第18章プロローグ エンリケと、宣教師・2
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「――あなたは神に出会いましたね?」
確信を込めた目で宣教師の男が問いかけてくる。
普通に考えれば「頭がおかしいのか?」となる場面だ。
いや、エンリケは洗礼を受けたキリスト教徒なので神を信じてはいる。だが、神とははたして目に見えるものなのだろうか? 少なくとも、「神を見た!」と叫ぶ人間がいたらエンリケは『狂人』であると判断するだろう。
だが。
エンリケには心当たりがあった。
人ならざる奇跡を次々と起こす、帰蝶という女。
そして、そんな帰蝶の師匠だという、『天使』にしか見えない少女。
……ちなみに元々の天使は人とは似ても似つかぬ姿形をしていたはずだが、この時代ではずいぶんと人型に近づき、『天使らしい』見た目として絵画に描かれるようになってきていた。
それはともかく。
心当たりがあったエンリケはついつい黙り込んでしまい。そんな彼の様子を見た宣教師は深く頷いた。
「分かります。みだりに神を語ることなど、あってはならぬことですから。その敬虔さがあるからこそ神もあなたの前に姿を現したのでしょう」
まるで『神』との出会いを確信しているかのような宣教師の言葉。ここまで超然とした態度を取られては、エンリケとしても普段の乱雑な態度は身を潜めてしまう。
「……私の名はエンリケ。神父よ、あなたの名を伺っても……?」
エンリケからの問いかけに、宣教師の男は穏やかに微笑んでから、答えた。
「フランシスコ・ザビエルです」
◇
フランシスコ・ザビエル。
日本にキリスト教を伝えた人物として有名だが、当然ながらこの時代のザビエルはそこまで有名ではない。少なくともエンリケは初耳だった。
「ザビエル師。あなたはなぜ私が神に出会ったと――」
「私は『師』などと呼ばれるほどの人間ではありません。どうぞ、ザビエルと」
「……では、ザビエルさん。なぜ私が神に会ったと分かったのですか?」
「エンリケ様から神の残光とでも呼ぶべきものが感じられたからです」
「残光、ですか?」
エンリケにはよく分からなかったが、まぁ帰蝶なら何か発していても不思議ではないなと納得するのだった。
エンリケの得心を読み取ったのか、ザビエルは話を先に進めた。
「日本から来た『アンジェロ』から話を聞き、そして神の残光を身に纏ったエンリケ様との出会い。これこそまさに神の思し召しでありましょう」
「…………」
アンジェロ。
ポルトガルの男性名で、天使という意味も有する名前。まさか本物の天使というわけではないだろうが……。しかし、このザビエルという男ならば本気で本物の『天使です』と言い出してもおかしくはないように思えてしまう。
ザビエルの瞳の奥に光る宗教的狂気を感じ取ったエンリケは、背中に冷や汗を掻いてしまうのだった。
書籍情報③
・ルート変更(予定)
WEB版が織田信長グッドエンドだとすると、書籍版はトゥルーエンドとなります。具体的に言えばWEB版で死ぬ人間が生き残ったり。本願寺の法主とか、尾張守護とか。
まぁ一巻ではそれほどではありませんが、二巻以降は変わってくるかと。
それと、書籍版では豊臣秀吉(木下藤吉郎)が登場する予定です。
……WEB版では出てこないのかって? 正直、帰蝶さんのキャラが濃すぎて秀吉が出てこなくても話が回る回る(おいやめろ)
ただし、二巻以降が出るかどうかは一巻の売り上げ次第なので応援よろしくお願いします。
それと、キャラクターの関係が少しだけ違っています。
例を挙げれば、WEB版でプリちゃんは帰蝶のことを最初『主様』と呼んでいますが、書籍版は少しだけ親密度が上なので最初から『あなた』呼びです。
なおツッコミの辛辣さは変わらない模様。
あとはWEB版の序盤は帰蝶さんが比較的真面目でしたが、書籍版だとほんのりと20%ほどポンコツ度合いが増しています。
特に三ちゃんとの出会いが……こ れ は ひ ど い。
信長の嫁、はじめました①
~ポンコツ魔女の戦国内政伝~
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