三ちゃんニウム不足
三ちゃん成分が足りないでござる。
だいたい最近は何なのか。私は三ちゃんとイチャイチャ♡スローライフを送りたいだけなのに、なんで本願寺の生臭坊主や狂信者共とイチャイチャ(意味深)しなければならないのか。どうせなら可愛い男の子と! 愛する人と! イチャイチャしたいんじゃー!
≪なんという俗物≫
解せぬ。
「――わかるわ」
と、私の肩に手を置いたのは長尾景虎さん。え? 分かっちゃうの? 理解しちゃうの越後の龍が?
『……まぁ、上杉謙信は美少年が好きだったという説もありますし……』
あるんかい。美少年が好きすぎでしょう戦国武将。織田信長とか武田信玄とか。ちょっと三ちゃんと会わせるのが不安な私である。だって三ちゃんは世界一の美少年だから!
『ポンコツ嫁……』
解せぬ。
それはともかく。我慢の限界なので一旦尾張に行くことにした私である。ま、本願寺も和睦交渉中の堺に攻め込んでくるようなことはないでしょうし、そんな不義理な奴らにはさすがの師匠もお許し(意味深)をくださるでしょう。
淀城はまだできていないけど、まぁ本願寺がバイパスを掘っても(河童さんに頼んで)埋めてもらえばいいし、新淀川運河を埋めようとしてきたら(河童さんに頼んで)土砂を除去してもらえばいいのだから、問題ないでしょう。まだ淀城はできてないので攻撃はしない感じで。
『また河童をコキ使おうとしている……』
言われるほどコキ使ってなどいないというのに。解せぬ。
解せぬりながらも、とりあえず問題はなさそうなので那古野城へと転移した私であった。あまり大人数で行ってもしょうがないし、三ちゃんへの紹介も兼ねて長尾景虎さんと覚行君を連れて。
もちろん、今度からは遠慮なく呼ぶようにと今井宗久さんに言い含めてから。
◇
「おぉ帰蝶、久しいな。ちょうどいい、魔導具とやらで連絡を取ろうとしたところだったのだ」
突如として室内に現れた私に驚くことなくそんなことを口にした三ちゃんである。ふっふっふっ、さすがは我が夫。肝が据わっているわね。
『肝が据わっているというか、慣れてしまっただけというか……』
プリちゃんのツッコミは都合良く聞こえなかった。不思議なこともあるものだ。
しかし、私に連絡を取ろうとしたとな? 三ちゃんも私に会えなくて寂しかったみたいね! なんという似たもの夫婦! なんというエターナルラブ!
「父上が帰蝶を探していてな」
と、エターナルラブを叩き折りに来る三ちゃんであった。ふふふ、そういうところも大好きよ?
「お義父様が? どうしたの? まさか息子の嫁に横恋慕しちゃったとか? う~んなんと言う禁断の恋。ちょっとドキドキしちゃうわね!」
「……はっはっはっ、帰蝶は冗談が上手いのぉ」
笑いつつも、冗談と言いつつも、私の頬をむぎゅーっと引っ張ってくる三ちゃんであった。ふっ、三ちゃんとイチャイチャしてしまったぜ。
『……砂吐きそう』
古典的な反応をするプリちゃんであった。
「なんでも、上和田砦について相談したいことがあるらしい」
「上和田砦、というと?」
「三河との国境、川の対岸に築いた砦のことよ。北に行けば岡崎城があるし、東に行けば今川の領地へと繋がる」
「ほうほう?」
対岸に築いたってことは、三河攻略のための橋頭堡という意味を持つ。川の対岸に橋頭堡を築ければ兵を安全に渡河させることができるし、侵略の足がかりとなる。さらには兵を休めたり物資を保管しておく拠点ともなるのだ。
たしか今川義元とは密かに接触を図っていて、同盟を結ぼうとしているという話を聞いているのだけど……。まぁ、『同盟を結べるかもしれないから、手加減しよう』という考えでは戦国大名なんてやっていられないのでしょう。むしろ『有利な条件で同盟を結ぶために一発ぶん殴ろう』と考えるのが戦国武将なのだ。
「重要拠点ってことね?」
「うむ。今川義元も放置するはずがないからな。早急に砦の強化をせねばならん。すでに普請(工事)は始まっておるが、時間がないのでな。おそらくは帰蝶の協力を求めるのだろう」
私ならさっさと城を築くことができるし、道を作って見せたからお義父様も私の『力』を知っているはず。協力を求められるのも不思議な展開じゃないか。
う~ん。
私は『力』を利用しようと近づいてくる人間はぶん殴る系美少女なのだけど、まぁお義父様だものね。もはや家族だものね。ここは媚を売っておきましょうか。
というわけで。
私はお義父様がいるという末森城へと転移したのだった。




