閑話 河童は見た
淀川から、旧淀川へのバイパス工事。
新しい川を掘ったときに出る土は、そのまま新淀川への分岐点に捨てられていく。
新しい川と書くと大規模な工事のように思われるが、帰蝶の作った(鍬がまったく通らない)堤防の周りを半周するように地面を掘るだけなので、それほど長距離の掘削工事というわけではない。
自分の土地というわけでもないのに、我が物顔で地面を掘り続ける信者たち。
そんな彼らを、新淀川の堤防から少し顔を出して観察する存在があった。
――緑。
頭の皿。
そして、巌のような筋肉。
淀川に住まう(そして帰蝶のやらかしで超強化された)河童たちであった。
「……なんと。水天宮(帰蝶)様の邪魔立てをするとは……」
「命が惜しくないらしいな」
「あの程度の人員、水天宮様なら瞬時に殲滅させられるだろうに」
「愚かなものよ」
「人間とは愚かよの」
「未だにあのような宗教を信じておるとは……無知蒙昧にもほどがあろう」
「……だが、あれほど愚かな者たちを排除するのに、水天宮様のお手を煩わせるわけにもいくまい」
「では、我らが排除してしまうか」
「水天宮様より賜ったこの肉体であれば、造作もないことよ」
「……しかし、水天宮様から、馬や人間に危害を加えたら殲滅すると警告されておりますが……」
「奴らは水天宮様の敵なのですから、例外なのでは?」
「……一応、確認した方がいいのでは?」
「う、うむ、確認はした方がいいですな」
「じょ、冗談ではなく殲滅されますからな」
「……で、では、儂から水天宮様に問いかけてみよう」
最初に帰蝶と接触した河童が代表となり、帰蝶から受け取った魔導具を使って連絡をしたのだった。




