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【2巻 4/15 発売!】信長の嫁、はじめました ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~【1,200万PV】【受賞&書籍化】  作者: 九條葉月
第14章 淀城の戦い・3

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もうやめて、久っちのライフはゼロよ


 なぁんかまた過大評価されている気がする。

 父様の今までのやらかしのせいで私まで『マムシの娘かぁ……』扱いされている気がする。


『大丈夫。行動力はもう道三を超えています』


≪動きの軽い腹黒ほど厄介な者はおらぬな≫


「師匠としてはもうちょっと清廉潔白に生きて欲しいんだけどねぇ」


 なぜか怒濤の三連ツッコミをされてしまった。解せぬ。私ほど清廉で潔白で品行方正、謹厳実直なピュアピーポーはいないというのに。


『ハッ』


≪ハッ≫


「ハッ」


 まさかの三連で鼻を鳴らされてしまった。解せぬ。というか弟子に対して鼻を鳴らさないでくださいよ師匠。


 そんないつものやりとりをしていると、今井宗久さんから魔導具で連絡があった。なんでも私に会いたがっている人がいるみたい。


 最近は一向一揆の勢いも落ちてきたし、飢えで攻城戦どころじゃないだろうからちょっと城を離れても平気でしょう。超勝寺実照さん率いる加賀一向一揆(不思議なことが起こって人数半減)とも秘密裏の和睦は継続中だし。


 というわけで。

 長尾景虎さんと愉快な仲間たちと一緒に堺へと転移した私であった。景虎さんにはちょっと頼みたいことがあるのよね。







「おお! 帰蝶様! お呼び立てしてしまい申し訳ございません!」


「いえ、いいんですよ。それで、会いたい人っていうのは?」


「はい、手前も何かと取引のある御仁でして。三好孫次郎――いえ、筑前守(長慶)様でございます」


「三好、長慶?」


 あらぁ? 未来の天下人? またずいぶんと大物がやって来たじゃない? ふっ、私のあふれ出る人間的魅力が綺羅星がごとき戦国の偉人たちを引き寄せてしまっているようね!


『いい加減にしなさい』


 なぜか叱られてしまったでござる。解せぬ。


「じゃあ、早速会いましょうか」


「そう言っていただけると助かります。松永様も困り果てておりましたからな……」


 あの爆弾正を困らせるとは、三好長慶、中々やるようね……。


『類が友を呼んでしまいましたか』


 私が久っちを困らせまくったみたいな物言い、やめてもらえません?







「いやぁ! 帰蝶様! お噂はかねがね!」


 茶室で私を出迎えてくれたのは……なんというか、めっちゃ目がキラキラした男性だった。


 年はまだ若く、二十代の半ばくらい。いいものを食べているのか恰幅のよい体躯をしていた。少し丸めの顔も相まって、どことなく穏やかそうな雰囲気を醸し出している人だ。


 何より特徴的なのがそのつぶらな瞳。とてもキラキラしている。『三好長慶』の前半生だけ見てもスレて(・・・)しまってもよさそうなものなのに、まるでこの世の中には綺麗なものしかないと主張しているかのような曇りなき眼だ。


 なんとなく、若い頃の豊臣秀吉はこんな目だったのかな、と思わせる人だった。


 つまりは人たらし。

 それも、戦国の梟雄、松永久秀をたらすほどの。


 あ、これはヤバいわ。


 この見た目と人の良さに騙されたら破滅まで一直線。それとは気づかぬうちに嵌められて滅亡してしまうでしょう。


 私が感じる危機感としては、斎藤道三(父様)や、織田信秀(お義父様)と同じくらい。


 まぁつまり、私は今『戦国大名』と対峙しているのだ。


「……あら~、あなたが久っちのご主人様ですか?」


「久っち? ははっ、久秀。なんとも面白い呼ばれ方をしておるではないか! 南蛮の言葉か? これは儂も久っちと呼ぶべきかのぉ?」


「い、いえ、それは……」


 困ったように眉尻を下げる久っちに満足したのか、長慶さんは私に着座を促した。


「いやぁ、いきなりすみませぬ。久秀が惚れた女子(おなご)の娘と聞き、会ってみたいと思ってしまったのですよ」


「あら、私のお母様と、久っちが? それは詳しく聞かないとですね」


「おぉ、それはいいですな。実は儂も詳しい話は聞いたことがないのですよ。久秀、どうじゃ? ここで一つ昔話をするというのは?」


「い、いえ、そう申されましても……」


 だらだらと冷や汗を掻く久っち。そんな彼を見て大変満足な私と長慶さん。


 あら、これ、長慶さんと仲良くなれるのでは?


『……久秀さんの胃に穴が空くから、止めて差し上げなさい』


 乱世の梟雄を(おもんばか)る心優しいプリちゃんであった。




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