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19.夫と弟


 三ちゃんの責めは凄かった(意味深)


『あなたが言うとエロい意味にしか聞こえませんね。実際は正座されられてのお説教だったのに』


 人がせっかく意味深な言い方をしているのに!


『正論を並び立てて説教する信長とかとても面白かったですよね。イメージ逸脱しすぎてて』


 まぁ織田信長って理路整然と説教するよりプッツンしてバッサリしそうなイメージあるものね。……追ってきた平手さんが『若様……成長なされて!』と感涙していたのでイメージ通りなのかもしれない。


 ちなみに同じく追ってきた光秀さんは『また何かやらかしたのか帰蝶……』と頭を抱えていた。解せぬ。


 三ちゃんからのお説教はある意味ご褒美だったのでいいとして。私は一度咳払いしてから『浄化(ライニ)』の呪文を唱え、家の中を浄化した。


 百日咳は感染症だからね。幸いにして家族には感染していなかったけど、ここは念のために浄化してしまった方がいいでしょう。特に子供の市助君が危ないし。


 市助君とお母さんにそれぞれポーションを手渡す。


「お父様の病気は感染性のものだったから念のために渡しておくわ。元気だったら無理に飲まなくてもいいから、いつか別の病気で困ったときに使えるよう取っておきなさい」


「うん。ありがとう、ねぇね」


 ねぇね。やっぱりいいわぁ萌えるわぁ。


 私が(自分でも分かるレベルで)頬を緩めていると、なぜか三ちゃんが不機嫌そうな声を上げた。


「なんだ、帰蝶はまた男を落としたのか?」


 人聞きが悪すぎである。こんな彼氏いない歴=年齢だった私を捕まえて。


「……光秀から話は聞いたぞ。光秀だけではなく生駒家宗や今井宗久、小西某まで口説き落としたそうではないか。しかも犬千代やその小童まで……」


 いつ口説き落としたというのか。と、抗議したかった私だけれども。よく考えたら今の状況って憧れの『逆ハーレム』なのでは!? ダメよ私には三ちゃんという人が!


『大部分が既婚者ですが』


 夢くらい見させてください。さすがの私も既婚者は攻略範囲外でござる。


 きちんとお礼を言える偉い市助君の頭を私が撫でていると、三ちゃんが不機嫌そうに刀の鯉口を切り――そうになったので、柄頭を押さえて止めた私である。


「落ち着きなさい三ちゃん。私の弟ってことは、あなたの義弟になるのよ将来的には!」


「……それがどうしたというのだ?」


「分かってないわねぇ。こんな可愛い男の子が弟になるのよ!? 最高のご褒美じゃない!」


「……帰蝶はときどき訳の分からぬことをほざくのぉ」


 なにやら呆れたようにため息をつく三ちゃんだけど、刀から手を離してくれたのでよしとする。



『いえ全然よくないですが。未来の夫から完全に呆れられていますが』



 私と三ちゃんの絆はこの程度で壊れないから平気なのだ。たぶん。きっと。おそらくは。


「…………」


 私と三ちゃんのやり取りを眺めていた市助君は何か思いついたように一度頷き、三ちゃんに顔を向けた。


「ねぇねの夫……にぃに?」


 にぃに。

 (にぃ)に。

 つまり、お兄ちゃん。


「…………、……はっはっはっ、中々面白いことを言うではないかこの小童は」


 嬉しそう。

 それはもう嬉しそうに市助君の頭をがしがしと撫でる三ちゃんだった。



『信長にも弟がいますが、『うつけ』として距離を取られているでしょうしね。しかも、母親が同じ弟・信勝は後継ぎの座を争うライバルですし。実母の愛情も信勝にだけ向けられていたとされていますから。純粋に『弟』として可愛がることのできる市助君は意外と貴重な存在なのでは?』



 三ちゃんの家庭環境、ハードである。母親から愛されないのなら――その分私が愛するしかないわよね!


 市助君の頭を撫でる三ちゃん。

 そんな三ちゃんの頭を撫でる私。


「……何をしているのかおぬしは」


 声こそ不機嫌そうだし顔つきも不機嫌そうだけど。それでも三ちゃんが喜んでいることは分かったので私は存分に彼の頭をなで回したのだった。


 そんな私たちを見て市助君の家族は『なんだこいつら……』って顔をしていたけれど、きっと気のせいだ。気にしなければ気のせいだ。



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