39.愛を受け花は匂い立ち
神木はギグで知り合った仲間との遊びの帰り、メンバーの一人に付き合わされて残る。そして彼は神木に向き合い…
「神木、俺神木のこと好きなんだけど…」
神木は息をついてまばたきする。
「ごめん、俺ナデシコと付き合っててあいつ以外愛せない」
きっぱり言い切られ、
「そう、だよな、ごめん知ってるけどワンチャンねぇかなーなんて」
「諦めろ。」
無理に作って笑う彼の肩に拳を押し付けて笑む神木。
小悪魔・神木(実は♂)は去年からこれまで…
(はぁ、これで10人目か。メモリアル…じゃなくて、フるのも結構疲れんだよな、傷付けないように気を遣わないとだし。それになんか告ってきそうな奴はもう分かってるし)
はぁ…またため息してアパートに帰宅。
だがそこは愛しの恋人との愛の巣で――――
「おかえりー!」
パタパタと玄関にお出迎えして撫子は
「おかえりのハグ♥」
神木をムギュ。
「っ、撫子…」
恋人の温もりに表情を和らげる神木は今日の報告
「…今日また告られた。」
撫子は少し体を離して気遣うように神木を覗き込む。
「…撫子はよく告られてたけど、結構大変だったんだな」
撫子は微笑んで、
「でも嬉しかったよ?“あたしで良ければ!”ってイケメン磨きの支えになったし」
「それ実は頑張って身に付けた仮面のくせに」
神木が眉を下げると
「でもそのお陰が今のあたしだし♥それに貰えるクッキーいつもおいしかったし♥」
「もう、イケメンの台詞がそれなの?」
撫子はニシシと八重歯をチラ見せ。
寝る前の団欒時に撫子がホゥ、として
「来週柏だね」
「ん、…緊張してる?」
神木が撫子を優しく振り返った。
来週二人の休みが合わせられたので柏の実家に二人で交際と婚約の許しを得に行くことにしたのだ。
「う、ちょっとね、お母さんはともかくお父さんの反応が心配」
「うちは多分…撫子なら喜んでくれると思う」
言って神木は撫子に寄りかかる。撫子の肩に頭をスリ、として
「こんないい女他にいないから」
「さ、さとる」
(キャアアあのさとるがそんな台詞!)
付き合う前はクールで少し素っ気なかった神木。瞳を潤ませた撫子の太ももに手を置いて、勝ち気な眼差しを向けてきて…
「ん…あっ」
(さとるの為に磨きかけたこの身体を愛して貰えて嬉しい♥)
ちゅ
「っでも」
「ん、」
ちゅ
「っやっぱり胸があった方がいい?」
きゅう、として潤んだ目で見上げると神木は即答で
「この身体が愛しいんだから胸なんて無くてもいいよ、撫子なら何でも愛しいし、そのままですごく可愛いよ」
愛撫出来ない胸に小さく微かにキス。
「っ、さとる…っ!」
(そんな甘い台詞…!)
甘くフルフルしちゃう撫子を、ピンクの可愛い野獣は優しくなでて…
事後、恋人繋ぎして脚を絡めて休みながら、撫子がつい本音を漏らす
「分かってるけど胸も愛撫して欲しい」
きゅう、と見つめる。
神木の瞳がチカリと輝いて、
「撫子…俺もホントはしたいよ、けど俺達の為に我慢してる……いつかは…愛しまくってやるって思いながら」
空いてる手で鎖骨をなぞられ、さっきあれだけ達したのにまたジュワァと撫子の身体中を甘い微弱電流がかけて
「うん…」
見つめ合って、また、キス――――
丁度その頃、狂と菫も絡み合っていた――
「ハァ、ハァ、あっ…!」
「もっと感じろよ、菫――」
激しく穿ってくる狂に乱されて菫は
(…っあたし絶対この人がいい―――!)
