表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻 4/15 発売!】信長の嫁、はじめました ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~【1,200万PV】【受賞&書籍化】  作者: 九條葉月
第12章 淀城の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

499/820

つまりはすべて蓮淳が悪い


 かなり信仰を得られた感じがするので、ここはトドメ(・・・)を刺しましょうか。


「誰かケガをした人はいませんか?」


 そう問いかけると、逃げたときに転んだ子供や瓦礫で頭をケガした男性を連れてきてくれた。


 いつものように治癒魔法を掛ける。もちろん、いつものようにキラキラ光を発し、いつものようにふわりと髪をなびかせることも忘れない。演出は大事である。


『また人を騙そうとしている……』


 騙してないのに。ケガを治すことは事実だというのに。ただちょっと演出過剰にして、まるで奇跡であるかのように立ち回っているだけなのに。


『そういうところです』


 こういうところらしい。


 心の中で何を考えているかはともかく、治癒魔法はきちんと仕事をしてくれてケガも即座に完治した。


 奇跡を目の当たりにしたおかげか、僧侶たちが私の足元に膝をつき、縋るように手を合わせてくる。


「吉兆様!」

「我らが間違っておりました!」

「吉兆様こそ真なる御仏の使い!」

「法主様すら意のままにせんとする祖父上にどうしてこれ以上従えましょうか!」

「これからは吉兆様の元、懸命に修行に励みましょうぞ!」

「どうぞ我らをお導きください!」


 ふっふっふっ、こうして必死に縋りつかれるとなんだか気分がいいわね?


『屑』


≪鬼畜≫


「悪魔」


 怒濤の三連ツッコミであった。解せぬ。


 さて。信仰をゲットしたのはいいけれど。私はまた大坂に帰って本願寺を監視しないとよね。少なくとも和睦が正式に結ばれるまでは……。となると、伊勢長島に留まって『お導き』するわけにはいかないわけであり……。


 ま、その辺は追々考えていきましょう。

 未来の自分がナイスアイディアを思いつくことを期待しつつ、今はとにかく信仰心を鷲づかみすることが肝要であると判断し、願証寺の皆さんに語りかける。


「皆さんも、本願寺の法主が交代したことはご存じかと思います」


「は、はい。急なことで驚きましたが……。祖父上――蓮淳様が、何かしたのでしょうか?」


 ここで真っ先に名前が出てくる蓮淳さんとやら、生き方を見直すべきなのでは?


『蓮淳も、あなたにだけは言われたくないのでは?』


 解せぬ。


『ちなみに蓮淳はこの願証寺を創建したとされている人物ですし、今の住職は蓮淳の孫である証恵ですから、人となりはよく知っているのでしょう』


 へぇ創建者。本堂とか結構古そうだけど、これを作ったとなるとかなりの高齢なんじゃ?


『今だと85歳くらいですかね』


 85歳って。戦国時代の85歳って。それで本願寺の実質的な権力者に返り咲くとか、化け物か。……いや、真田のユッキーのお兄さんは90代で御家騒動を解決したから、それに比べればマイルドな化け物かしら?


『あなたに比べれば、どんな奸雄梟雄化け物でもマイルドになってしまうのでは?』


 どういうことやねん。


 蓮淳。蓮淳ね。となると、天狗さんや忍びから報告をされた『自分の孫である法主を軟禁し、ひ孫を新たな法主に据えた』という素敵なお爺さんか。


『素敵って……。そもそも名前くらい覚えてくださいよ自分の敵なんですから』


 僧侶の名前とか似たようなのばかりで覚えられんねん。もうちょっとこう、本願寺の本願四世ですとか、願証寺の願証3rdです的な分かり易い名前にしてもらいたいところよね。


『ひっどいネーミングセンス……』


 分かり易くていいと思うのに。解せぬ。


 さて。ならばその蓮淳さんとやらにすべてなすりつけてしまいましょうか。


「実を言いますと……前の法主・証如様はご病気ではなく、蓮淳めに軟禁されているのです!」


「な、なんと!?」

「まことですか!?」

「いやしかし、祖父上なら!」

「何の罪もない本福寺を三度も御勘気(破門)したあの男ならば!」

「山科が焼かれたとき、証如様を見捨てて長島(ここ)まで一人逃げてきたあの男ならば!」

「そのくらいのことはするでしょう!」


 騙そうとしている私が言うのも何だけど、微塵も信じてもらえない蓮淳さんはやはり生き方を見直すべきでは?


『以下略』


 せめてちゃんと突っ込んでください……。


 それはともかく口八丁継続である。


「私は軟禁されている証如様に頼まれました……。本願寺は間違っていたと! 幕府の権力争いに信者を動員したのは我が過ちであったと! 本願寺を建て直し、親鸞聖人の教えを取り戻さなければならないと!」


「おぉ!」

「では!」

「もしや!」


「この長島の地から! 一向宗は生まれ変わるのです!」


「なんと!」

「つまり我らが主流に!」

「こうしてはおれませぬ!」

「すぐに信者を動員しなくては!」


「いいえ! 阿弥陀仏様はこれ以上の犠牲を悲しまれるでしょう! まずは武力ではなく、法論で大坂の力を削ぐのです!」


「我らのことをそこまで案じてくださるとは!」

「なんという御慈悲であるか!」

「偉そうに命じてくる本願寺とはまるで違う!」

「吉兆様こそ我らが信ずるべき御方であったか!」


 わぁわぁと私を称える願証寺の皆さん。ふっふっふっ、めっちゃ気分いいわね! 癖になりそう!


「……なぁんか、簡単に信じすぎじゃない?」


『それだけ蓮淳がやらかしてきて、不満が溜まっているのでしょうね』


≪あとは帰蝶が乗せやすい(・・・・・)と踏んで、よいしょしているだけじゃろう≫


「あぁ……」


『褒められるとすぐ調子に乗りますからね……』


「さすが信者を騙す経験が多いだけあって、そういうのを見抜く能力も高いのか……」


 師匠、プリちゃん、玉龍に呆れられてしまった。解せぬ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