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【2巻 4/15 発売!】信長の嫁、はじめました ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~【1,200万PV】【受賞&書籍化】  作者: 九條葉月
第8章 小豆坂の戦い

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偉業を成し遂げ、英国を救い、人類の歴史を変えた男


 妙ちゃんとの自己紹介も終わり。私はさっそく撰銭屋で使う銭の追加分を作ることにした。


 悪銭が保管してある蔵とは別の蔵に銅鉱石が運び込んであったので、まずはそちらへ。


 この銅鉱石は元々灰吹法で金を取り出すために注文しておいたものだ。


「では、これから銅の精製を行いますが、有毒な悪い『(ガス)』が発生するので避難していてください」


 と、それっぽい嘘をつきつつ蔵から他の人たちを締め出す私であった。銅から金を取り出すところを見られたらヤバそうだし。具体的に言うと今までと同じ値段で銅鉱石が入手できなくなるかも。


 アイテムボックスから灰吹法に必要な材料を取りだし、床に並べる。

 ちょっとずつなら普通にやってもいいのだけど、これだけの銅鉱石があると何時間どころか何日かかるか分かったものではない。


 それに、この前やったことで『感覚』は取り戻した。


 というわけで。

 私は錬金術の究極奥義を使うことにした。


 自分でも忘れがちだけど、私、錬金術士ね。戦闘能力というか破壊力がバカ高いから戦闘職と思われがちだけど。


 錬金術士なら、錬金術士らしいことをしないとね。



「――日輪よ! ご照覧あれ! これぞ錬金術が秘奥義、等価交換(・・・・)なるぞ!」



 錬金術士らしく、両手のひらを打ち鳴らす私。


 すると世界の法則に従って原材料となる銅鉱石や骨灰、鉛が消えて――精銅と金が現れた。


 原材料を昇華(・・)して、過程を吹っ飛ばし、結果となる加工品を現出する! これこそが錬金術の秘奥義・等価交換よ!


『あなたもう錬金術士を名乗るのは止めなさい』


 解せぬ!?


≪錬金術はよく分からぬが……此奴とは違うというのは分かるな≫


 解せぬ!?


『そもそもなんで粗銅ですらない銅鉱石を使っているのに、金を取り出せるのですか?』


 気にするな、私も気にしない。


≪物理法則の超越とか、もはや神の御業に片足突っ込んでおらんか?≫


 私の美貌は神に匹敵すると言いたいらしい。照れるぜ。


『自重しろ』


≪自重しろ≫


 自重しているからポンポン錬金せずに原材料から加工しているのに。解せぬ。







 解せぬお説教をされたあと。私は会合衆の会議に出席するために堺の町中を移動していた。


 と、その道中でエンリケさんに遭遇した。南蛮船の船長で、その正体は人類で初めて世界一周をした(可能性がある)マラッカのエンリケさんだ。元・マゼランの奴隷ね。


「あらエンリケさん、お久しぶりです」


「おう、嬢ちゃんも元気そうで何よりだ。まぁお前さんは殺しても死ななそうだがな」


 ガハハとばかりに笑うエンリケさんだった。私だって殺されたら死ぬわい。……殺せる存在がほとんどいないし、殺されても『しゃきーん』と復活するだけで。もちろん前よりパワーアップのおまけ付きである。


『もはやただの邪神ですね』


 解せぬ。


 解せぬっている間にもエンリケさんが話を進めてしまう。


「船の修理と補給も終わったからな。そろそろお前さんに頼まれた『ごむ』と『こるく』を探しに行こうと思ってな」


 お、とうとうゴムとコルクが手に入る(かもしれない)のね! ゴムが手に入れば防水関係が飛躍的に発展するし、タイヤもできる。そしてコルク! コルクが手に入れば初期のライフル銃に一歩近づけるからね! これは是非手に入れてもらわないと!


「活動資金も必要ですよね!? 餞別代わりにこれをどうぞ!」


 海外に行くのに永楽銭を渡してもしょうがないので金の延べ棒をドカドカと渡す私であった。エンリケさんがドン引きしている気がするけれど、気のせいに違いない。


「お、おう、相変わらず豪勢だな……。そうだ。その懐の広さに期待して、一つ頼まれてはくれないか?」


「と、いいますと?」


「このガキ、預かってはくれねぇか?」


 そう言って自分の背中に隠れていた少年を引っ張り出した。

 エンリケさんの船に潜入し、イギリスから日本まで密航してきた少年だ。デング熱で死にかけていた、将来の夢が『世界一周』な男の子。


「嬢ちゃんのおかげですっかり元気になったが、まだ病み上がりだからな。船に乗せての長旅をさせるのは不安なんだ」


「まぁ、それもそうですよね」


 なにせこの時代の船って不衛生&栄養不足で健康な人すらバンバン死んでいくものね。病み上がりの子供を同行させるのは自殺行為でしかない。


「………」


 少年は不満そうな顔をしているけれど、エンリケさんに文句を言ったりはしない。エンリケさんが自分のことを心配しているからこそだと理解しているでしょうし――未来の海の男として、船長の言うことに従うつもりなのかもね。


 その心意気が気に入った私は快く少年を預かることにしたのだった。




 ちなみに。

 鑑定眼(アプレイゼル)で視た結果。


 少年の名前は、フランシス(・・・・・)ドレイク(・・・・)だった。





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