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ゼンキンセンLOVE  作者: スピカ
love school
32/195

32.その花の香りはいけない誘惑

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 LUCYはデビューシングル(デジタル)の録音を済ませ、後は配信開始へのカウントダウン。

 各方面の反応も上々らしく、撫子はちょっぴり切ないも誇らしくてくすぐったい気持ちで胸がいっぱい。



 今夜も神木はギグ。


(また一人の夜…そうだ!)

「お握りとか届ける?」


 ドキドキ。撫子のキラキラ乙女の瞳に神木はフワッと笑って

「うん、ありがと」

 ライブが終わる時間に裏口に届けに行くことに。



 ウキウキで作って、膨らむ気持ちと一緒に待ち合わせ場所へ。


 だが時間が過ぎてもこない神木。

 急な雨でずぶ濡れになりながらお握りを抱いて守る…

(さとる…)


 俯いて雨にひたすら打たれ…ため息をついて諦めて去った。


 そこに入れ替わりでやっと抜け出した神木が走ってきた!

(撫子っ)

 期待で輝いていた神木の顔は雨を見て輝きを失う。


(撫子?撫子!)

 撫子の姿は無いが辺りを走って探す。

 濡れた神木…

(帰った…よな)

 ザアア。雨が容赦無く神木を打った。



(会えなかった。クスン、でもさとるの為に我慢しなきゃ)

 帰り道で聞こえたジングルベルがむなしかった。

 アパートに帰り、シャワーして、一人お握りを食べてると真夜の電話。


『一人?寂しい思いしてない?(笑)行ってあげようか?』

「ううんいいっ」

 Pの時を思い出し断ると。

『残念だな…ねぇ外見て』

「?」


 ガラ。窓を開けると。

「撫子!」

 ドキ!

「えっ何で!?」

 真夜は雨上がりの空を指さして

「撫子へのプレゼント♪」

「へっ?」

「あの星空、お前にやるよ」

 指鉄砲でしゃくったイケメンウィンク。


(はっ、恥ずかしい台詞!!)

 目を丸くした撫子に真夜はフッと微笑んで。

「心配して撫子の事考えてたらいつの間にか来ちまってた」

(いやいやいや無意識で来れる訳無いっしょ!)


 でも。

 ガチャン。ドキドキ…

「どうぞ」

(真夜は大事なメンバーだし)

 思い直して迎え入れると真夜は撫子の頬の髪をツ、となでて

「ごめんね、緊張しなくていいよ」

「う、うん」

 カアア。

(真夜って行動と言動が違くない?)

 トクントクン


 撫子がコーヒーを入れてくると、お握りを食ってる真夜。

「あ!それ俺の食べかけ!」

 指をペロ。

「うまかった」

(もぅ~子供みたいな顔して。でも褒めてくれて嬉しい)

「~~お握りにはコーヒーより茶っすよね」

「いいよ」

 コーヒーを受け取って飲み、

「神木に会えなかったの?」

 ドキ。

「ほんとは神木に持ってったけど会えなくてそのまま持って帰って来ちゃったんでしょ?」


 …コク。

「ま、そんな事もあるって」


 慰めるように笑ってくれて。

「そっすよね、エヘヘ」

 撫子も少し無理に笑って隣に座ったのをじっと見て、

「…撫子、寂しい?」

 急にアンニュイに聞かれ、

「うん」

 コク、と素直に頷くと。

「そう…」

 と言って真夜は眉間をちょっと寄せて。

(えっ…え!?ちょっ)

 ズイ、と迫る真夜。


「俺ならたとえどんなに忙しくても恋人にこんな寂しい思いはさせない」

 射抜くような瞳で見つめられて

「…っ」

 ドキドキ。小さな小鳥みたいに居竦(いすく)まる撫子、それを肯定とみなした真夜が撫子を静かにサラリと押し倒す。

 真夜は上から撫子の頬に指を絡めた。


「試してみない?」

 熱い眼差しで射抜かれ…


「今夜は俺のもんになんな…全部忘れさせてやるから…寂しさも、足りなさも、全部…」


 温かい真夜の声で優しくそんな事を言われて、撫子の脳みそは一気に処理量を超える。

 ドキンドキンドキン

 す、と真夜が首を傾けて

「っ!」

 唇が重なる。

「――――…」

 真夜が角度を変えて深く口付けてくる…

 身体を微かな電流が走るみたいに…


「…っふ……っ…」

 甘い痺れに犯される。真夜のぬくもりと熱い眼差しをもっと欲しくなってしまう…


「撫子は神木のだから我慢してたけど…撫子が神木より俺がいいなら…俺は構わず撫子を奪うよ」

「っ!」

 クンドクンドクン

(どうしよ、力、抜けて…)