…終わって。
「やべー超気持ち良かった。今までのどのセックスより気持ちいい。好きな女とヤるのってこんなに感じんだな」
菫を抱きしめて嬉しそうなやんちゃな笑みで髪を優しく指ですいて頭をなでてくる狂の腕の中で菫はまだ身体の熱が引かないのを感じながらもぞもぞ狂に身を押し付け、
「あたしもこんなに感じたのあんたが初めて。だからちゃんと責任とってよね」
見上げて上気した瞳で少しだけねめつけ。
狂は嬉しそうに熱い目をし
「運命なんだな、お前が俺の最後の女になれよ…」
抱きしめられて、抱き合って…また濃厚キスが始まって我慢出来ずに絡む脚…――――
翌日、帰宅後の撫子に菫から電話がきて、
「おねえ♥どしたの?」
『撫子…重っっ要な事言うから耳の穴かっぽじってよく聞いて』
「?うん」
『あのね』
将来狂がおにいになるかもしれないから。
・・・
一瞬間があいた撫子が我に返り
「えぇー!?」
『こないだ突然うち来て告られてキスされて』
「何それ!」
『アド交換したら真面目に毎日電話して甘い言葉囁いてくるから』
「はぁ!?」
『ヤッたら、“あたしもこの人がいい!”って強く感じちゃったの』
「何それ!!」
(あたしがキスされたのついこないだなのに!あ、でももうひと月か)
聞こえてた神木は内心ほくそ笑む
(ハーレムが1人減った)
ドキンドキン
(でも狂がおにいになるって事は真夜もおにいになるって事で…家族になったら一生一緒にいれる…)
という事で!撫子も上月家に遊びに行くことになり…
上月の家は江戸川区の町工場。神木のニケツで行くとノリノリの真夜が
「親父!女連れてきた!」
すると渋くてノリのいい感じの父が出てきて
「おぅ、やっと連れてきたか、おめーいつまでも遊んでんじゃねーよってな」
だが真夜は屈託なく笑って
「こないだ言ってたヤツ。将来結婚すっかもしんね」
ッパン!神木が真夜を軽くはたいた。
「お・前・は・よ!」
「ほぉー可愛いねェ」
無精髭をなでながら神木を見て笑顔の父に真夜は
「だろ?」
そう言ってグイッと撫子の肩を抱き!
「ちょっ、」
「あ?」
「これナデシコ。超いい女だろ?」
父の目が点になった。
「おめー女に遊び飽きて男に鞍替えか!確かに美人だがよ!」
「ハッ(笑)嘘だよ、こいつ菫の弟」
お腹を押さえてウケる真夜。
中で作業中の狂の所に行くと、
「てめェ張り切ってんじゃねーよコラ」
真夜に向け口を尖らす。
撫子は狂を真剣に見つめた。
「狂、菫を泣かせんなよ?」
狂は余裕で真っ直ぐ見返してきて
「これから孕ませに通ってやんぜ」
唇の片端を軽く上げ僅かにしゃくる。
(う、かっこい…)
かっこよさで負けないよう撫子もイケメン顔で頭を傾ける
「じゃあ宜しく」
「こいつちゃんと好きな女抱いたの初めてなんだぜ」
「うっせおめーもだろ!」
「俺らモテるようでモテないからね♪」
(それって本命にはって事?)
真夜が狂の頭を軽くくしゃ、として離れる。
神木が真夜を追いかけ従業員の作業を見学しだす。その人と会話して真夜は神木の頭をなでて撫子を振り返って笑いかける。
「あいつあの顔好きな女にしか向けないぜ?」
「えっ?」
ドキ。
狂は手元に目を戻し
「今までそんな女2人しかいない」
「あ…2人いたんだ」
ドクンドクン。なんとなく意気消沈するがバレないように。
(でも…好きな女とはシたこと無いって、なんか可哀想)
流し目で真夜を見てしまった撫子に狂が面倒そうに
「下手な同情はまた隙を生むぜ?」
「!」
狂は端正な顔で澄まして部品を見ているが、
「…やっぱ狂っていい人(笑)助言ありがと。気をつける」
撫子がフ、と微笑むとすかした顔のままプイとするから。
(クス、可愛い。ほんと憎めない)
外でタバコを吸いながら言う真夜
「俺らいつかここ継ぐからさー…LUCYはそのうち辞めんだ」
「えっ」
衝撃発言。
「従業員5人の小っせートコだけど俺と狂にとっちゃ城だ。バンドは若いうちだけの腰掛けなんだよ」
ふー…ケムリを吐く。突然の告白に撫子はショックを隠せず
「そんな、せっかく軌道に乗り始めてるのに?」
「今LUCYが先に大きくなってるけど、dark orangeならきっと追い付けるよ。
いつか辞める俺らが神木をもっと高くまで押し上げられたらって思ってるよ。神木は俺らと違って一生音楽続ける気なんだろ?」
コク、と頷く神木は既にこの事を聞いていたのか驚かずに
「ありがと…」
真夜はくしゃ、と神木の頭をなでる。
「一生応援すっからな。お前らdark orangeのこと。どこまでも上がってけよ?」
「真夜…」
撫子もぐっときて、少しだけ泣きそうな顔をしてしまう。
「ま、まだ先の事だ」
ニコ、と真夜は柔らかく笑った。神木が撫子の手をとり指を絡めた。
「撫子、俺も頑張るからこれからも頼むよ?」
「…っうん、」
ごし、と目尻をこすり、
「まずはデビューしなきゃな!」
イケメン顔!
くしゃ、真夜が頭をなで、神木が肩を合わせた――
後日二人で柏の神宮寺家に行くと玄関で母は
「あらぁ~どうして2人一緒なの?」
(わざとらしい!!)
