された。


 まぁ、紹介されたというよりは、鉄を打っている男性を遠巻きに眺めているだけなのだけど。なんでも“彼”は気むずかしいらしく、仕事中に邪魔をするとハンマー(手槌)が飛んでくるらしい。


 ふっふっふ、分かっているわ。ここは鍛冶仕事が終わるのを大人しく待っているべき場面なのね? そうすれば『終わるまで待っていてくれるとはなんて器の大きな人なんだ! 仕えます!』となるはず! どっかでそんな逸話を読んだことがあるもの!


『そんなうまくいきますかねぇ?』


 プリちゃんが(光の球だけど)首をかしげていると――



「――何ジロジロ見ているんだ!?」



 鍛冶師が振り返り、振りかぶり、こちらにハンマー(まごう事なき鈍器)をぶん投げてきた。何という短気。知り合いであるはずの宗久さんや又三郎さんも顔を蒼くしてしゃがみ込んでしまう。


 ただまぁ、ギリギリ当たらない軌道だと分かったので身じろぎすらしない私である。

 そんな私の髪をかすめたハンマーは後ろの壁に突き刺さった。


 にやり、と。ハンマーをぶん投げてきた鍛冶師が頬を吊り上げる。


「ほぅ、南蛮人のくせに肝が据わっているじゃねぇか」


 肝試し(物理)してくるの、止めもらえません?


「き、清賀(きよよし)! なんということを! 申し訳ございませぬ帰蝶様!」


 頭を下げてきた又三郎さんにひらひらと手を振る。


「あ~お気になさらず。当てる気はなかったみたいですし」


「……ふん、よく分かっているじゃねぇか」


 ニヒルな笑みを浮かべる男性(清賀さん?)だった。


 改めて向き直ってみると、想像よりかなり若い人だった。あれだけの錬鉄ができるのだから経験豊富な頑固親父だろうと思っていたのだけど、20代前半かもうちょっと若いくらいじゃないだろうか?


 …………。


 確信を抱いた私は清賀さんを『鑑定』してみた。


 ……あ~、やっぱり。凄いわこの人。


 私が感心していると清賀さんが試すような軽い口調で問いかけてきた。


「お姫様だってのに火縄銃を欲しがっているっていう変わり者はあんたか?」


 なぜみんな変わり者扱いしてくるのか。解せぬ。



『実際変わり者ですし』



 どこが変わっているねん。平均平凡、どこにでもいる凡庸な美少女とは私のことですよ?


『そういうところです』


 こういうところらしい。


 まぁ、変わり者扱いされるのは慣れてしまったのでとりあえず置いておくとして。


「えぇ、そうなるわね」


「ふぅん? ここまで来たってことは、『見抜けた』のか?」


「もちろん」


 ここで普通なら『あの火縄銃が特別品質が高いってことを見抜けたのか?』となるのでしょう。しかし、私を舐めないでいただきたい! 彼の思惑も特殊な力もすべて見抜いているのだ!


「清賀さん、でしたね? あなた――“視えて”いますよね? 鉄をどれだけ熱すればいいのか。どこをどれだけの力で叩けばいいのか。誰に習うまでもなく理解できていたはずです」


 その名もスキル:天目一箇神(あめのまひとつのかみ)の加護。

 いやスキル扱いしていいものじゃないけどね。なにせ本物の神の加護だもの。魔法とか神秘に溢れていた前の世界でも百年に一度出るかでないかってレベルの貴重品だ。


 そんな自分の特殊な力を見抜ける人間じゃないとダメ。彼はきっとそう言いたいのだ。


「――っ!」


 私の指摘を受けて清賀さんは目を見開いて――


「……いや、俺が言いたかったのは『あの火縄銃が特別品質が高いこと』を見抜けたかってことだったんだが……なんでそこまで分かるんだよ?」


 感心するどころかドン引きする清賀さんだった。解せぬ。



『ほんと、高性能なポンコツですよね』



 斬新な評価をするの止めてもらえません?




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― 新着の感想 ―
[一言] リリアもそうだけど銀の一族って基本高性能なポンコツでは?
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