「撫子…」

 また唇を重ねられ

「…っ…」


(―――――変だよ、なんで抵抗出来ないの?でも力が入んない…っ)


 されるまま頼りなく真夜を見上げてしまう。真夜に染み付いてるセブンスターライトの微かな匂い…

「、…」

 ちゅ、ちゅ…

 重なって上から優しいキスで縛られて…


(駄目って分かってるのに動けない…っ)


 真夜に抱きしめられる。

「全部忘れちまいな…俺で満たされな…」

 頭をなでてまたキスされて…


(駄目って分かってるのに…真夜…っ)

 ドクンドクン…

 真夜の手が身体をなぞっていくにつれて体がとろけていく。

 撫子の頭の中では警鐘が鳴り止まないが、なぜか止められない。


「…ァ…っ!」

 お腹の奥がキュン、として身体中とろけたまま、撫子は真夜の胸をぐ、と力が入らない手で押した。


 真夜が身を起こして撫子を見つめた。

「…真夜………もうやめて…?」

 撫子の目尻に涙がスゥッと零れた。


 真夜はス、と離れてくれ、片膝に腕をかけて髪をグシャリとした。

「撫子は俺が好きになってると思ってた…違う?」

 静かに尋ねられ。真夜の真っ直ぐな視線。

「…、」

 フルフル、と起きられないまま撫子が小さく首を振る。

「真夜も好きだけどさとるはもっと大事。真夜は友達」

 そう言って袖で目を隠した。

「…っ」

 唇を噛んで肩を震わす。

 それを見て真夜は

「…ごめん、さっきのは忘れて。…帰るよ」

 カチャ、パタン…


 鉄階段の音、バイクを出す音を撫子はそのまま聞いていた。


(あたしのバカ…!!)

「――――…っく」


 起き上がる気力も無い。

 後悔ばかりが広がって。涙の海に飲まれる。


(さとる…ごめん、ごめん…)

 でもいくら涙が流れても、真夜の唇の感触がまだはっきり残ってて…きつく唇を噛む。


(真夜のことは好き…でも真夜はただの友達)

 ――――――




 真夜は神木を出待ちし…

 出てきた神木が一瞬目を大きくすると、真顔で顎をしゃくる。

「ちょっとこい」



 近くの空き地で、いきなり真夜は神木を殴った。

「――!?」


「何も抵抗しなかったよ?」


 真顔で見据えてきて言う真夜に、その言葉の意味を理解した神木がカッとして胸ぐらを掴む。

「前の二人もこうやってやめたんだろ…!」

 だが真夜は神木を睨み、

「だったら言わせて貰うけど、お前撫子がここんとこどんだけホントは不安だったか知ってんのか?男なら恋人を寂しがらせんな!」


 目を大きくして一瞬止まった神木、ストレートをくらいよろめく。口内が少し切れて血の味がする。


「…っ仕方ねぇだろ…それにつけ込んで人の女に手ェ出す方がサイテーなんだよ!」

 神木がまた真夜の胸ぐらを掴み、

「今は将来の為にやんなきゃねぇ事だからやってんだよ!」

「オメーのそうゆートコだよ!全部自分で決めて置き去り食らわした相手のことは二の次じゃねーか!」

「…っ」


 殴り合う二人。だが二人共熟達者なのでその攻防は華麗だ。

 だいぶして真夜が神木をホールドする。


「ウソだよ。撫子泣いちまった。俺じゃ駄目だった。神木じゃなきゃ駄目なんだよあのコは」

「…っ」

「俺のこと1発ちゃんと殴りな」

 神木の目を真っ直ぐ見て微笑む真夜。

 神木はひとつ息をついて、ストレートを返した―――――



 さすがに眠れない撫子。

 帰宅した神木は口の横にアザが…


「!?さとる何その傷」

「真夜と殴り合った。」

 ハッとする撫子。神木が泣きそうな顔をする。

「どうして…!確かに最近あんまりしてなかったけど」

「っHがしたかったんじゃない!…っ話がしたかった…」

 神木の胸がかきむしられる。

「だけど…!」

 沈黙。


「…さとるは悪くない、キスされる前に拒まなかったあたしのせい」

 我慢しようとした涙が零れた。

「――――っく」


 肩を震わす撫子に神木は唇を噛んだ。

「…泣かないで…寂しがらせてごめん…」

 神木が撫子に抱きついて、そして背骨がしなる程強く抱きしめた。

「ふぇ」

 涙が浮かんだ撫子の目尻を、ちゅ、と神木が舐める。

 強張った撫子の身体から力が抜けたのが分かる。


「今回は忘れる。でももうこんなの一度きりにしてね?」

「うん」

 ぎゅ…神木の服を掴み、小さく震える撫子を抱きしめて、神木は優しくキスをする。


(撫子は誰にも渡さない…でも縛りたくない…)

