表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻 4/15 発売!】信長の嫁、はじめました ~ポンコツ魔女の戦国内政伝~【1,200万PV】【受賞&書籍化】  作者: 九條葉月
第四章 家族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/820

25.戦国時代の馬は(以下略





 ――勝った。


 帰蝶ちゃん大勝利である。


 いやメッチャ踏まれたし噛まれたけど、勝ちは勝ち。なんか途中から馬じゃなくてグリフィン(幻想種:とてもつよい)と戦っている気分になったけど、勝ったのだ。帰蝶ちゃん大勝利である。



『いや負けてませんか? 乙女として、人として』



 解せぬ。



「……まさか素手で勝つとはのぉ……」


「……是非も無し……」


「……さすがは兄上の妻になる女性(にょしょう)……」



 なぜかドン引きするお義父様と三ちゃん、十ちゃんだった。


 そして、


「ぬぅ! なんという見事な腕前! 女性とはとても思えませぬ!」


 酔いつぶれていたはずの柴田勝家さんもいつの間にか観戦していたらしく、感激に(?)身を震わせていた。


「ここはぜひ拙者と手合わせを――、うっぷ、うぐぇえええぇぇえぇぇえっ!」


 庭に向けてリバースする柴田勝家さんだった。これはひどい。



『……ちなみにこの時代の宴会では勧められた酒を断るのは大変な無礼で、逆に、酒を飲み過ぎて嘔吐するのは無礼にならなかったとのことですね。前後不覚になるまで酒を飲むのは、接待してくれた主人に対する敬意と好意を示すことになるのだとか』



 それで吐いちゃ本末転倒である。大丈夫か戦国時代の人?



『その様子を見た宣教師がドン引きしているので、だいぶ手遅れですね』



 手遅れらしい。まぁそうだよね。


 私が呆れ果てていると、散々にボコった――じゃなくて、激しい戦いを繰り広げた白馬がよろよろとした足取りで近づいてきた。


 やはり、デカい。

 日本馬とは思えないほど。


 ちなみによく『日本馬はポニー! 鎧武者を乗せるのは無理! 武田騎馬軍団はなかった!』という珍説を目にするけれど、ちょっと待って欲しい。いや武田騎馬軍団云々は長くなるから置いておくとして、我らが愛しき日本馬の(パワー)を甘く見ないでもらいたい。気性が温順で『ハミ』なしで扱うことができ、粗食に耐え、野草だけで育成できるとすら言われ、丈夫な骨格と蹄を持ち、運動能力が高いため『最高の軍馬』と称されたのが古来日本の在来馬、特に南部馬であり、『糠部駿馬』なんて有力武士がこぞって買い求めたほど。しかも戦国時代には交配も進んで改良されているわけで。荒地を駆け、山を駆け、川を駆け、日々肉体を鍛え上げている馬たちの中から特に優秀なものだけが軍馬となるのだ。鎧武者が乗ったくらいでへばる(・・・)ものかいな。そもそも体高が低いからパワーがないというのが偏見であり、鎌倉時代には大鎧を着込んだ武士(フル武装で40kg弱 + 成人男性の体重)を乗せて戦場を駆け回っていたことは様々な資料から証明されている。というかそうじゃなかったら大鎧があんな『乗馬状態専用』な進化を遂げるはずがないわけで。まぁもしも鎌倉時代の戦や鎧が全部後世の創作だったり鎌倉時代の馬が室町時代までに絶滅したのなら話は別だけどね。よく比較に出されるサラブレッドがF1カーだとしたら日本馬はラリーカーであり、サラブレッドを戦場に出そうものなら胃はボロボロ足はポキポキと――


『はいはい』


 軍オタの主張がたった四文字でぶった切られてしまった。解せぬ。


 ちなみにまだ西洋式の馬術と和式馬術の違い、それに伴う馬への負担の違いも解説していないし、武田騎馬軍団に関しては語り出すと戦国時代の軍制や兵農分離の有無などから説明しなければならないのでとてもとても長くなる。自重した私はとてもとても偉いのだ。


『はいはい』


 軍オタの気遣いが以下略。


 それはともかくとして。あまりにもボロボロな姿に見ていられなくなった私は白馬に回復魔法を掛けてあげた。


『自分でボコって自分で治す……なんというマッチ・ポンプ……』


 やかましいわ。


 痛みが引いていくのが分かるのか、白馬は目を見開いて驚いていた。

 治療の感謝をするように小さく(いなな)いて――



≪――ふん、感謝しよう。異境の女よ≫



 おん?


 念話?


 なんかプリちゃんに喋りかけられたときのように頭の中に声が響いてきた。いやでもプリちゃんはこんな荒っぽい声色してないしなぁ。


 まさかなぁと私が視線を白馬に向けると、白馬は呆れたように鼻を鳴らしてみせた。



≪とぼけた顔をするな。我を倒しておきながら、情けない≫



 …………。


 喋っとるやん。


 なに? 戦国時代の馬って喋れるの? 念話出来るの? そりゃあ前の世界でもドラゴンとかの『幻想種』クラスなら喋れるものもいたけどさ……。人馬一体ってもしかして種族を超えたコミュニケーションを表した言葉だったりするの?


『……まぁ、主様がいるのですし、喋れる馬くらいならいるのでは?』


 私を奇妙奇天烈な存在の代表格みたいな物言いをするのは止めていただきたい。


『実際、奇妙奇天烈さでいえばダントツですし……。馬が喋った程度では太刀打ちできないですよね』


 解せぬ。





『ちなみにローマ帝国第3代皇帝カリグラの愛馬、インキタトゥスは人語を解したとされていますね。カリグラはこの馬を執政官にすると約束していたとか』


 ローマってすげぇ……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ほらギリシャの英雄の馬もしゃべるし(アキレウスのあいつ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