44.花は日溜まりを欲す
とある市井の噂話。darkの動画を観ながら…
「LUCYのカミキのバンドだって」
「ナデシコってボーカルカッコ良くない?」
「マヤキョウもいいけどナデシコもカッコいいよね」
きゃあきゃあ…
今日のdarkは下北沢でライブ。
先日の神奈川・埼玉遠征の効果で、逆にあっちで出来たファンが下北沢まで遠征して見に来るという現象が勃発。
ただでさえ元々ソールドアウトを連発していた上に更に動員数が増えて客席は満員!小さなライブハウスのキャパギリギリである。
これは単に動員数が増えて「良かったね」だけの話ではない、これからdarkがどこでライブをするか、或いは本数を増やすか、という選択に関わってくる話だ。まさに嬉しい悲鳴である。
開演前に通路で客席を見てPが
「こら俺らすぐもう一回り大きな箱に移るんとちゃう?」
「さとる、さとるが可愛いからじゃない?」
「ん…かも♥」
でも1つだけ引っ掛かっちゃうのが…
「神木が“LUCYのカミキ”呼ばわりされてる事やなっ…ついにホントに“LUCYのカミキ”になってもーた!ホンマはdarkが先やのにぃ!」
ムキーッとハンカチをくわえて引っ張るP。
startして…
♪ねぇもう愛してよ…囚われたいのだろう素直に言ってみなよ…Ah…
「あんがと」
「キャーッ」
MCに入ると神木は
「撫子ちょっといい?」
と言ってきてボーカルマイクをとると、真面目な顔で客席に向いて
「あの、一部“LUCYのカミキがいるバンド”って言われてるみたいだけど、俺が元々所属してたのはこっちだから。“darkのカミキ”がホントです…そこんとこ誤解しないよーに。」
(そんな事わざわざ真面目にゆってもうっ!可愛い!♥)
撫子は胸がきゅんっ!
すると
「わかったーっ」
「早くまた神奈川来てーっ」
「しょっちゅう来て」
これにはメンバー4人共顔を見合わせて破顔。
撫子がマイクをとり
「あんがと。マネージャーに頼んでみるよ!」
wink!きゃあっ!と小さな悲鳴が上がった。
撫子はクラを振り返り、すぐ次の曲に入る!
♪溶けそうな8月の…陽炎が見せた幻見つめ…
――――
(真夜狂に後でありがとうゆっとかないとだな。darkが滑り出しから絶好調なのって先にある程度LUCYでさとるが顔知れてたお陰だし)
そう、LUCYのファン=darkのファン、という現象である。
デビューするなりそのルックスと演奏力であっという間に注目株として台頭したLUCY。
デビューは去年末なのに、半年足らずでもう全国ツアーをファン達から嘱望されている。
(まずお礼を言ったら、後は張り合って一緒に大きくなってやるんだから…)
ランドリーで仕上がりを待ちながら撫子は5分で寝。
30分後、起きて乾燥機の中身を出して洗濯袋に入れていくと…
「あれ、無い?…っ無いー!」
ヒイィ
帰って神木に報告。
「えっ、撫子のパンツが盗まれた?」
コクコクコク
「あたしのパンツだけ無くなってたの!
ドラムの中も確認したけどやっぱり無かったの!」
エグエグ泣いてる撫子。
「ウサギの可愛いやつだったのに~」
「そこ!?」
しょぼん。
「でも狙いはさとるって事だよね?さとるのだと思って犯人は」
濡れた瞳で心配してくる撫子。
「さとるは可愛いからきっとあたし達がいつもあそこに通ってるって突き止めて、行動張ってあたしが居眠りした隙にパンツ盗んでったって事でしょ?」
ウルウル
「どうしようさとる、一人歩きの時は気をつけて…」
「撫子…俺なら返り討ち出来るから大丈夫。それより撫子も気をつけてね?一応…」
(まさかだけど撫子が女だって気付いたストーカーが犯人とか?まさかな…)
神木の心に一点の黒い不安が染みのように落ちた。
「兎に角撫子はもうランドリーで居眠りは禁止ね?」
「うん、ごめんねさとる」
しゅんとしてる撫子の背中。
(あくまで俺狙いだと信じ込んでるけど、ただの偶発的な泥棒ならいいけど、でも撫子のパンツ盗むなんて許せない。今頃盗んだパンツで犯人は…許すまじ)
ゴゴゴと感情が高ぶったがハァとため息でニュートラルに戻して神木は撫子の背中にピト。
「?さとる?」
「ん、すごい今くっつきたくて…」
「!」
撫子は振り向いて神木をムギュ!
「不安だよね、あたしがさとるを守るから安心してねっ…!」
「ん…」
(本当に俺狙いで脳内オカズが俺でありますように)
撫子の言う“不安”と神木の不安は中身が違かった――――
後日、映画館デート帰りに電車に乗る際、神木は女性専用車両に駅員により押し込まれ、撫子は1人男性用車両に…スシ詰めに押し込まれた!
(いてて、ま…大丈夫だよね?あたしが女だって皆知らないわけだし)
ところが。
ガタン!ムニュッ。
(!)
