15.超高速船旅
――海!
デートの定番!
もうこのまま浜辺で三ちゃんとキャッキャウフフして一日を費やしてもいいんじゃないかな!?
『四日で堺から戻ってくると約束したんですから、さっさと船に乗ってください』
「へーい」
プリちゃんに背中を押されながら(プリちゃんは光の球なので実際押されているわけじゃないけど)宗久さんたちが準備してくれた船に移動。
安宅船(大型軍艦)ほどではないものの、大きな船だった。見た目だけなら弁才船に近いかも。というか時代的には弁才船そのものかご先祖様かな?
本物の安宅船とかいないかなぁと港を見渡してみたけれど、安宅船どころか関船も見当たらなかった。残念無念。
いや、逆に考えよう私。
見つけられないなら作ってしまえばいいと!
『……主様のその無駄な行動力は何なんでしょうね?』
プリちゃんに『アグレッシブで素敵!』と褒められてしまった。照れるぜ。
◇
さすが貿易港だけあって、戦国時代にしては海上交通量が多い。
このままのんびり風待ちしながら船旅をしていたら四日以内に堺まで行って帰ってこられないので、伊勢湾を抜けて太平洋に出た(つまりは周りに船が少なくなった)辺りで私は手を出すことにした。
「はい、みなさん。ちょっと急ぐのでここに腰掛けてください」
アイテムボックスにしまっておいた砂を落とし、ゴーレムを椅子型に錬成する私。光秀さんや可成君はこのあとどんな展開になるのかだいたい予想が付いたのか大人しく椅子に座った。
反応しきれていない平手さんや愉快な仲間たちも可成君が促したことで椅子に座ってくれた。歯を食いしばり、足を踏ん張るようにお願いする。
そして――
「――三ちゃんも椅子に座りましょうねー?」
船の舳先(タイタニックごっこするあの場所)に陣取る三ちゃんに警告するけれど、どうやら聞き入れるつもりはなさそうだ。
「わしはここでいい!」
初めて船に乗った子供のように目を輝かせる三ちゃんだった。ちょっと可愛い――いや三ちゃんは全力で完璧に可愛いわよね。
『ポンコツ魔女……』
やっかましいわ。
時代が時代だし、もしかしたら本当に初めての船旅なのかもね。だとしたら素直に言うことも聞かないかしら? そう考えた私はこれ以上の警告は止めた。
くっくっく、優しいおねーさんの助言を聞かなかったこと、後悔するがいい。
え~っと、まずは身体強化魔法の応用で船体を強化して~、帆柱や帆とかも強化して~、あとは風よけと三ちゃんが海に落っこちないよう結界も張っておきましょうか。
「…………」
瞼を閉じ、周囲の魔力を感じ取る。……ほうほう、あの辺に魔力溜まりがあるから利用して――
「――吹けよ神風! 嵐がごとく!」
ノリと勢いで決めた呪文を叫ぶと、船の背後から突風が吹き荒れた。台風並みの暴風だ。
普通なら転覆してもおかしくはないところ。だけど、そこは魔法でいい感じに何とかした私である。何をどうやったか詳しく説明しろと言われても困るけど。
「ぬわぁあああああぁあっ!?」
急加速に耐えられなかったのか三ちゃんが舳先から船尾に向けて転がっていった。ゴロゴロと。やべぇ、転がっていく織田信長(15歳)とか超面白い。
「な、なんの! 負けるかぁ!」
揺れる船体をものともせず立ち上がり、再び舳先に歩いて行く三ちゃん。超格好いい。舳先までたどり着いて海風を一身に受ける三ちゃん、超格好いい。……まぁ結界魔法でほとんどの風は防いでいるんだけどね。格好いいものは格好いいのだ。
『やはりポンコツ……』
やっかましいわ。