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【2巻 4/15 発売!】信長の嫁、はじめました ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~【1,200万PV】【受賞&書籍化】  作者: 九條葉月
第9章 小豆坂の戦い・2

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南無八幡大菩薩


 孫一君や慶次郎君たちは出陣した。孫一君は気づかれないように接近して射撃、慶次郎君は清洲衆が撤退する道に先回りするらしい。


 つまり那古野城に残るのは孫一君が護衛として残していってくれた雑賀衆の人たち(少数)と、私直属の家臣・鳥居半四郎さん。そして八板清賀さんら非戦闘職の人たちだ。


 お? 意外と少ないな? これはもしやプリちゃんの言う落城フラグを回収してしまうのでは?



『いや冗談はともかく。あなた一人いれば世界すら滅ぼせるでしょうが』



 いくら私でも世界は滅ぼさんわ(滅ぼせないとは言っていない)


 そんなやり取りをしていると、清洲城へ続くという道の先から武者集団がやって来た。いかにもな戦国時代の軍勢って感じ。騎馬はごく一部で他は徒歩。500人くらいいるだろうか?


 アレが噂の清洲衆だろうか?


 なんというか、城攻めをするには数が少なすぎでは?


『この時代は本気の城攻めをする場合と、嫌がらせをする場合がありますし』


 嫌がらせ?


『有名なところでは敵の領内の青田刈りをしたり、稲に放火したり。そうすれば敵の収穫量が減って資産が目減りしますし、畑も守ってくれない情けない領主ということで領民の心も離れますから』


 やりたいことは分かるけど……お米様を焼くとは、万死に値するのでは? そう! 私は米と醤油と味噌のために世界を渡った女! お米様を燃やす人間には天罰を!


『戦う動機が酷すぎる』


 食べ物の恨みは酷いというのに。解せぬ。


『あとは城に出入りする人や周囲の村の人々を拉致したり、殺害したり。そうしてじわじわと人的被害を拡大させていたとか。まぁこちらは忍者の仕事ですね』


 やることがえげつない。怖いな戦国時代。


 ……いやでも、城を力攻めするよりはいいわよね。城に入ろうとする商人を何人かアレしちゃえば、もう城と取引しようとする人もいなくなるだろうし。そうすれば城は物を買えずに備蓄した食料でやりくりしなきゃいけなくなるし。


『また腹黒いことを考えてる……』


 こちらの犠牲が少なくなる、とても平和的で慈愛に満ちた考えだというのに。解せぬ。


 なお相手の被害については考慮しておりません。


『そういうところです』


 こういうところらしい。解せぬ。


 首をかしげていると、清洲衆の連中がなにやら大声で喋り始めた。うん、それはまぁいいのだけど、距離があるせいで何を言っているか全然分からん。


『たぶん、言葉戦いですね。言争や詞戦とも呼ばれるもので、合戦前に自軍の正当性や相手の不当を大声で言い争うもので――』


 プリちゃんが解説する中。


 清洲衆が。


 松明を準備し。


 畑に植えられた稲に。


 放火した。


 戦国時代は結構密集させて植えているので、みるみるうちに燃え広がっていく。


 そう、奴らは燃やしたのだ。


 お米様を。


 お米様となるお稲様を。


「――――」


 私が右腕を掲げると、清洲の連中の頭上に暗雲が立ちこめ、天地をひっくり返したかのような雨が降り注いだ。


 稲を焼く火が瞬く間に鎮火する。



「――半四郎さん」



 鳥居半四郎さんに声を掛けると、彼は『委細承知』とばかりに膝を突き、火縄銃を構えた。堺で試作したライフリング火縄銃だ。雨は清洲衆の頭上にしか降っていないので使用に問題はない。


 半四郎さんが祈るように目を閉じる。



「――南無八幡大菩薩。願わくば、かの御方の敵射させてたばせ給へ。これを射損ずる物ならば、刀引き抜き自害して、人に二度面をむかうべからず。我に薬師如来の家臣たる資格あらば、この弾丸、外させ給ふな」



 きらきらと。

 天から光のようなものが半四郎さんに降り注いだ。……おん? 加護きた? 加護られた? 話の流れ的に……八幡大菩薩が?


 この時代だともう武家の神様扱いなはずだし。弓矢八幡と呼ばれるくらいだし。火縄銃も飛び道具という意味では弓矢と一緒だし――命中率と威力に+補正が掛かるのでは?


『ゲームじゃないんですから……』


 呆れるならぽんぽん加護を与えるこの世界の神仏にしてくれません?


 そんな私たちのボケ突っ込みとは対照的に、半四郎さんは真剣そのもの。


 風は微風。

 逆光はなし。

 敵の身を隠すものは、なにもなし。


 距離としては優に200メートルを超えるだろう。従来の(・・・)火縄銃では狙って当てることは不可能なほどの距離だ。


 しかし半四郎さんは躊躇わない。

 半四郎さんは迷わない。


 微風がさらに止んだ一瞬を見極め、引き金を引いた。


 火ばさみが火皿に落ち。点火薬が爆発し。銃身内の火薬に引火。爆発。


 発射された弾丸は螺旋を描きながら発射され――見事見事、騎馬武者のうち一人を射貫いてみせた。





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[一言] おいおいジャクソン二等兵かよ (いいぞもっとやれ)
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