 指を絡めて神木は撫子の胸に頬を当てた。

「…ねぇ撫子、やっぱりこの髪切った方がいい?」

「えっ」

「男の格好した方がいい?」

「だめだよ、ファンはさとるを女の子だと思ってるし、ファンの期待を裏切ることになる」

「っファンより撫子の方が大事だよっ!」

 見たこと無いくらい感情的な神木。

「夢だけ叶っても隣に撫子がいなきゃ意味が無い、元は撫子の為だったんだよ?撫子に見て欲しくて…一緒に喜んでくれる撫子がいるから…っ」

 神木は肩を震わした。


「俺は撫子だけだから、撫子をちゃんと守りたい」

 ドキン…


「俺がちゃんと男の格好してればこんな事にはならなかったんだ」

 引き出しからハサミを取り出す神木。

「!待ってやめて!」


 慌てて手を掴んで止める撫子。ショキッ。ピンクの髪がパラリと落ちた。

「さとるやめて!」

 必死でハサミを取り上げる。


「真夜に惹かれる?」

「!…っ」

 フルフル首を振る撫子

「じゃあ俺に飽きた?」

「っ、違う、さとるが一番好き、ごめん、ほんとにごめんなさい…」

 ツウ、と雫が1つ神木の頬を滑り落ちた。

「撫子…その指輪の意味、分かってた…?」

 ズキ…胸が痛む。

「俺は撫子が何をしても、撫子を絶対離さない」

 さとるの肩が震えた。

「さとる…っ、うん、ほんとにごめんね――――」


 撫子は神木をきつく抱きしめて、神木もぎゅっと抱きついて、涙はそのまま、確かめ合うように抱き合った―――――




 翌日、神木が真夜とラインをしている。


真夜〈お前ら普段どんなHしてんの?〉


神木〈普通。てか今教えたくないです。〉


〈ふーん。〉


〈…子供作んのはまだ早いけど…撫子を孕ませたい…いっぱい撫子の中に出して、撫子に俺を染み込ませたい。〉


〈笑。俺を牽制してるの?〉


〈笑い。〉


〈…もしヤッてたら俺もゴムしなかった。〉


〈は?〉


〈しないのはバカって思ってたけど、この年で初めてこんな気持ちなった。撫子の中で出したい笑〉


「ち」

 半目になった神木がそのラインを撫子に見せる。

「撫子コレ見て」

「?」


 読んで赤面。

 神木はぎゅう、と抱きついて撫子の胸板に頭を擦り付ける。

「真夜も危ないから気をつけて?」

 きゅう、となってコクコク頷く撫子に神木はひとつ息をつき、

「撫子は上京するまで男に迫られた事無いから迫られるとすぐ傾いちゃうでしょ?仕方ないけど…」

 柏の男友達は皆、女子達の王子様たる撫子をイケメン扱いしてた。


 神木は撫子の胸の中で撫子をじっと困り顔で見上げた。

「もう、心配でしょうがないよ…ちゃんと断るべきは断るんだよ?」

 可愛く色っぽく撫子の輪郭をなぜる。

 実はあざとい神木はそうやって撫子を自分に繋ぎ止める作戦に出る。


「ごめん」

 しゅんとする撫子。

(撫子はこんな感じで俺に可愛く迫られんのに弱いから…)

「…最終的に俺の物になってくれるよね?結婚してくれるよね?」

 唇を少しだけ尖らせて猫みたく迫る。


(やっぱり可愛い…♥)

 撫子は神木を抱きしめて頷く。

「うん」

 ホ、として神木は…撫子の下腹に手を当て…


「撫子…俺の子供孕めよ…」

 消え入りそうな甘い声で言う。


「…うん」

 カアア。シュワァとなる撫子。


「…クス、でもまだ二人だけで甘い生活しよ?」

 神木は撫子に抱きつき直した―――――





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