やっぱりな
とりあえず実物を作ってから色々考えてみましょうか。
まずは空間収納の中から各種木材や金属を取り出す。木材は風の魔法で切断、角材や板材に。
まずは馬車本体ということで、角材と板材を組み合わせて箱形の車体を作る。これ自体は試作品なのでそこまでこだわらず、テキトーに。
そしてリーフスプリング。いわゆる板バネ。こちらも元いた世界で製作した経験があるのでパパッと作ってしまう。ただ、大量生産は面倒くさい――ごほんごほん、技術の成長を阻害してしまうからね。鍛冶師に任せてしまえばいいでしょう。
『その誤魔化しの下手くそさというかわざとらしい誤魔化しは何とかならないのですか?』
様式美です。
お約束を遵守する生真面目な私は続けて馬車本体と車軸を繋ぐ軸受を作製。
ちなみにイメージだと車体の下に一本の棒――車軸が通っている感じだろうけど、そういうのは実際ほとんどないのでは? 車軸で左右の車輪を繋げてしまうと上手く曲がれなくなってしまうのだ。
車軸はこの時代だと『すべり軸受』か。ほんとはベアリングを使いたいけど。いや広義ではすべり軸受もベアリングなんだけど以下略。
軸受とはベアリングの一種で、車輪と繋がる軸を面で支持して、油や空気などの潤滑被膜を介在させることで摩擦を軽減させるもののことだ。
あとは牛や馬の皮を巻いて滑りをよくしていたこともあったとか。畜産が軌道に乗れば皮も手に入りやすくなるし、試してみてもいいわよね。
まぁとにかく試作。試作だ。木製の原料になるサトウカエデはないので鉄製で。
ちなみに馬車をを正面から見ると車輪が上部に広がるように斜めに傾いているけれど、これは車軸部に掛かる負荷を軽減させる効果があるらしい。
あとは車輪も横から見たときにお皿型にすることで頑丈になるとか何とか。
というわけで試作品完成。車体に甲冑などの重量物を満載し、早速試験開始だ。馬だとへばってしまうのでゴーレムを使い、ひたすらに歩き回らせる。
夏だというのにゴーレムは文句一つも言わずに馬車を引きまくる。人間なら熱中症間違い無しの暑さ&活動量だ。
『そろそろゴーレムも待遇改善を求めてストを起こしそうですね』
それはもうゴーレムの錬成時から何か失敗していないだろうか?
「ふんふん? 車軸は金属で問題なさそうね? まぁすぐ壊れるようでも予備を持って行けばいいだけなんだけど。あとは車体の強度と、車軸にどれだけの頻度で油を差すか――うん?」
なんだか焦げ臭いような?
私が周囲を見渡すと――ぼわぁあ、っと。突然馬車が燃え出した。車軸の辺りから。
『摩擦で燃えましたかね?』
燃えちゃいましたかー。
なんかもう遠い目をするしかない私だった。
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