赤面して小さくなる撫子
「あの…ね、お母さん、あたし達報告する事があって…」
もじもじ。
神木が撫子をチラと見て撫子の手を握った。
「さとる、」
神木は頷いて撫子母に向き直り、
「おばさん、俺達8月から付き合ってて…今まで黙っててごめん」
「まあ!ほんと!?」
「お母さんわざとらしい!」
「フフ、まぁ上がって♪」
「?」
久々の実家になんだかんだポヨ、としてリビングに入ると
「!!お母さんこれっ」
赤面パクパク。
壁になんと!あの雑誌10月号のカップル写真コーナーの拡大コピーが貼ってある!!
「よく撮れてるわよね、さすが自慢のイケメンだわ♪」
「じゃなくて!知ってたの!?」
「ごっめーん(笑)リナちゃんが雑誌見つけて教えてくれて3冊も買ったのよ~」
(じゃあリナもグルかよ!)
※真咲リナは撫子の親友で、今は実家の小さな食堂でお手製のメイド服で給仕をし、オムライスが出るとケチャップで顔を書きながら調理師の勉強中の、パッツン金髪ストパーロングで細身の美人、である――
「で、間違いは犯したの?」
「何ちゅう事聞くの!?」
カアア!
だが神木はスカしたままコク。
「でかしたさとる!それでこそ男よ!」
キャアッとはしゃぐ母を神木は綺麗な瞳で真っ直ぐ見て
「それで…大事な報告があって、許して貰いに来たんです」
「あら♥何を?」
(はうぅわざとらしい)
赤面両手顔隠しの撫子、期待でキラキラの目の母に神木はスゥ、と息を吸い込んで
「…俺達の婚約を許して下さい。」
と、いう事で。
メールを受け寄り道せず会社から直帰の父!真っ直ぐリビングに入るなり
「撫子と結婚したいならまずこの父を倒してからにしてくれ!」
「お父さん!?」
――が。スクッと立った神木、迷わず…
パパン!パン、パァン!ぐいっ!どさ…父を必殺の中段で攻め、素早く合気道の技で後ろ手にねじり上げてうつ伏せに組み伏せた!まさに秒殺!
「分かったギブギブ!ゆってみたかっただけっ」
バンバン床を叩いて解放される父。
神木は小さくハァ、と息をついて正座し、
「これでいいですか…」
「オッケ」
涙目で親指を立てて頷く父。
「いやーこんな強いなら安心だな」
産まれた時から知っている隣家の子の成長に感じいる父に菫が
「安心てどっち?」
「どっちもだ」
※撫子も守れるしさとる自身も痴漢から身を守れる、の事。
「じゃ、じゃあお決まりだが一緒に風呂に…」
ドギマギ恥じらう父に撫子が釘刺し
「お父さんさとるは男だからね!」
「いやー見かけで緊張しちまうなー」
「♥」
黒革ジャケ、黒ミニスカ、黒紫ボーダータイツにメイクの神木は可愛くしなを作ってみせた。
チャプ…湯船の中キツキツで向き合い、
「あー…さとる、撫子はどうだ?」
「はい、すごく可愛いし…あの感度も良くていい女ッスね」
ぶー!横を向き吹き出す父。
(面白…父娘で同じ反応)
「ごほ、けどさとると一緒の風呂は幼稚園の時撫子と一緒に入れてやって以来か、覚えてる?」
神木は伏し目にして睫毛を震わせ
「…思えばあの時から撫子を女としてはっきり意識し始めたのかもしれない、撫子の裸にドキドキした…今も覚えてる…」
(さとるってそんなマセてたの?)
「さとる、どうして撫子を好きなのか聞いていいか?」
…コク。
「…いつも…明るく笑ってて、嘘が下手で嘘つけないから嘘つかないのとか、意外と女らしいくせに俺の前でしか本性出さないで強がってるとことか…俺のこといつもキラキラの目で見てきて、可愛くて…でもカッコ良くて…不器用なとこも、守りたくてしょうがなかった。
ほんとはずっと一人占めしたかった、閉じ込めてしまいたいくらいに」
「…、撫子もずっとさとるを好きでな…同棲なんてしたらいつか必ず、って…」
目頭を押さえる撫子父を神木は熱い目で見つめ、
「…“お父さん”って呼んでいいですか?」
湯温で上気した白い滑らか肌とフワフワピンク髪の色香に赤面してむせる父!
「いいけどさ、さとる、美少女過ぎ」
神木は瞳に勝ち気な色をチラリと浮かべはにかんだ。
その頭の中には――
――「じゃあ赤ちゃんの役はさとるね」
僅かにムッとした神木を見て撫子は
「それじゃいつもおんなしだから今日はあたしが赤ちゃんになるっ!」
「えー撫子ちゃん一番おっきいのにー」
「でも赤ちゃんやりたい!」
そして神木を振り向いて、パアアと笑顔を見せて、
「だからさとるはパパになれ!」
幼稚園中年の時のクラスでのおままごとの記憶――――




