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第一回 腹黒会議


 父様(斎藤道三)が三ちゃん(織田信長)を認めたことで、私と三ちゃんの結婚は決定した。まぁつまり婚約状態なのである。


 しかしまだ濃尾同盟の詳細は決まっておらず、父様も何か悪巧みしているようなので、結婚や婚約の発表は伏せられることになった。


 最終的には、父様とお義父様(織田信秀)が会談して同盟成立という流れになるらしい。美濃のマムシと尾張の虎が直接会談とか大河ドラマで絶対やる名シーンになるじゃん。


 で。

 父様が悪巧みするのはいつものことだけど、お兄様と話し合った結果『情報共有』という概念を生まれて初めて知ったらしく、私とお兄様は父様の私室に呼び出された。


 私と三ちゃんの婚約成立。

 となれば、お約束の『アレ』をしなければならないでしょう。


「…………」


「…………」


 真剣な顔をした父様が私と向き合い、細やかな装飾が施された懐刀を手渡してくる。


「――織田信長はうつけ者との評判である。まことにうつけ者であったならば、この刀で刺せ」


 大河ドラマなどでおなじみのワンシーン。ここで“帰蝶”ならば『承知しました。ですが、この刀で父上を刺すことになるやもしれませぬ」と返すところ。


 しかし帰蝶(わたし)は私である。


 私は恭しく懐刀を受け取り、しゃらぁんと刃を抜き放った。……ふりをした。



「――この距離で武器を手渡すとは! 耄碌したな道三!」



 ズバッと(鞘に収められたままの)懐刀で父様を斬る――ふりをする私。


「な、なにぃい!? この道三が、血を分けた娘に殺られるとはぁ!」


 と、斬られたふりをする父様。


 そんな私たち二人をお兄様は絶対零度の目で見つめていた。


「……何をしておるのです?」


「謀反ごっこ」


 と、私。


「謀反されごっこ」


 と、父様。


「……なるほどただの阿呆共か」


 と、お兄様。ツッコミに容赦がなさ過ぎである。


 ちなみに“運命”的に言うとこれで『道三が子供に謀反され殺される』というフラグを回収したので、後々色々やりやすくなるのである。ちゃんとした理由があるのである。決して、ついさっき思いついたわけではないのである。


「さて親子の微笑ましい交流は一旦置いておくとしてだ」


 ドスンと腰を下ろす父様。我ながら、謀反ごっこは殺伐とした交流すぎである。



「――とりあえず、美濃を統一するか」



 父様の言葉に躊躇なく頷く私とお兄様。


 父様とお兄様は三ちゃんとの敵対ではなく、協力を選んだ。いずれは『正妻』である私の縁戚として、『統一政権』内で権勢を振るうつもりなのでしょう。


 まぁ天下統一したら功臣の粛正がテンプレだけど、父様もお兄様も大人しく粛正されるようなタマ(・・)じゃないし、やり過ぎるようなら私が直々に三ちゃんにデコピンするので安心だ。


 まずはお兄様が切り出した。


「土岐頼芸の家臣から接触がありました。頼芸の息子と認めるので、道三の首を持って馳せ参じろと」


「ふむ、狙い通りか」


 くっくっくっと笑う父様だった。ちなみに『史実』だと首を落とされ鼻を削がれるので狙いは大失敗したのだろうきっと。


「よし、義龍。あとは任せ――たぁっ!?」


 また曖昧な指示を出そうとした父様の脇腹に肘を入れる。そんなテキトーなことを言っているから鼻を削がれてしまうのだ。

 父様はしばらく悶絶してからお兄様と詳細を詰め始めた。


「まず狙うのは東濃か――」


「父上が軍を動かせば、頼芸も背後を突こうとするでしょうから――」


「どれだけ集められるか(・・・・・・)だな――」


「尾張とは同盟を結べますが、まだ敵対関係を演出した方が――」


「大垣城あたりを囲み、しばらく睨み合うか――」


「織田弾正忠との連絡が肝ですな――」


「それなら帰蝶の『転移』とやらで――」


 さらっと巻き込まれてしまった。こんな腹黒に巻き込まれたら私の腹まで黒くなってしまうじゃないか。



『え?』


≪え?≫


 お前の腹は最初から真っ黒だろうとばかりに声を上げるプリちゃんと玉龍(見えないよう透明化)だった。解せぬ。


 この二人とはあとでじっくり話し合いをしなければ。決意しつつ私は自分がやるべきことをする。


「……とりあえず私は、自由に動かせる軍を作りますね」


「…………」


「…………」


『…………』


≪…………≫


 なんだか『コイツに自由にさせたら日本滅びるのでは?』というような目で見つめてくる四人だった。解せぬ。




誤字報告ありがとうございます。報告あり次第訂正するのでよろしくお願いします。

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