誰かの手が尻に当たったが、
(仕方ないよねこれじゃ、偶然だよね)
が!また、ムニュッ。
「!」
(気のせい!?お尻触られてない!?)
ムニュムニュ
「!!っ」
(さわってるゥゥ!!!)
ひぃぃ!バッ!
後ろを振り向くと灰色のフーディを目深に被った人物!だが覗く口元は鮮やかな赤に白い肌…
(えっ…)
その人物はニヤ、と小さく口元で笑むとススス、と後ろの人の間に潜っていき、いなくなった…
ドキンドキンドキン
(やだ…痴漢…っ!!)
電車から降りて合流した神木に報告すると、神木は眉根を寄せて
「オカマなんじゃないの?」
「オカマのファンに狙われてるって事!?」
ひぃぃ!
「俺だけじゃない撫子も狙われてるのかも…
撫子は倒錯系で男のそうゆうファンも多いでしょ?最近急激にファンの数が増えて変なのに目を付けられたとか…気をつけてね?くれぐれも女ってバレないように」
「う、うん」
コクコク
ピンキーのライブを観に行った。
ピンキーは今、ずっとツーマンをしてきたdarkが抜けてしまい、ライブハウスのイベントを渡り歩いている。
ライブ後に合流してマックでスパチキとポテトを囲みながら、
「何ですって撫子が痴漢に!?」
「それにパンツて!」
「撫子のパンツ、くれるなら俺も欲しいよね…っ♥撫子、今度一枚俺にくれない?」
「ずっこ!俺も!オカズにするっ」
「ばっバカ、やるわきゃねーだろ!」
神木の目が光った。
「綾女恋、もし撫子の私物盗んだら…分かるよね?」
ゴゴゴ…パキポキ。
「ちぇっ神木おっかな」
「でも撫子、俺はいつでもオッケーだから男のアレが欲しくなったらいつでもTELしてきて…すぐ飛んでくから…っ」
ファサ。
「そう、神木もね!」
まだ神木が男だと知らないピンキー男3人。
「バカ、俺達は間に合ってるよ」
カアア。
「アホ、神木と撫子は将来パートナーシップ制度で結婚すんねから諦め!」
自分で言っといてむせび泣くリュージ。キキは
「Pあんた一番そばにいるんだからちゃんと撫子を守ってよ?」
「わーっとる、任しんしゃい♪」
軽い返事に神木が息をつく。
「あんま張り切られると逆にボロが出ないか心配」
「何ですと!?信用してーっ俺は守りたいんやあぁ!」
「やかましい。」
クラの真似をして神木がべし!
「あたっ何すんの!」
そこで撫子はふと浮かんだ疑問を口にした。
「そーいえば何で俺が女ってバレたの?リュージが胸触った時もバレなかったのに」
ギクッと固まる3人。恋が神木を窺いながら
「寝てる撫子に…して気付いてしまいました」
綾女がフォロー
「ちょっと触っただけ♥」
察する神木、撫子も赤面!
「てめーら…パンツ盗むどころじゃねェな…」
神木の殺気オーラ!
「ひえぇごめんなさいパンチしないでっ」
「しねえよ。ったく」
バイバイの後、下北沢のアパートにキキを送ったP。
部屋で…いつものようにガスランプをつけたキキを抱きしめて腰を下ろす。
耳にちゅっ。
「でもホンマ最近よう頑張ってんなァキキ」
「ん、当然よあたしは有名になりたいんだから」
ピンキーのリーダーであるキキは新しいピンキーの生息地を求めて渡り歩く…
「クスッ頑張ってる姿もエエで♥」
ぎゅっ。
「っ、darkも先に行っちゃって、ここでへこたれてなんからんないわ」
「そゆトコ♥
やけど無理はアカンからな?辛い時は俺を呼び?夜中だろうと朝方だろうと来たるからな、いくらでも話聞いたるから」
後ろから首筋にキスされて
「ん…っ」
振り向いてキスをする。
大きな瞳でじっとPを見つめ、
「Pがいてくれるならあたし頑張れるわ」
「そうか?(笑)」
キスが深度を増し、そっと崩れ落ち…キキの肩を脱がし…た所でPがピョコ!と頭を上げた。
「そや!ピンキーもスカウト待ちなんてもうやめてレコード会社に送ったらどや?」
「!やっぱそう思う?」
「うん♥」
ニパッとスマイル♥
「やっぱそうよね!実はあたしもそう思ってたのよ!」
「おわ!?」
Pをはねのけて猛烈な勢いでメールしだすキキ。
「何のメールやっ」
「あいつらに今後の予定を通達するのよ!」
「Hの後でよくない?」
「駄目!決めるとこ決めないとヤれない!」
わーんっと泣くP
「おあずけ食らってもぉたーっ!
言わなきゃよかった!早く終わらしてっ!」
「うっさいバカ!」
登場曲1コ目は「love prison」(仮題)、2コ目は「summer princess」(仮題)、そのうちSongs forSUPICAstoriesに出すので気長~~~…にお待ち下さいね♪サマプリは超超ド級の難産曲で、着想は去年の7月なんですよね、いつか、気長に笑。




