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14.犬に懐かれた



 危ういところで戦国本能寺1548が回避された頃、旅の準備を終えた平手さんたちが戻ってきた。


 ちなみに同行する三ちゃんの愉快な仲間たちだけど、森可成君以外の人の名前は犬千代と勝三郎、新介と左馬允らしい。


 犬千代はたしか前田利家だし、プリちゃんによると勝三郎は池田恒興、新介は毛利新介(良勝)、左馬允は津田盛月のことらしい。


 犬千代は私でも知っているし、毛利新介は桶狭間の戦いで今川義元の首を取った(将来取ることになる)人物、池田恒興も名前くらいは知っているけれど……津田盛月って、誰?





 津田盛月。聞いたこともないのでプリちゃんに解説してもらう。


『信長に仕え始めた時期は不明。尾張統一以前から活躍した武将ですが、柴田勝家の代官を斬り殺して追放。その後は豊臣秀吉に仕えたようですね』


 三ちゃん家臣を追放しすぎでは? 確か前田利家とか林さんとか佐久間さんとかも追放しているよね?


『織田軍の機密情報を知っているであろう人間を殺さずに追放するのですから、優しい方かと』


 優しいのか。怖いな戦国時代。


『しかし、犬千代はまだ信長の小姓になっていないはずですが……まぁ、いいですか』


 とうとうプリちゃんが史実に対するツッコミを放棄してしまった。この前も放棄した気がしないでもない。もっと真面目にやれ歴史的事実。


 人数が増えすぎて生駒家宗さんたちと一緒に乗ってきた舟では収容しきれないので、家宗さんたちには(持たせておいた魔導具で連絡して)そのまま港まで向かってもらい、私たちは別の川舟を用意して港に向かうことになった。



「「「若~! お気を付けて~!」」」



 どこから聞きつけたのか三ちゃんの見送りをする少年たちがいた。


「三ちゃん、あの子たちは?」


「うむ、農家の次男や三男らだな。どうせ親から引き継ぐ農地もないのだし、鍛えて軍団でも作ろうと思っておる。流民を雇うのもいいな」


 お~、桶狭間で活躍したというアレか。いいよねぇ常備軍。兵農分離。軍オタの浪漫だよ。


 ……ここは私も美濃で常備軍を編成するべきでは? これからもお金は順調に稼げそうだし、養うくらいはできるでしょう。


『……そんなもの作ってどうするのですか?』


 え? え~っと……三ちゃんが浮気したら攻め込ませるとか?


『北条政子じゃあるまいし……。そもそも信長はそこまで兵農分離していなかったとか、大規模な常備軍なんてなかったんじゃないかという学説も――』


 そんな夢も浪漫もない学説などいりませぬ。正しいことが正しいとは限らないのだ (哲学)


 いつも通りなやり取りをしつつ舟でのんびり川下りをしていると、なにやら熱い視線を向けられていることに気がついた。いや正確に言えばずっと前から気づいていたけれど、なんだか面倒くさそうな気配がしたので無視していたのに、結局は根負けしたというか……。


「……犬千代さん。何かご用でしょうか?」


「はい! 拙者、感服いたしました!」


 耳がキーンとなるほどの大声だった。この子、背が高いこともあってかなり目を引く美少年(たぶん12歳くらい?)なのだけど……なんだろう? どことなく大型犬っぽい雰囲気を振りまいている。


「えっと、感服とは?」


「はい! 帰蝶様は若様の我が儘を頭ごなしに否定するでもなく、唯々諾々と従うのでもなく、若様を信じ、切腹覚悟で責任を負おうとするとは! あれこそがまさしく『伴侶』のあるべき姿であるかと!」


 やだー、伴侶だなんて照れるー。

 と、ふざけられるほど私の神経は図太くなかった。


 な、なんだか妙な方向に高評価をされているような? 夫がアホな言動をするたびに連帯責任負わされる『伴侶』とかいくつ命があっても足りないと思うわよ? 大丈夫? 犬千代の伴侶になるはずの まつさん、大丈夫?


 私の心配をよそに犬千代君はヒートアップしていく。


「これからは是非『姐御』と呼び慕わせていただきたく!」


「……ん~?」


 私はいつから極道の妻になったのか。いや戦国大名とかある意味で道を極めていそうだけど。


(へ~い、プリちゃん。戦国時代に『姐御』なんて呼び方あったの?)


 あまりにぶっ飛んだ展開にそんな質問をしてしまう私だった。


『……さすがに確かな文献は見つかりませんが……甲陽軍鑑には『信玄の姉御』という記述があったはずですし……いえしかし『姉御』と『姐御』では字も意味合いも違いますか。そもそも信玄の姉御とはそのまま実の姉を指しているはずですし……』


 あかんプリちゃん(ツッコミ役)が長考に入ってしまった。圧倒的なツッコミ不足。

 三ちゃんたち尾張勢は良くも悪くも慣れているのかスルーしているし、光秀さんは状況についていけてない。ここは私がツッコミをしなきゃいけないのだけど……うん、私にツッコミ役は無理だわな。


「――ふっ! 私の弟分になれるまでの道のりは険しいわよ! 犬千代君についてこられるかしら!?」


 私が立ち上がりながらそう煽ってみると、犬千代君は『うおおお! 負けてなるものか!』とばかりにメラメラと瞳を燃やしていた。やだ、この子ちょっと面白いかも。これは私も頑張らなければ。



『……主様の悪ふざけを加速させる人間が登場しましたか……この世界、滅びますね』



 悪ふざけで滅びる世界って何やねん。


 この時期の津田さんはたぶん『織田』を名乗っているんですけど、このあとの尾張統一編で『織田さん』がものすっごくいっぱい出てくる予定なので混乱回避のため『津田盛月』で統一させていただきます。


 信長の配下には登場させたい人材がかなりいるんですけれど、あまりマイナーだと『誰これオリキャラ?』となってしまうジレンマが……。




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[良い点] まつで心配するべきは初産年齢の方だからセーフ(アウト)
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