暇にさせると碌なことをしない
クロスボウと言えばハンドルをぐるぐる回して弦を引く方式が一般的だ。
『そもそもクロスボウ自体が一般的ではありませんが?』
解せぬ。
まぁとにかく、浪漫を求めるならハンドルぐるぐるを追求したいところ。でもなぁ。作るのが手間だし、装填に時間が掛かりすぎなんだよなぁ。
ここは威力ではなく単純さを重視して、クロスボウ本体にあぶみを設置してそれを足で踏み、弦を両手で持って背筋で引く方式で行きましょうか。それなら構造も単純化できるし、難しいのも引き金の絡繰りくらいだし。それも火縄銃のものを応用できるでしょう。
弓部分は弓の職人さんにお願いして。本体は大工さんに頼みましょう。絡繰り部分は……火縄銃の職人に頼むしかないかしら?
清賀さんには鉄砲の量産と大砲製作をお願いしているので、いい感じの職人を武井夕庵さんに紹介してもらうことにした私であった。
◇
クロスボウと大砲の試作品ができるまでちょっと暇を持て余した。
というわけで、三ちゃんの勇姿を絵にして残しましょう。
『また変なことを考え始めた……』
変なことじゃありませーん。大英雄の姿を後世に残すのはこの時代に生きる者の義務なんでーす。
この時代の情報伝達手段はよく知らないけど、こういうときは瓦版をばらまいて洗脳――じゃなくて、三ちゃんの素晴らしさを広く知らしめるべきでしょう。
う~ん、文字だけじゃインパクトがないし、庶民は読めない人も多いだろうからイラストを挿入しないとね。ここは江戸時代の浮世絵っぽい絵柄でやってみましょうか。
ふんふんふ~んと紙に絵を描いていく私。場面としては小豆坂の戦い・三ちゃんと今川義元の一騎打ちシーンだ。ちゃんと玉龍も画面の端に描いてあげましょう。
≪此奴、絵まで描けるのか?≫
『この人、無駄に多才なので……』
無駄とはなんじゃい無駄とは。現在進行形で役に立っているでしょうが。軍オタなら絵も描けて文章も書けるのが当然でしょうが。
『当然じゃないですね』
解せぬ。
まったく、まずは架空戦記小説を読んで多大な影響を受け、それだけじゃ我慢できずにオリジナル超兵器のイラストを描きまくり、それでも満足できずにプラモのセミスクラッチをやり始め、最終的には自分で架空戦記小説を書き始めるのが世間一般的な軍オタの辿る道だというのに。
『そんなトンチキな軍オタはあなただけだと思いますが』
トンチキってなんやねんトンチキって。紺碧〇艦隊は全日本人の義務教育だというのに。解せぬ。
ちなみに、完成した絵の出来はというと…。
『下手』
≪下手≫
解せぬ…。




