閑話 会合衆
帰蝶の会合衆加入が正式に決まり、帰蝶が経堂から帰ったあと。
会合衆の代表10人は改めて大和川の付け替えについて話し合うことにした。
「いやしかし、とんでもないことになりましたなぁ」
「えぇ、まさか川の付け替えの話を、あのように気軽にするとは……」
「本来なら幕府が主導するような話であるはずなのですが……」
「帰蝶様なら、簡単にやってしまうのでしょうな」
「帰蝶様ですからな」
「もはや何をしても驚けませんな」
「……付け替えの件、堺としても賛成ということでよろしいでしょうか?」
「むしろ反対ができるのですか?」
「帰蝶様の機嫌を損ねることなど、とてもとても……」
「いや、帰蝶様は度量が大きいですからな。正当な理由を説明してお断りすれば大丈夫でしょう」
「それはそうでしょうが……そもそも、断る理由がありますか?」
「大坂にはいずれ水運で負けますからな。堺から京へと繋がる大運河というのは魅力的です」
「しかも、大和川が堺を守る堀になるとなれば、反対する意味はないですな」
「二年前も包囲されて大変な目に遭いましたからなぁ。防衛線が街のすぐ外というのも、そう言われてみれば危ういこと危ういこと」
「まだまだこの辺りは戦乱に巻き込まれそうですし」
「なにより、帰蝶様に任せれば、銭を使わずとも良いというのが素晴らしい」
「いやいや、ここは何かと理由を付けて銭を払わなければ、利権をすべて持って行かれましょう」
「とはいえ、人足など雇わずとも帰蝶様一人で終わらせられるでしょう。いったいどこに銭を使うと?」
「それは……やはり、新たな川の流れで田畑が潰れる人々への補填ですか」
「どれだけの銭が必要になるか見当もつきませんが、帰蝶様に頼ってばかりではいずれ見放されましょう。堺も身銭を切る覚悟を見せませんとな」
「使った銭など、運河ができれば回収できますしな」
「大坂平野における交渉となれば、平野郷(平野環濠)にも話を通しておいた方がいいでしょう」
「村との交渉は覚行殿に任されていますが、いきなり少年が向かっても相手にされるはずもなし。ここは堺と平野からも立場ある人間を出せば果が行く(スムーズに進む)でしょう」
「では、平野への交渉は手前が」
「ならば、覚行殿にはこちらから話を……」
「宿泊先は手前が用意しましょう」
「しかし、交渉前にまずどこに川を通すか決めませんと」
「平野郷が協力してくれるなら、平野の隣を通すように計画しませんとな」
というわけで。
まずはどこに川を付け替えればいいのか調査することで話はまとまった。




