正妻☆
アホの子がアホなことをやらかしたらしく。一時はかなりピンチだったみたいだけど……そこはほら戦国時代人。平手政秀さんが力とパワーで何とかしてしまったみたい。
結果として由宇喜一さんは自刃してしまいましたとさ。
う~ん、斯波家の中でもまともそうだった由宇さんが……。これはもう終わったわね斯波家。
さてここからどうしましょうか?
大義名分があるから軟禁するのは確定として。斯波義銀をそのまま屋敷に住まわせ続けるか牢屋に入れてしまうか……。さすがに外聞が悪すぎるから屋敷に住まわせる?
でもまぁ、「一気に家族を失ったことで心身共に疲弊し、寝たきりになってしまった」ということにすれば牢屋にぶち込んでも問題ないのでは?
『そういうところです』
こういうところらしい。最初にケンカを売ってきたのはあっちだというのに。解せぬ。
まぁでも斯波家は別の人が継いでもいいのだし。アホの子には退場してもらっても問題は……。
『そういうところです』
こういうところらしい。一番死人が出ない方法だと思うのにニャー。
まぁ、とにかく。
こちら側には何の損害もなく終わったし、すでに織田の兵が斯波の屋敷を包囲。斯波義銀を軟禁状態にしてしまっているらしい。
ならそのまま軟禁すればいいじゃんと思うのだけど、森可成君たちは一度三ちゃんに戻ってきて欲しいらしい。
なにせ相手は(もはや瀕死とはいえ)尾張守護。さすがに織田弾正忠家当主(織田信秀☆お義父様)に報告しなきゃいけないのだけど……その前に三ちゃんと相談。ある程度方針を決めておきたいみたい。
というか、報告をするなら三ちゃんじゃないとね。
「ま、そういうことなら一旦尾張に戻りましょうか」
今の三ちゃんは今川義元さんに付いていって『今川カタカナ目録』とやらを読ませてもらっているらしい。
『今川仮名目録ですね。分国法……つまりは今川の領地でのみ通用する法律です。これを制定したことにより今川家は足利幕府の支配下にある守護大名ではなく、独立した戦国大名になったとされています』
へー。
法律のことを知りたいなら私が未来知識をバンバン注ぎ込んじゃうのにニャー。
『そういうところです』
こういうところらしい。
それはともかく三ちゃんの元へ。どこにいるかは知らないけど、私と三ちゃんの愛の力☆があればどこにいるか分かるのだ!
『天然ストーカー』
解せぬ。
解せぬりながら三ちゃんがいる部屋に向かうと……。部屋の入り口で、中を覗き込んでいる美少女ちゃんが。
あの子は確か……今川義元さんの娘、福ちゃんだ。元々私たちが今川領までやって来るきっかけとなった、病に冒されていた少女。
もちろん私の大☆活☆躍! によって病は完全回復したのだけど――なぁぜか、三ちゃんといい雰囲気になっちゃったのよね。
まぁ、でも、分かるわ。
三ちゃんってイケメンでカッコイイものね。一目惚れするもの分かるというか、当然。むしろ一目惚れしないとか何なのだってお話だ。
『そういうところです』
こういうところらしい。
部屋の中――つまりは部屋の中にいる三ちゃんを見つめる福ちゃんの目はまさしく恋する乙女。
「――分かるわ」
思わず。福ちゃんの肩に手を乗せてしまう私だった。
『また気配遮断して近づいて……。これ、福さんからしたら『急に背後から白髪赤目の山姥が現れた!』ホラーですからね?』
誰が山姥やねん。私の髪は白髪じゃなくて銀髪やっちゅーねん。解せぬ。
「――っ!」
ほぉ、さすがは戦国大名の娘。驚きはしながらも叫びはしなかったわね。
『ただ単に驚きすぎて声も出なかっただけでは?』
プリちゃんのツッコミはスルーである。
「いいわよね、三ちゃん。顔がイケメンでありながらも悪ガキの心を忘れず。笑顔も素敵で。肌もスベスベ。性格は勇猛果敢ながらも優しさを忘れず。ちょっと行動が読めないところがあるけどそこもグッド。いやでももちろん少年時代も魅力的だけど青年となりイケオジになった三ちゃんもグレートよねきっと。絶対。確定的に明らか」
「は、はぁ……?」
三ちゃんの格好良さに同意して感嘆のため息をつく福ちゃんであった。
『ただ単に以下略』
せめてツッコミは最後まで以下略。
「三ちゃんの魅力を理解しているなら是非もないわね……。福ちゃんも三ちゃんのお嫁さんとして認めましょう。――ただし、私が正妻なので、その辺はよろしくね?」
「へ? あ、はぁ……?」
感激のあまり言葉を失う福ちゃんであった。
『少女相手に正妻マウントを取るな、行き遅れ』
解せぬ。
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(なおまだ続刊は出るか分からないので、よろしくお願いします)