表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻 4/15 発売!】信長の嫁、はじめました ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~【1,200万PV】【受賞&書籍化】  作者: 九條葉月
第6章 富国強兵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

197/820

安宅船で


 う~む、もっと(安宅船に)大穴が空くかと思ったけど、意外と軽傷ね。やはり船体強化しただけじゃ破壊力が足りなかったか。質量の差は覆せなかったか。


『……なぜぶち抜こうとしているんですか?』


 むこうから向かってきたのだから、喧嘩売ってきたのと同じじゃない?


『脳筋……』


≪そもそも、あっちからすれば『小回りのきく方が避けないのが悪い』のではないか?≫


 解せぬ。


 まぁしかし正面衝突したのは事実。つまりは事故。つまりは示談交渉からの慰謝料請求である。


『戦国時代に当たり屋をやらないでください』


 当たってきたのはむこうです。


 プリちゃんにツッコミ返しをしつつ、軽い足取りで安宅船へと乗り込む私。もちろん三ちゃんたちはここまで身軽じゃないのでお留守番だ。


「なんだ!? 何が起こった!?」

「何かぶつかったみてぇです!」

「座礁か!?」

「船首から水が!」

「早く穴をふさげ!」


 甲板の上は突然の衝突で大わらわだった。やはりこちらの船は見えてなかったらしい。


 と、甲板上の小さな小屋というか櫓から指示を出していた男性が私に気がついた。ビクッと身をこわばらせてから、刀を引き抜いて切っ先をこちらに向ける。


「何だてめぇは!? 船幽霊か!? 妖魔の類いか!?」


 船頭らしい男性の発言に船員たちの視線がこちらに集まる。


 ……なんだか、若い男性ばかりね? いや力仕事なんだから当たり前なんだけど、それにしたって若いというか少年・青年という年齢ばかりというか……。


 いくら乱暴な口調で怒鳴ったところで、少年。百戦錬磨の私の敵ではない。


「あら、ご挨拶ね? こっちは危うく死ぬところだったのに」


「死ぬところ、だと?」


「えぇ。私たちの乗ってきた船に衝突したでしょう? こっちは小舟なんだから、危うく沈没するところよ」


「……こんな夜中に、小舟で海に出たってのか? まだ妖怪や船幽霊の方が信じられるぜ?」


「しょうがないじゃない。夜じゃないと目立っちゃうのだから」


「目立つ……。おいおい、そんな派手な身なりをしているくせに、悪党やっているのかよ」


「悪党じゃないわよ。ちょっと見学しようとしただけで」


「こんな真夜中に、海に出てまで何を見るっていうんだよ?」


「佐治さんって安宅船持っているのでしょう? だから根拠地に忍び込んで見学しようとね。まぁ思わず安宅船に出会えちゃったから、目的は半分くらい達成できたんだけど」


「……見学って。女子供が船を見てどうするってんだよ?」


「分かってないわねぇ。――大っきい船はカッコイイ! カッコイイものを見たいという気持ちに男も女もないのよ!」


 堂々たる私の宣言に、船頭らしき男性は目を丸くした。


「…………、……はははっ! そうかそうか! ならしょうがねぇよな!」


 存分に大笑いしてから男性は刀を鞘に収めた。続けて近くにいた船員たちに声を掛ける。


「おい、おめぇら! どうやら客人らしい! 丁寧にもてなしてやれ! ……まずはぶつかったという船をどうにかしねぇとな」


「か、(かしら)ぁ、こんなどう見ても怪しいヤツを……」


「怪しいが、図太さが気に入った。それに、ここで押し問答している暇はねぇ。そうだろう?」


「そりゃあ、さっさと逃げなきゃならねぇっすけど……」


 逃げる?

 安宅船が? この時代最高の防御力を誇る船が?


 なんだか雲行きが怪しいような。

 私が少しばかり目を細めていると、船頭らしき男性――青年がにやりと黄色い歯を見せた。


「俺は九鬼浄隆(きよたか)。お前さんの名前は?」


「……斎藤帰蝶。美濃の斎藤道三の娘よ」


「…………、あぁ、山姥だとか薬師如来の化身だとかいわれている女か」


 なぜか胡散臭いものを見るような目を向けられてしまった。解せぬ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